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図表で分かる財務分析:NETFLIX 2025年2Q決算と3Q予想

 

 ネットフリックス(Netflix)は、アカウント共有の有料化や広告付きプランの導入といった大胆な戦略転換で力強い成長軌道に戻ってきました。2024年の好調な業績に続き、2025年も第2四半期(2Q)まで非常に良い結果を残しています。ネットフリックス(Netflix)の「会社の成績表」である2025年2Qの決算データを読み解き、3Qの業績に関する予想、そして、今後の成長に対する市場の期待と、同社が乗り越えるべき課題について解説します。

(1)ネットフリックス(Netflix)の直近業績と2025年3Qの予想

 まずは、ネットフリックス(Netflix)の直近の業績について、四半期ごとに見てみましょう。右肩上がりのきれいな成長が続いていることが一目でわかります。

※単位:百万ドル

ネットフリックス(Netflix)の盤石な「稼ぐ力」

 2025年(FY25)第2四半期(2Q)の決算は、売上高が前年同期比で15.9%増、本業の儲けを示す営業利益は45.0%増と、素晴らしい結果でした。特に注目すべきは、売上からどれだけ効率よく利益を生み出せているかを示す営業利益率が、34.1%という非常に高い水準に達している点です。

 それでは、次の第3四半期(3Q)はどうなるのか。市場アナリストのコンセンサス予想も、当然ながら「Netflixの好調は続く」と見ています。私も方向性は同じです。私は売上高11,600百万ドルでさらに成長が加速すると予想しています。市場が期待しているのは、単なる会員数の増加ではありません。広告付きプランが新たな収益源として本格的に貢献し始め、一部の国での値上げ効果も加わり、会員一人当たりの売上が向上することです。つまり、「会員を増やしながら、同時に一人ひとりから得る収益も高める」という、非常に質の高い成長が期待されています。これが実現すれば、ネットフリックス(Netflix)のビジネスモデルが盤石であることが証明されます。

持続的成長に必要な「投資」

 しかし、その一方で営業利益率は33.6%と、直近のピークからわずかに低下すると私は見ています。これは、ネットフリックス(Netflix)が新たな課題に直面していると考えているからです。ディズニープラス(Disney+)やアマゾンプライムビデオ(Amazon Prime Video)との競争は激化しています。競合他社に負けないように、視聴者を惹きつけ続けるためには、魅力的な質の高いオリジナルコンテンツへの投資を緩めることはできません。

 また、新たな会員を獲得するためのマーケティング費用も必要です。つまり、次の成長ステージに進むためには、利益を少し削ってでも「未来への投資」が不可欠になるのです。この投資と利益のバランスをどう取るかが、今後の大きな課題となります。

(2)売上高の動向

 ネットフリックス(Netflix)の売上高は2023年(FY23)4Qの8,833百万ドルから、2025年(FY25)2Qの11,079百万ドルまで、一度も減ることなく、一貫して右肩上がりに増え続けてきました。

 売上高成長率は常に12%以上の高い成長を維持しています。2025年(FY25)の3Qは、さらに加速してこれが18.1%になる予想です。アカウント共有の有料化や広告付きプランといった新しい戦略が成功し、顧客を順調に増やしており、ビジネスが「健康的」に拡大している力強いサインを示すことになるでしょう。

(3)営業利益の動向

 まず、営業利益は売上高から商品の原価や人件費などを差し引いた本業での儲けのことです。ネットフリックス(Netflix)の場合、本業の動画配信サービスで、どれだけ効率的に利益を獲得しているかを示しています。次に営業利益率は売上高に対して営業利益が何%にを示します。「儲けやすさ」の指標です。この数値が高いほど効率的な経営ができていると言えます。そして、営業利益成長率は去年の同じ時期と比べて、営業利益が何%増えたかを示します。

 営業利益も売上高と同様に、力強く伸びています。特に注目すべきは営業利益率です。2023年(FY23)の4Qは16.9%でしたが、2025年(FY25)2Qは34.1%と、劇的に改善しています。

 これは、単に「売上が増えた」ということではありません。「利益を出すのがとても上手になった」ことを意味しています。以前は「100ドルの売上で約17ドルの利益を得ていた」のが、今では「約34ドルの利益を出せるようになった」ということです。つまり、ただ成長しているだけでなく、「より"筋肉質"で収益性の高い企業」へと変貌を遂げたことを示しています。

(4)当期利益の動向

 当期利益は、営業利益から税金など、本業以外の損益もすべて計算し終えた後に会社に残る最終的な利益のことです。これが株主への配当の原資になります。当期利益成長率は、去年の同じ時期と比べて、当期利益が何%増えたかを示します。

 当期利益も、営業利益の好調さを反映して非常に力強く成長しています。2024年(FY24)1Qの2,332百万ドルから、2025年(FY25)2Qの3,125百万ドルへと着実に増加しており、最終的な「手残り」がどんどんと増えていることがわかります。

当期利益成長率も高い水準を維持しており、会社の収益力が全体的に向上していることを裏付けています。

(5)株主価値指標の動き

 ここからは株価が会社の価値に対して「割安」か、それとも「割高」かなどを判断する指標について解説します。

1)EPS

 EPSは当期利益を株式数で割ったものです。「株主が持つ1株に対して、会社がいくら利益を生み出したか」を示します。この数値が上がれば上がるほど、株主の利益は高まります。

 グラフを見ると、EPSは2023年(FY23)4Qの2.13ドルから2025年(FY25)2Qの7.19ドルへと一貫して上昇しています。これは会社の稼ぐ力が直接的に株主の価値向上につながっていることを示しており、非常にポジティブです。

 続いてPER (株価収益率) とPBR (株価純資産倍率)を見てみます。

2)PER

 PERは「株価がEPSの何倍か」を示します。 株価収益率と呼ばれています。これは「投資家がその会社の将来の成長にどれだけ期待しているか」を測る指標です。例えば「PER40倍」は、「投資家は『今の利益の40年分を払ってでも、その会社の株を買いたい』と考えている」という意味になります。一般的に、成長期待が高いほどPERは高くなります。

 ネットフリックス(Netflix)のPERは、常に40倍を超える高い水準で推移しています。これは、市場が常にネットフリックス(Netflix)に対して「これからも大きく成長するだろう」という強い期待感を持ち続けている証拠です。株価は好調な利益成長をすでに織り込んでいる状態と言えます。

3)PBR

 PBR (株価純資産倍率)は「株価が1株当たり純資産の何倍か」を示します。純資産とは会社の総資産から負債を引いたもので、「会社の解散価値」とも言われます。PBRは「会社の持っている純粋な資産価値に対して、市場がどれだけプレミアム(付加価値)を付けて評価しているか」を示します。PBR1倍は「資産価値と株価が同じ」という意味で、1倍より大きいほど、ブランド力や技術力といった「目に見えない価値」が高く評価されていることになります。

 同様にPBRも10倍から20倍超へと上昇傾向です。これは、市場がネットフリックス(Netflix)の持つコンテンツ制作能力、膨大な会員基盤、ブランド力など「目に見えない資産」の価値を、ますます高く評価するようになっていることを示しています。

 総じて、ネットフリックス(Netflix)の指標は、①「会社は実際に稼ぐ力を高めている」②「市場(投資家)もその将来性に対して非常に高い期待を寄せ続けている」という理想的な状態です。

(6)貸借対照表から見る「財務の安定性」

 続いて貸借対照表を使って、企業の「健康診断」をしてみましょう。

単位:百万ドル

1)資産の動向

 資産は会社の「財産」の総額です。ネットフリックス(Netflix)の総資産(流動資産+固定資産)は、2022年(FY22)の48,594百万ドルから2025年(FY25)2Qの53,100百万ドルへと着実に増加しています。資産の大部分を占めている固定資産は、ネットフリックス(Netflix)の強みである膨大な映画やドラマの「コンテンツ資産」です。コンテンツに継続的に投資してきたことで、ネットフリックス(Netflix)の財産が年々大きくなっていることがわかります。

2)負債の動向

 負債は会社の「借金」です。ネットフリッククス(Netflix)の負債合計(流動負債+固定負債)は、2022年(FY22)の27,817百万ドルから2025年(FY25)2Qの28,147百万ドルまで、ほぼ横ばいで推移しています。これは会社が新たな借金を増やすことなく、事業を拡大、成長させてきたことを示しています。利益でしっかりと事業資金をまかなえるようになった証拠であり、非常に健全な状態です。

3)純資産の動向

 純資産は会社の総資産から負債を差し引いたものです。”真”の「自己資本」とも言えます。ネットフリックス(Netflix)の純資産は、2022年(FY22)の20,777百万ドルから2025年(FY25)2Qの24,952百万ドルへと着実に増加しています。これは利益が会社に内部留保されて、会社の体力が根本的に強くなっていることを示しています。

4)流動比率の動向(=流動資産 ÷ 流動負債)

 流動比率は会社の「短期的な支払い能力」を示す指標です。1年以内に現金化できる資産(流動資産)が、1年以内に支払うべき負債(流動負債)をどれだけ上回っているかを示し、一般的に100%以上あれば安全とされます。ネットフリックス(Netflix)はこれまで110%以下になったことがなく、健全な水準を維持してきました。しかも、直近の2025年(FY25)2Qには134.1%となり、さらに改善しています。

5)自己資本比率の動向(=純資産 ÷ 総資産)

 自己資本比率は「長期的な安定性」を判断する上で、最も重要な指標のひとつです。総資産のうち、返済不要の自己資本がどれくらいあるかを示しています。この比率が高いほど、借金に頼らない安定的な経営ができていることになります。

 ネットフリックス(Netflix)の自己資本比率は、2022年(FY22)の42.8%から、2025年(FY25)2Qの46.99%へと着実に上昇しています。これは利益を積み上げて財務体質を強化、外部環境の変化にも揺るがない、さらに安定した会社になったことを示しています。

(7)キャッシュフロー計算書から見る「事業の健全性」

 最後はお金の「流れ」を示すキャッシュフローを確認します。

単位:百万ドル

1)営業キャッシュ・フロー(営業CF)の動向

 営業キャッシュフロー(営業CF)の推移は劇的です。2022年(FY22)は2,026百万ドルでしたが、利益重視の戦略転換で、2023年(FY23)、2024年(FY24)ともに年間で7,000百万ドル超という莫大な現金を稼ぎ出すようになっています。2025年(FY25)に入ってからもこの推移に大きな変化はなく、1Qが2,789百万ドル、2Qが2,423百万ドルと順調です。

 ネットフリックス(Netflix)は外部からの借入をしなくても、自らの事業で生み出した資金だけで、新しいコンテンツ投資や株主還元ができるようになったことを意味しています。つまり「事業の健全性」が保たれているということです。

2)投資キャッシュ・フロー(投資CF)の動向

 ネットフリックス(Netflix)の投資キャッシュフロー(投資CF)は、主にコンテンツ資産の取得や制作、設備の購入などに使った現金を示しています。2022年(FY22)や2024年(FY24)のように投資CFがマイナスになるのは、競争力を維持するための「未来への投資」を継続していることを示しています。

 その一方で、2023年(FY23)や2025年(FY25)の1Q、2Qはプラスとなっています。これは資産売却や投資の効率化など、より洗練された財務戦略を遂行していると見ることができます。ここで一番重要なのは、こうした投資活動がすべて営業CFによる潤沢な現金でまかなわれているということです。

3)財務キャッシュ・フロー(財務CF)の動向

 財務キャッシュフロー(財務CF)は、借入や返済、株主への還元などによるお金の動きです。2022年(FY22)から直近の2025年(FY25)2Qに至るまで、全データ期間中、一貫して大きなマイナスを計上しています。

 このマイナスの主な要因は、巨額の自己株式取得(株主還元)と負債の返済です。かつての資金を調達は企業を成長させるためでした。しかし、現在は、自ら稼いだ現金で借金を返し、株主に対して余剰金を大規模に還元できるほど、財務は強固になっています。

・成熟した優良企業のキャッシュフロー

 健全で成熟した優良企業のキャッシュフローは、「本業による営業CFがプラス、そのお金を使った将来への投資で投資CFがマイナス、余剰金は借金の返済と株主還元で財務CFがマイナス」になります。

 近年のネットフリックス(Netflix)は、まさにこの理想的なキャッシュフローの形態となっており、「事業の健全性」が確立された一流企業へと成長しました。

(8)盤石な財務基盤で「質の高い成長」を遂げる次ステージへ

 ネットフリックス(Netflix)の2022年(FY22)から2025年(FY25)2Qまでの決算をもとに、損益、財務安定性、キャッシュフローの観点から分析を行いました。

 分析結果からは、ネットフリックス(Netflix)の成長が、より高い「収益性」、鉄壁の「財務安定性」、潤沢な「キャッシュ創出力」という「三位一体」のより強固なものになっていることがわかりました。

 この盤石な財務基盤があるからこそ、2025年(FY25)3Qの業績予想は、ネットフリックス(Netflix)が、次ステージに入ったことを示すものになるでしょう。売上高の成長は、単なる会員数増加によるものではなく、「会員一人当たりの売上高」が牽引する「質の高い成長」へと進化しています。

 なお、2025年(FY25)3Qでは営業利益率の低下を予想していますが、それは「弱さ」の表れではありません。むしろ、本業で稼いだ莫大なキャッシュを武器に、激しい競争環境の中でトップを走り続けるために不可欠なコンテンツやマーケティングへの「戦略的投資」を、自らの意思で行っていることを示唆しています。

 多くの成長企業と同様に、ネットフリックス(Netflix)も、市場シェアを最優先し、利益度外視で会員数を伸ばす戦略を取っていた時期がありました。いわゆる「利益なき成長」モデルでしたが、今回の分析結果が示しているようにネットフリックス(Netflix)はそのモデルから脱却し、稼いだ潤沢な資金を使って、高い収益性と将来への投資を巧みにコントロールする「リーディングカンパニー」としての地位を固めています。

 

(本文ここまで)

 
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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