野村雅道のID為替 (レポート)|FXブログ|外為どっとコム

実在しない投機筋より王道の実需を追いたい

「実在しない投機筋より王道の実需を追いたい」

(例 日々の出来高表 3月9日)

出来高 日銀  
     
百万ドル    
3月9日 スポット スワップ
     
ドル円 8,261 56,330
  12.80% 87.20%
ユーロドル 1,896 9,944
  16.00% 84.00%


 投機筋が実在しないとは言い過ぎかもしれない。いややはり言い過ぎではないか。世に誤解されている投機筋の8割-9割は実在していない。
為替の解説書、報道では世界の1日の為替の取引高は数兆ドルあるのに対し、貿易取引など実需の取引は10%程度であるので、為替相場は残りの90%を占める投機筋が動かすと書いてあるものをよく目にする。さらに投機筋は得体の知れない魑魅魍魎であるとも書かれ、こういう投機筋が相場を動かしているので、相場は難しく、わからないものとしている。投機筋、ヘッジファンドといえばいかにも為替をやっている、かっこうがいいという響きがあるので、個人の投資家から大学教授までゾクゾク、ワクワクするところがあるのだろう。
 ただ得体が知れないとはよく言ったもので、実在していないから得体が知れないとも言える。

 BISや日銀が集計する為替の出来高を誤解している方が多いことは、「国際金融の解明」(有斐閣、菊池悠二元東銀調査部長、浜田宏一イエール大学教授の対談、1997年)にも以下のように書かれている。 

*菊池元東銀調査部長

「これからの対話のメインテーマでもある為替市場を見てみましょう。(1990年代)1日当たりの貿易取引は
世界全体で100億ドル強に過ぎないのに、為替の取引量は世界の市場を合算すると既に1日1兆2000億ドル強となります。
これは資本取引規模が異常なまでに膨張した結果であり その主体は投機的需要であるという理解が一般的です。
ところがこれは必ずしも正確な理解とは言えません。まず実際には全体の金額の半分が銀行の直物と先物のスワップ取引ですあ(今は半分以上、東京では約9割がスワップ)。これは為替や資金取引に付随するポジション操作によるものでむしろ資金取引ですから為替の需給には関係がありません。したがって為替の需給に影響を与えてるのは全体の半分6000億ドルということになります」

*浜田宏一イエール大学教授教授

「今言われたことは、為替取引の構成要素についての生き生きとした説明が与えられていて勉強になります。スワップ取引の部分が資金取引と言われましたが、それは経済主体同士が金利などに依存して異時点間の取引をしているわけです。直先で売買をリシャッフルしているのです。そこでは、経済主体(例えば銀行)間の直先の需給が入れ替わるだけなので、国民全体の外貨建て総資産に対する総需要にはあまり変化を与えないということ、経常取引に依存した需給が大きく為替レートを動かしうるということがよくわかります。我々は現在の為替市場で取引の性質がどういうものであるかについて、実務家やBISなど国際機関の書物を読んで知ることはできます。しかし どういう取引がどういう機能を果たしているかは、こういう機会でなくては、必ずしも具体的な実感をもって伝わってこない。それでこういう対話をすることの意味があるわけです」

 少し言い回しが難しいかもしれないので簡単に説明したい。また出来高、毎年増加している。ただ変動の影響するスポット取引と資金取引であるスワップ取引の割合は上述の発言とは大きく異なることはない。要は為替の変動に関係のないスワップ取引を大学教授などの為替の専門家を含め、多くの方が誤解しているということである。

(ここから言い方が「ですます調」になりますがお許しください)

2015年の東京市場ドル円の銀行間出来高は

スポットが1兆9872億ドル、為替スワップが11兆8184億ドルで
スポット取引は14.4%。スワップが85.6%。
日本のドル円ではスワップ取引が非常に多くなっています。

 ただスワップもBIS、日銀の為替取引として計上され、全体が13兆8056億ドルとなります。

 この13.8兆ドルに比べ貿易や日本の機関投資家の取引高は取るに足らないとされ、
相場は投機筋が支配しているとなる。実はディーリングルーム一人か、二人で細々と大人しくスワップをやっている人が
投機筋に祭りあげられている。もちろん当のスワップディーラーはそんなことはまったく知らない。さらにスポットは銀行のDD(ダイレクトディール)によるキャッチボールや銀行と顧客と二重計上もあるので全体の出来高は減少する。結論としていえば、実需の取引は取るに足らないものではないということ。

 でも週刊誌的には投機筋は得体のしれない大きなものとしたほうが面白いかもしれません。

実務を知っている方、ディーリングルームにいる方はすぐ理解できるのですが、その方でも
スワップの数字がこのように計上されているとは知らずに世界の市場の出来高はとてつもなく大きいと
誤解している。

 為替取引には相場を動かす為替取引と決済日を延長したり前倒しする資金取引がある。
自動車会社がドルを100万ドル売って、それを1年後に決済日を伸ばすと
 全体の出来高は200万ドルになるが、実際に相場に影響する部分は100万ドルだけである。
さらに、1年延ばした取引をあと半年伸ばすと、スポットはゼロ、スワップは100万ドル。

 こういうのが多いのですが、これだけでもスポットは100、為替に関係のない資金取引のスワップが200となり
BISには300と計上され、為替の出来高はとてつもなく大きくなり、それはヘッジファンドや投機筋のせいとなるようです。

+++++++個人のFXで以前説明していたので、これもお読みください++

この話(スワップを為替取引高に含めること)は極めて簡単かつ重要なことですが、あの浜田宏一教授でさえご存じなかった(もちろんすぐご理解なさった)
ことで、世界中の多くのエコノミストから一般の方も、為替相場は投機筋(実は相場変動に関係のないスワップ)が動かすという
大きな誤解を生みだしています。BISや日銀もスワップを含めた数字(分別はしています)を公表しているので優秀な教授も誤解しています。

 FXで例をあげれば、FX参加者はご自分のお金は一切使わず取引をしています。証拠金は預けていますが、証拠金は損失補償金のようなもので
取引には一切使われません。我々が外貨現金やトラベラーズチェックを使う現金取引とは違ったものです。

 みなさんが米ドル10万ドル買う場合、先ずは円資金を10万ドル分借ります。便宜上金利は1%とします。その円でドルを買い、ドルが手に入ります。ドルは5%で運用するとします。そうすれば4%分の金利差が手に入ります。それがFX業者が表示しているスワップ金利で日々証拠金が増減します。
 この円を借りてドルを貸すという取引がスワップ取引です。FXの場合は毎日毎日借りて貸すという取引も行っています。自分のお金を使っていないので、資金繰りの為日々お金の貸し借りを行っています。もしポジションを1年持てば、スポット取引は10万ドルでスワップ取引は10万ドル×365日=3650万ドルとなります。

 年間ではスポットとスワップの合計が3660万ドル、スポットは0.27%、スワップは99.73%となります。東京市場の出来高でも日々スポットが10%から20%、スワップが80-90%という比率となります。ただスワップは前述したように為替取引(売買)ではなく資金取引(貸し借り)なので、
相場の変動には何の関係もありません。BISや日銀の数字はスポット・スワップの合計なので、こういう資料を見るエコノミスト的、教授的な方は
変動にかかわる為替の出来高をスワップを含めたものと誤解します。スワップを計上すべきではないと思いますが、為替売買取引あって始めて発生するので計上しているのでしょう。

 大きく水増しされた為替出来高と比べると実需は少ない、やはり相場は投機筋が動かしている。だから相場はわからないとする有識者みたいな方が増え続けます。実際は実需やまっとうな資本(生保、機関投資家など)が相場を支配しています。どこの銀行のディーリングルームを除いても投機筋で大忙しのところはありません。本当にそんなに出来高が大きければ銀行の営業は手数料で儲かって儲かって仕方なくなりますが、そんな方はいないです。大儲けして早期退職して悠々自適ではなく、定年まで真面目にコツコツ勤めています。

 私が以前からこの誤解を説明しているのは、何かわからなかったらすぐ「投機筋のせい」としている方が多いので、そうではない、そうなら相場の考え方が根本的に違ってしまう。投機筋ではなく、資金取引の数字がオバケになっているということを言いたかったのです。投機筋とは
みなさんのスワップ取引で、証拠金の日々の増減です。


 実需の動きが相場の流れを決定するので貿易黒字の国は通貨高、貿易赤字の国は通貨安となります。投機筋がトレンドを作ることはありません。
相場は円やスイスなどの貿易黒字の国、デフレの強い国(結果的に金利が低い国)が強く、逆の国は弱いです。

 投機筋が如何に少ないか、むしろ日本の生保、かつてのある商社、関西系商社、関西系家電、ジーパン系などのほうが活発に取引をしているかは
大手の銀行のディーリングに行けば一目瞭然です。もしスワップ取引が投機筋で、それが顧客としてディーリングルームで取引しているなら
銀行のディーリングルームはもっと繁忙し、営業のディーラーは毎年毎年高額のボーナスを手にし早期にリタイアーして優雅な余生を若くして送っているでしょう。残念ながらそういう営業の方はいません。

 私はかつて、ヘッジファンドが一番多く取引を行う米銀のディーラーでしたが、上述の日本の仕手筋のほうが取引は活発でした。ここでも投機筋が市場の8割、9割占めると言う話は誤解だとわかります。もちろんソロス氏のポンド売り(ただ相場はすぐ戻った)、LTCMの損切りで相場を短期的に大きく動かしたこと(輸出とドル売り介入で損切りさせられた)もありましたが、頻度から言えば、日本の機関投資家のほうが大きく動かすことが多いでしょう。

 ということで実在しない(まったく実在していないではないが)投機筋のことを考えたり、自分の思う方向に行かない時、予想が当たらない時に 投機筋を便利屋的に持ち出すことなく、輸出入とそのヘッジ、機関投資家とそのヘッジを追っていったほうが相場の流れが理解できるでしょう。ただ最近は守秘義務があるので、銀行のディーリングルームにいないと詳細な動きはわかりにくいことがあります。実需筋はセンチメントで動くより採算ベースで動くので頭で考えてはわかりにくいことがあります。ただ実需には時間、日々、季節の動きにクセがあり、また貿易統計などでも動きがわかることもあります。


 相場をよく理解し、収益性を向上させるには、実需、機関投資家の動きを掴むことが一番重要でしょう。そこに海外のセンチメントやファンダメンタルズ、当局の動きなど加味して取引を私は行っているつもりです。もう歳をとっているので、そんなに頻度を上げて取引することはないですが、考え方は変えずにやっていますし、変える必要はまったくないと思っています。

 
++さらに同じように実需の大きな影響を詳細を説明したものがありますのでご参考まで+++++

「投機筋はどこにいるのか、世にいう出来高の7割はスワップでヘッジファンドではない」

*なんでこんなことを書いたのかと言えば、いるかいないかわからない投機筋(一般的に言われる投機筋の数字の10%程度しかいないだろう)より歴史的にもみても相場変動の要因となっているわかりやすい貿易需給をもっと重視するほうがいいと考えたからである。
投機筋はわかりにくいし正体不明だ。 何故ならば投機筋はいないからだ。
 
 相場変動が理解出来なくなると、必ず出てくるのが、「投機筋、ヘッジファンド、チャート、利食い、損切りのせいだ」等の言葉である。あれだけ熱心に理論的に予測解説していたのに、簡単に上記の言葉に屈してしまう。せっかくそれなりに考えた相場観も変えてしまう。もう少し自分を大切にして欲しい。

BISの統計で世界の1日為替の出来高は1兆2千億ドルでわずかな2%程度の1日210億ドルの貿易取引を追っていてもわからないと言う。BISへ報告する日銀の統計では日本の4月の1日の平均為替取引高は1989億ドルと言う。日本の1日の貿易取引は39億ドルなのでこれも世界と同様2%程度であり、やはり残りの98%投機筋の動きはわからない、相場はやはりわからないでチャートに走ったり、占いのような相場予想に走ったりしてさらに問題をわかりにくく、あたりにくくする。そして冒頭の「○○」のせいだになる。特に日本人は舶来信仰があり、ヘッジファンドのような言葉を使えば、内容はわからず「はっはあ」と最敬礼、土下座をして相場観を変えてしまう。今もそのような状況だ。

しかし相場を動かしているのは投機筋ではなく、円相場は日本人であり、あるいは日本の金融商品を売買する外国人であり、国際収支やそれに関連する統計に表れている。

1日1989億ドルのうち対顧客取引は217億ドルで、インターバンクスポットは313億ドルであり、合計530億ドル、26%を締める、残り74%、1459億ドルはスワップ取引で為替相場変動には関係がない。

***
ではインターバンクスポット313億ドルは顧客217億ドルのカバーであり、差額96億ドルが銀行中心の投機であると誤解するかもしれないが、顧客の取引をカバーするにあたり数行がつなぎ、つなぎでカバーするので、例えば輸出5百万ドルをカバーするにも1回で終わらずつなぎの銀行がまたつなぎの銀行でカバーすると2重3重計上となり、取引高が水増しされる。また銀行が投機のオーバーナイトで持つポジションは市場規模から見ると無視していいくらい小さい。

 従って、対顧客217億ドルが相場を動かす原点でありそこへ投機筋がどれだけ入っているかだ。やや乱暴だが全体出来高と貿易取引の割合は 世界、日本とも同率なので、まずは日本の顧客取引の中味を見れば良い。ヘッジファンドも邦銀で取引をする。ただ1回の取引額が大きくても平均すれば小さく、また1日でポジションを閉じるのも多いのが彼らの取引である。長期でポジションを取る場合は商品がからみ対内対外債券取引に計上され捕捉できる。

***

ではまたややラフに217億ドルの中味を検証する。
為替に絡むと見られる取引を4月の国際収支表から取り上げると

貿易 39 直投 2 外人債券 2
サービス 9 外人株 101 邦人債券 21
所得 5 邦人株 13 介入 0

(注 外人の日本債券買い、邦人の外債買いはそれぞれ対内対外証券投資状況表の10、20%を為替に絡むものとして計上した。)

合計192億ドルでほぼ217億ドルを賄ってしまう。ラフな計算だが投機筋の入り込む余地は小さく、やはり日本か日本絡みの取引が相場を支配しそれを追えばほぼ需給が予測できる。
冒頭の「投機筋、ヘッジファンド」のせいで自分の相場観が外れたのではなく需給を正しく追っていないせいだろう。相場を動かすのは実需や長期の資本取引である。その動きを察知して早めに動くのが良い投機筋であるが金額は前者と較べれば極めて小さくトレンドは作れない。


P.S.

投機筋があまりいないということの一番簡単な検証は銀行のディーリングルームを見学することだ。そこで飛び交う玉に投機筋の名前を見出すのは難しい。私は一度ヘッジファンドを主要顧客とする外銀に在籍したことがあったが、そこでも毎日ヘッジファンドが取引しているのではなく、時たま何か大きなトピックが出た時にわっとやるだけで通常は貿易や日本の長期資本為替のほうが多かった。ただ現在は邦銀や外銀でも「守秘義務」がうるさくて外部の人間はディーリングルームを見学させてくれないかもしれない。

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏

1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。

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