野村雅道のID為替 (レポート)|FXブログ|外為どっとコム

ヘッジファンドについてまとめてみました

「ヘッジファンド」

(専修大学、中京大学の授業で使ったものです)

1.
はじめに

1997年アジア通貨危機とヘッジファンド

1998年ロシア通貨危機とLTCM破綻

ヘッジファンド等と取引を行う銀行のリスク管理の強化の必要性

米国大統領作業部会報告書

LTCM破綻の教訓として、いわゆる市場規律が十分に働かなかったことを挙げ、その原因を解明している

ヘッジファンド等と取引を行う金融機関のリスク管理の徹底やこれに向けた監督当局の関与を積極的に求めている

これまで規制の枠にあまり入ってこなかったヘッジファンド等自体の報告・ディスクロージャーの強化や導入にまで踏み込み、必要な立法措置を議会に要請している

ヘッジファンド等自体への自己資本比率規制等(いわゆる直接規制)については、上記②、③のような措置が有効でないことが明らかになった時に検討されうるとしている

新興市場国への影響については、上述のとおりあまり関心を払っていないが、結論部分でこれらの国自身が自国の金融システムへのシステミックリスクを防ぎ、また市場の健全性(integrity)を維持するなどの観点から、必要な措置を検討することが考えうると認めている

2.「ヘッジファンド」とは何か

「ヘッジファンド」を正確に定義することは困難。ヘッジファンド等の「高レバレッジ機関」の特徴として、①直接的な規制・監督をほとんど受けていないこと、②規制対象金融機関や上場会社に比べ、ディスクロージャー義務が極めて限られていること、③レバレッジが高いことがある

  • 「レバレッジ」とは、通常は自己資本に対して借入を行い、これをてこ(lever)として自己資本への収益率の増大を図る戦略を意味し、米国大統領作業部会の報告でもレバレッジの大きさを貸借対照表上の自己資本と総資産の比率で見ている。

  • ヘッジファンドと言われるものが米国で最初に出現したのは、1949に社会学者で金融関係のジャーナリストでもあったアルフレッド・ジョーンズが始めたジョーンズ・ヘッジファンド

  • 1950年代以降米国で数を増やしたヘッジファンドの多くはこのロングとショートの組み合わせによるマーケット・リスクからのヘッジという投資戦略から離れていったが、レバレッジ(借入れ資金)を活用して自己資本への収益率を高める、リミティド・パートナーシップの形態をとる、ファンド・マネージャーの報酬に成功報酬の要素を入れる、といった点には共通性がある。

  • 現在のヘッジファンドの投資戦略は多様である。

  • LTCMの場合には、97年末の自己資本(equity capital: 投資家などからの預かり資金)が48億ドルであるのに対し、貸借対照表上の管理総資産(total assets)は1290億ドルに上っており、その間のレバレッジは実に28倍に達する。更に、LTCMがこの資産をOTC(Over-the-Counter)デリバティブなどに運用した結果としての想定元本は1.3兆ドルに上るとしている。

  • レバレッジやデリバティブ取引の利用はヘッジファンドだけに見られるものではない。

  • このほか、ヘッジファンドの特徴として、ファンド・マネージャーが、年間の運用手数料(例えば運用受託額の1パーセント)に加えて、運用成功報酬(例えば年間収益の20パーセント)を受け取ることが一般的である。

  • ヘッジファンドは、従来の銀行、保険会社、投資信託、年金基金等の金融仲介機関の持っている投資運用機能のみに極度に専門化・純化した機関とも考えられる。 

    3.米国におけるヘッジファンドの法的位置づけ

    米国では、投資信託は、投資家保護の見地から投資会社法の適用を受け、証券取引委員会への登録やディスクロージャー等の義務を負う。しかしながら、米国投資会社法の規制上、一定の条件を満たす投資スキームについては、その適用を基本的に免除する規定が設けられており、ヘッジファンドは、この免除規定を活用したリミテッド・パートナーシップないし有限責任会社の形式を取っていることが一般的である。

  • また1933年証券法においては、株式等について一般的に証券取引委員会への登録やディスクロージャー等の義務を定めている。これらの義務を免れるためには私募が条件となるが、33年証券法に基づくRegulation Dでは、私募と認定されることの要件として「認定投資家」(accredited investors)への販売の場合か、認定投資家以外への販売の場合には売却先数35以内を規定している。

  • こうした適格購入者や認定投資家の概念に基づく規制からの免除は、裕福で判断能力の高い投資家に対して法律による投資家保護を図る必要は乏しいとの考え方に立ったものである。

  • ヘッジファンドが米国投資会社法・証券法上の規制を基本的に免除される形態をとっているといっても、その適用免除を確保するための販売方法(一般的な勧誘の禁止等)などの規制には服している。また、ヘッジファンドのファンド・マネージャーの多くは、商品先物取引委員会(CFTC)の規制により、「商品先物ファンド等管理者」(commodity pool operator)として登録義務、ポジションについての報告義務、投資家への情報開示義務等を負っている。

  • 多くの大規模なヘッジファンドは、法律上オフショア市場に組織されている。 

    4.国際金融市場における役割と影響

    ○ 一般的に、「ヘッジファンド」を含め、リスクを取ることに積極的な投資家が存在することは、市場の流動性を高め、市場を通じるリスクの再配分を容易にしているといった側面がある。

  • 投機が市場に対して安定的な機能を果たすのは、例えば、実需のみしか存在しないケースで価格が変動する場合に、資産を価格が低いときに買って、価格が高いときに手放すような場合である。

  • これに対し、ヘッジファンドは、特定の市場では後述の群集行動などの影響もあって非常に大きな影響力、あるいは独占的な攪乱力を持つことがある。

  • 更に、ヘッジファンドのように透明性が低く、規制や監視・監督がほとんど行われていない場合には、取引相手がそのリスク行動を十分把握できない可能性が高まり、最終的なリスク負担が取引相手やシステム全体に転嫁されていく危険がある。

  • ヘッジファンドの行動が金融市場に与える影響を検討する場合は、ヘッジファンド自体の投資行動と同時に、これを模倣して投資行動を行う金融機関や投資家が存在することにも注目すべきであろう。

    ○ アジア金融危機の過程等で、ヘッジファンドが比較的小さい規模の市場で最も活発に活動してきたと言われていることを考慮すると、その影響力は、新興市場国の市場規模との関係で評価する必要がある。市場規模が小さければ、市場価格の変動等により大きな影響力を行使することが可能である。

    5.先進国市場における政策課題

    ○ ヘッジファンドの投資家やファンド・マネージャーが居住し、取引相手としての金融機関等が多く存在する先進国市場において、ヘッジファンドの活動を監視し、規制していく必要があるかどうかという議論がある。

  • 投資家保護との関連では、ヘッジファンドの投資家は、高所得者あるいは専門的な投資知識を有する少数の投資家であり、私募の形態をとっていることからも、規制の強化によってこれらの投資家に対する情報開示の強化等を求める必要は乏しいと考えることが一般的。

  • 市場の健全性・信認の確保は、重要な政策課題。特定の大きな市場参加者による相場の人為的な操作、風説の流布、仮装取引、インサイダー取引等が横行するようになれば、市場への信認は失われ、市場の効率的な資源配分の機能も損なわれることになる。

  • 金融システムの安定性維持は、経済活動の基本的インフラである決済システムの維持、預金者保護等の見地から、いずれの国でも重要な政策課題となっている。

  • ヘッジファンドは、リスクの高い投資行動をする「投機筋」という見方が一般的であるが、先述したとおり、経済合理性にかなった冷徹な投資判断をしているとも解せられ、その行動は金融市場に流動性を供給し、市場が一方的に揺れることを防ぐ役割も果たしている、むしろ効率性・透明性が高く、歪みの少ないマーケットを形成する上で大きな役割を演じているとの指摘もなされている

  • ヘッジファンドの提起する問題に対し何らかの対応をしていく必要があるとした場合には、ヘッジファンド自体にディスクロージャーや報告を求め、設立や運用につき何らかの形で規制を課すいわゆる「直接的アプローチ」と、これと取引・融資関係を持つ金融機関等のリスク管理の徹底やこれに関する規制を通じて対応していくいわゆる「間接的アプローチ」とがありうる。

  • ヘッジファンドの国際的な性格を考慮すると、仮にその行動に一定の義務や規律を課すことが必要な場合、立法や法執行の管轄権行使をどの国が持つのか、という点も検討する必要がある。すなわち、立法管轄権については、国際法上、①属地主義(自国領域内の行為に対して立法管轄あり)、②属人主義(自国民、自国法を設立準拠法とする会社等の行為であればどこで行なわれようと立法管轄あり)、③保護主義(自国の国家安全保障、経済システムの安定維持など重大な国家利益に影響する行為であれば、誰がどこで行おうと立法管轄あり),④普遍主義(世界全体の普遍的利益に反する行為については、誰がどこで行おうと、また、自国に直接の影響がなくとも立法管轄あり)、の4つの基本的な考え方がある。

  • 資金が自由に瞬時に世界を移動できる現状に鑑みると、特定の国で仮に何らかの規制を設けたとしても、ループホールが見つけ出される可能性が高く、その意味で、少なくとも主要な金融市場のある国においては、市場の透明性や安定の維持等、規制の目的が共有される範囲において、できる限り共通の手法でアプローチを取っていく必要がある。 

    6.新興市場国における政策課題

    ○ヘッジファンド等の機関投資家が動員できる資金量やその形成するポジションの規模が、自国の市場の規模に比較して極めて大きい新興市場国の場合、大規模かつ急激な資本移動に対して自国の為替・金融市場の安定を図り、危機を未然に防止することは、先進国と比較して、より緊要性の高い課題。

    日本は従来から、資本の自由化の進め方、資本規制の役割について現実的・実際的な立場をとってきた。

    ○現在の世界経済における大規模かつ急激な資本移動を前提にすれば、新興市場国がそれぞれどのような為替制度を選択するかは極めて重要な判断となる。

    ○ 資本の流入は、これまで、その国の将来性や政策に対する信認の反映と単純に考えられがちであったが、特に新興市場国においては、資本流入の規模や内容を適切にモニターし、マクロ経済政策も含めて適切に対応していく必要がある。

    ○ 危機に対応して資本流出規制を導入することは、その国に対する投資に長期的に悪影響を及ぼすことは避けられない。

  • 国際的な議論の中では、資本流出規制には、資本の流入への悪影響、実効性確保の難しさ、先進国側の投資家の利害などとの関連から慎重論が多い。

  • 資本の流入規制や流出規制については、新興市場国のそれぞれの実情に応じて、危機管理の手法として、コストとベネフィットを勘案しつつ、どのような場合にこうした手法をとることが正当化されるのか、現実的な立場から検討を進めていくべきである。

    取引手法

  • 1.イベント活用型

    ある企業の株価に影響を及ぼす可能性が極めて高い状況が発生した場合、またはそのような状況の発生を想定して、対象となる株式を売買し、利益獲得を目指す。

  • 2.買方中心レバレッジ活用型

    従来から存在した取引手法で、レバレッジを活用すること(保証金を預け入れ実際の保証金の数倍規模の取引をおこなう)により機動的に取引効率の向上を図る面に特徴がある。運用成績に応じて、運用担当者への報酬率が変化することも特徴。

    3.空売り的手法活用型

  • 株式価格がその企業の実態を反映せずに高騰していると判断した場合、対象株式の価格下落を想定して株券を借受けて市場で売却。想定通り価格が下落した場合は売付けた価格よりできるだけ低い価格で買い戻し、借受けた株券を返却する。買方中心型のファンドがヘッジのためにこのような手法を用いるときがある。

  • 4.株式裁定取引型

  • ある特定の指数を構成する銘柄でバスケットを構築し、対応する指数の先物と組み合わせることによりポートフォリオに対する市場リスクを抑制する。先物と現物の売買内容は利益の最適化を念頭に決定されるため、どちらを買いどちらを売るかは一概には決定されない。

  • 5.グローバル型

  • 多国市場対象型 米国市場を除く世界各国の市場が投資対象となる。ほとんどの場合、有望であると思われる市場セクターや銘柄に投資配分する場合が多いので、マクロ型のファンドのように指数系派生商品に投資するケースは少ない。

  • 6.グローバルマクロ型

  • 世界各国のあらゆる金融市場を分析しながら経済全体の変化をとらえつつ投資の機会をうかがう規模の大きなファンドが多い。利益の最適化を念頭にさまざまなデリバティブを駆使し、レバレッジを高い比率で用いる。市場でのポジション期間は1ヶ月以下の場合もあれば、1年以上にわたることもある。

  • 7.債券裁定取引型

  • ある特定の債券もしくは金利商品を買い、それに対して高い相関関係にある別の商品を売付ける。二者間の価格のひずみを利用して利益を獲得しようとする。

  • 8.市場中立型

  • 根底にある理論とは、市場リスクを最小限に抑制することは可能でありそのような売買を最大限試みるべきである、というものです。売りと買いをうまく組み合わせることによって、市場全体の急激な動きによるポートフォリオ全体の損失を最小限に抑制することが試みるが、現物同士の組み合わせだけでなく、現物とそれに関連したデリバティブ(派生商品)を活用することもある。

  • 9.セクター集中型

  • ある特定の市場セクターや産業分野に投資する。投資対象となる企業が巨額の時価総額を誇る世界的企業から比較的規模が小さく上場時価総額も低めの企業にいたるまで幅広い投資選択肢を考慮する。売買の意志決定の要素は企業のファンダメンタルであったり、株価のテクニカル的ふるまいであったり、対象企業に関連したその他の要素などさまざまである。

  • 10.転換社債裁定取引型

  • 転換社債もしくは類似する金融商品を買い付け、対応する株式を空売りするもので、二者間の価格のひずみを利用する。

  • 11.特定地域成熟市場型

  • 米国や欧州、日本などの成熟した市場での利益獲得の機会をねらう。

  • 12.特定地域新興市場型

  • 活発な投資の対象としてあまり成熟していない市場が対象となる。基本的に貸株市場も成熟していない場合がほとんどなので空売りが活用できない。したがって、買方中心の取引手法が十分な運用成績をあげられなくなった場合、ファンドを償還してしまったり、別の市場に軸足をうつすことになる。

  • 13.ファンド・オブ・ファンズ

  • 運用手法や目標成績が異なる複数のヘッジファンドに資金配分することによりリスクの軽減を図る。必然的に投資金額が大きなものになりがちなので、大規模な運用をおこなっている投資家に向いている。

  • 14.リスク・アービトラージ型

  • 運用担当者の判断により合併計画に関与している企業、つまり存続会社と被存続会社の株式を同時に売買し、想定する価格変化が発生した場合、反対売買を行い利益を確定する。合併計画の失敗を想定しておこなう売買もある。売買の詳細は対象企業の企業としての価値と株式価格の乖離などから総合的に判断される。

  • 15.劣後証券取引型

  • 再建計画申請済、再建途中、または破産企業に関連した証券を中心に売買を行い利益獲得を目指す。弁済順位が高い証券(リスクが比較的低い)ものから普通株式(リスクが高い)まで様々な関連証券が対象となる。

  • 16.ロング・ショート型

  • 売りと買いをできるだけ調整し、ポートフォリオ全体に対する市場リスクの抑制を図る。

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏

1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。

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