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ポンド/円・豪ドル/円の10月見通し「利下げに『辛抱強い』英・豪中銀」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 9月の推移
・9月の各市場
・9月のポンド/円ポジション動向
・10月の英国注目イベント
・ポンド/円 10月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 9月の推移
・9月の各市場
・9月の豪ドル/円ポジション動向
・10月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 10月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

ポンド/円 9月の推移

9月のポンド/円相場は183.707~195.978円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約0.1%上昇した(ポンド高・円安)。円相場が総じて強含みで推移する一方で、ポンドも堅調だったことから、終わって見ればほぼ横ばいの展開であった。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測などを背景にドル/円が140円台を割り込んだ動きにつれてポンド安・円高の動きが先行したが、11日に183.71円前後で下げ止まると中旬以降は持ち直しの動きが強まった。19日には英中銀(BOE)が利下げを見送った上に追加利下げに慎重な姿勢を示したことから一時190円台を回復。26日にかけてポンド高主導の動きが続き、月初来でプラス圏に浮上した。27日には本邦自民党総裁選を巡り乱高下する過程で195.98円前後まで上昇し約2カ月ぶりの高値を付けたが、その後190円を割り込んで反落する場面もあった。30日には192円台へと持ち直して9月の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
191.799

195.978

183.707

192.133

出所:外為どっとコム

10日
英8月雇用統計は、失業率が4.7%と前月の4.6%から上昇した一方、同失業保険申請件数は2.37万件と前月の10.23万件より少なかった。同時に発表された英5-7月の国際労働機関(ILO)基準失業率は予想通りに4.1%へ低下(4-6月4.2%)。5-7月の週平均賃金(除賞与)も予想通りに前年比+5.1%へと鈍化した(4-6月+5.4%)。

11日
英7月国内総生産(GDP)は前月比±0.0%と、市場予想(+0.2%)を下回った。同鉱工業生産は前月比-0.8%と市場予想(+0.3%)に反して減少。同貿易収支は200.3億ポンドの赤字となり、赤字額は市場予想(180.0億ポンド)より大きかった。

18日
英8月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%、前年比+2.2%、コア前年比+3.6%といずれも予想通りだった。BOEが注目するサービスCPIも前年比+5.6%と予想通りに前回(+5.2%)から伸びが加速した。

19日
BOEは大方の予想通りに政策金利を5.00%に据え置いた。声明で「インフレ圧力の低下により、今後数カ月で段階的な利下げが可能」としつつ、「インフレが低水準を維持することがきわめて重要で、早期や過度の利下げにならないよう注意する必要がある」との見解を示した。議事録では金利据え置きの決定が8対1の賛成多数だったことが明らかとなった。BOEはまた、10月以降の1年間の量的引き締め(QT)について、これまでと同様に年間1000億ポンドのペースでバランスシートを縮小することを9対0で決めた。

20日
英8月小売売上高は前月比+1.0%と市場予想(+0.4%)を大きく上回った。自動車燃料を除いた売上高も前月比+1.1%と市場予想(+0.5%)を上回った。

23日
英9月製造業PMI・速報値は51.5と市場予想(52.2)を下回り、前回(52.5)から低下。同サービス業PMI・速報値も52.8と市場予想(53.5)および前回(53.7)を下回った。

27日
自民党総裁選の決選投票は石破氏が逆転で勝利。石破氏は緊縮財政志向で金融所得課税に前向きと見られていることから日経平均先物は2000円超急落。金融緩和と積極財政を掲げる高市氏の勝利を織り込む形で進んでいた株高と円安に大幅な修正が入った。

30日
英4-6月期GDP・改定値は前期比+0.5%となり、速報値(+0.6%)から下方修正された。

9月の各市場

9月のポンド/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
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  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

10月の英国注目イベント

ポンド/円 10月の見通し

 英中銀(BOE)は今年8月に4年5カ月ぶりの利下げを決めたが、次の9月会合では政策金利を据え置いた。ベイリー総裁は声明で「インフレが低水準を維持することがきわめて重要で、早期や過度の利下げにならないよう注意する必要がある」として早期の追加利下げに慎重な姿勢を示した。前日に労働市場の下振れリスクを意識して50bp(0.50%ポイント)の大幅利下げを決めた米連邦準備制度理事会(FRB)に比べるとBOEのスタンスはタカ派的に映る。高金利がポンド相場を支える展開は10月も続きそうだ。なお、BOEは次回11月の金融政策委員会(MPC)で、物価見通しなどを改定する金融政策報告書を公表した上で25bpの利下げに動く公算が大きいが、BOEが注視するサービスインフレの高止まり(8月は前年比+5.6%に再加速)などを踏まえ、現時点では追加利下げに慎重な姿勢を維持すると見ている。その意味では10月16日に発表される英9月サービス消費者物価指数(CPI)の結果が重要となりそうだ。また、予想以上に堅調を維持している英国の景気動向にも注目だ。英8月購買担当者景気指数(PMI)は、製造業、サービス業ともに活動拡大・縮小の分岐点である50.0を上回っている。10月24日に発表される英9月PMIも堅調を維持するようならポンド相場の支援材料となろう。10月のポンド/円相場は、①相対的にタカ派的なBOEのスタンスや②相対的に高い英国のインフレ、および③相対的に堅調な英国景気を背景にポンド高・円安基調が続くと見ている。
(予想レンジ:186.500~197.000円)

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

豪ドル/円 9月の推移

9月の豪ドル/円相場は93.595~100.724円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.4%上昇(豪ドル高・円安)した。9月は円相場が総じて堅調だったが、豪ドルは円に対して上昇する数少ない通貨のひとつであった。ドル/円の下落につれて上旬こそ軟調だったが、11日に93.60円前後で下げ止まると、その後は持ち直しの動きが強まった。米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に大幅利下げに踏み切った上で景気の先行きにポジティブな見方を示したことや、日銀が20日に利上げを見送り追加利上げにも慎重な姿勢を示したことからドル安と円安が進む中で、その受け皿として豪ドルが買われた。豪中銀(RBA)が利下げに慎重な姿勢を示したことや中国当局が相次いで経済下支え策を決めたことを好感する形で26日には100円目前まで上伸。翌27日には約2カ月ぶりの高値となる100.72円前後まで上昇した。ただ、本邦自民党総裁選で石破氏が逆転勝利すると日経平均先物の急落とともに98円台へ反落するなど乱高下。99円台前半で9月の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
98.787 100.724 93.595 99.325

出所:外為どっとコム

4日
豪4-6月期国内総生産(GDP)は前期比+0.2%と予想通りの結果となった。前年比の伸びは+1.0%と市場予想(+0.9%)を上回ったが、1-3月期(+1.3%)から減速した。

5日
豪7月貿易収支は60.09億豪ドルの黒字となり、黒字額は市場予想(50.00億豪ドル)を上回った。輸出が前月比+0.7%と伸びた一方、輸入は-0.8%と減少した。RBAのブロック総裁は「インフレ上振れリスクを引き続き警戒している」とした上で「短期的に利下げは見込んでいない」と述べて市場の利下げ観測をけん制。また、「豪ドルの若干の上昇は、インフレ対策にプラス」との見解を示した。

19日
豪8月雇用統計は、新規雇用者数が4.75万人増と市場予想(2.60万人増)を上回り、失業率は4.2%と予想通りに前月から横ばいだった。労働参加率も67.1%と予想通りで、過去最高だった前月から横ばいとなった。

24日
中国人民銀行(PBOC)は、市場に資金供給する際の7日物リバースレポ金利を1.70%から1.50%に引き下げる方針と、大手銀行に対する預金準備率を10.00%から9.50%に引き下げる方針を合わせて発表した。その後、RBAは政策金利を4.35%に据え置いた。声明ではインフレの上振れリスクに警戒感を示した上で「インフレ率が持続可能な形で目標レンジに向かって収束していると確信できるまで、金融政策は十分に引き締め的である必要がある」とあらためて表明した。ただ、ブロック総裁は会見で「今回は利上げを明確には検討しなかった」と明らかにした。

25日
豪8月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.7%と予想通りに前月(+3.5%)から伸びが鈍化。コア指数にあたるCPIトリム平均値は前年比+3.4%だった(前月+3.8%)。

26日
中国政府は大手国有銀行に対し、最大1兆元の資本注入を行うことを検討しているとの報道が伝わった。中国景気の減速懸念が和らぎ上海総合指数などの中国株が続伸した。

27日
自民党総裁選の決選投票は石破氏が逆転で勝利。石破氏は緊縮財政志向で金融所得課税に前向きと見られていることから日経平均先物は2000円超急落。金融緩和と積極財政を掲げる高市氏の勝利を織り込む形で進んでいた株高と円安に大幅な修正が入った。

9月の各市場

9月の豪ドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

10月の豪州・中国注目イベント

豪ドル/円 10月の見通し

豪中銀(RBA)は9月会合で早期の利下げには否定的な見解を示したが、ブロック総裁が利上げを明確には検討しなかったと述べており、従来のタカ派スタンスをいくぶん後退させた。とはいえ、利下げサイクル入りが濃厚な米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中銀(ECB)に比べると「相対的なタカ派スタンス」は保たれている。日銀は、追加利上げの方針を維持しているものの、(夏場以降の円安一服で)追加利上げを急がない姿勢を強調していることから、円が積極的に買われる展開になりづらい中で、豪ドルが先行されやすい地合いは続きそうだ。10月に入り日本では石破首相が誕生したが、総選挙を月内に控えたタイミングとあって緊縮・増税路線を打ち出す公算は小さい。したがって、株安による豪ドルの下値リスクも小さいと考えられる。そうした中で、注目されるのは10月30日に発表される豪7-9月期消費者物価指数(CPI)だろう。8月単月のCPIは前年比+2.7%とRBAの目標レンジ(2~3%)内に収束しており、四半期ベースの7-9月期CPIの押し下げに作用するか注目したい。仮に予想以上に下振れするようなら、RBAのタカ派スタンスがさらに後退するとの思惑が広がる可能性もある。
(予想レンジ:95.500~103.00円)

 
kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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