米雇用統計 2022年11月4日(金)の結果と解説

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米労働省が2022114日に発表した10月雇用統計の主な結果は、①非農業部門雇用者数26.1万人増、②失業率3.7%、③平均時給32.58ドル(前月比+0.4%、前年比+4.7%)という内容であった。

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①10月の非農業部門雇用者数は前月比26.1万人増と市場予想の19.3万人増を上回ったが、前月の31.5万人増(26.3万人増から修正)から伸びが鈍化した。この結果3カ月平均の増加幅は28.9万人となり、今年初めて30万人を下回った。

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②10月の失業率は3.7%と市場予想の3.6%を上回り、前月の3.5%から0.2ポイント悪化した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も、前月の6.7%から6.8%へと上昇した。一方、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月の62.3%から62.2%へと低下した。

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③10月の平均時給は32.58ドルと前月の32.46ドルから増加して過去最高を更新。伸び率は前月比+0.4%、前年比+4.7%となった。市場予想は前月比+0.3%、前年比+4.7%だった。前年比の伸び率は10カ月ぶりに5%台を割り込んだが、依然として高水準にとどまった。

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10月雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが鈍化。失業率は労働参加率が低下したにもかかわらず悪化しており、米国の労働市場が減速気味であることを裏付ける結果となった。ただし、平均時給は前年比で見れば伸びが鈍化したとはいえ、前月比では加速しており、賃金インフレが収まる気配は薄かった。総じてみれば、景気を犠牲にしてでもインフレを抑制するために、当面は金融引き締めを継続するとの米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢が正当化される内容であったと言えるだろう。

もっとも、政策金利が4%近くまで引き上げられ、中立金利(景気を冷ましもふかしもしない金利水準で2.5%前後と考えられている)を大幅に上回った現状を踏まえると、FRBが引き締めのペースをまもなく緩めるとの市場の見方を否定する内容でもなかった。結果的に、FRB12月の連邦公開市場員会(FOMC)で利上げ幅を75bp0.75%)から50bpに縮小するとの観測がやや優勢の状況に変化はなかった。一方で、今回の利上げ局面における最高到達金利(ターミナルレート)が5%を超えるとの見方も変わらず、利上げが当初の想定上に長期化するとの市場観測も維持された。当面、市場では「利上げ減速」と「利上げ長期化」を巡り思惑が交錯すると見られ、株・債券・ドルはいずれも値動きが荒くなる場面が増えそうだ。

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米国 経済指標(失業率・非農業部門雇用者数)過去の推移

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