主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2022年11月11日9時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼10日(木)の為替相場
(1):日銀総裁・首相会談
(2):米10月CPI 予想を下回りドル円急落
(3):米複数の要人発言
(4):米外国為替報告書発表
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:どこまで値を戻せるか/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
10日(木)の為替相場
期間:10日(木)午前7時10分~11日(金)午前6時55分 ※チャートは30分足(日本時間表示) 出所:外為どっとコム
(1):日銀総裁・首相会談
黒田日銀総裁と岸田首相が官邸で会談。内外経済や金融市場の不確実性が極めて強い中で、政府と日銀が密接に連携し、経済・物価情勢に応じて機動的な政策運営を行っていく方針を確認。黒田総裁は、賃上げを伴う物価安定目標の実現に向けて金融緩和を継続していくことも説明したと述べた。為替相場に関しては「最近のような一方的で急速な円安の進行は経済にとって好ましくない」と述べ、日銀として「金融・為替市場には十分注視していく」と説明。為替について首相から特にコメントはなかったという。
(2):米10月CPI 予想を下回りドル円急落
米10月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.4%、前年比+7.7%と予想(+0.6%、+7.9%)を下回った。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も前年比+6.3%と予想(+6.5%)を下回り、40年ぶりの高水準だった9月(+6.6%)から減速した。米連邦準備制度理事会(FRB)が12月の会合で利上げペースを緩めるとの期待が一気に高まり、米長期金利の低下とともにドル売りが優勢となった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の著名記者が「10月のCPI統計は、FRBが50bp(0.50%ポイント)への利上げ減速に向けて順調に進んでいることを示している」とSNSで発信したこともドル売りを後押しした。なお、同時に発表された新規失業保険申請件数は22.5万件と予想(22.0万件)をやや上回り前週(21.8万件)から増加した。ユーロ/円などのクロス円は、ユーロ/ドルなどのストレートドルの上昇で一時強含んだが、ドル/円が下げ幅を拡大するとつれて反落した。
(3):米複数の要人発言
ローガン米ダラス連銀総裁は「利上げペースの減速が近く適切になる可能性」「CPIは歓迎すべきデータだが先はまだ長い」と発言、その後、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁は「1カ月の指標で勝利とは言えないものの、非常に良いニュースであった」と述べた。一方でクリーブランド連銀のメスター総裁は「インフレの上振れリスクは残っている」とした上で「今後も利上げを継続していく必要がある」との認識を示した。
(4):米外国為替報告書発表
米財務省はこの日発表した半年に1度の外国為替報告書で、為替操作国の認定を今回も見送った。1998年以来となる日本の円買い介入については一定の寛容姿勢を示したものの、スイスや中国については批判を示した。
10日(木)の株・債券・商品市場
ドル/円 外為注文情報(FX板情報・オーダー状況)
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:どこまで値を戻せるか
昨日のドル/円は終値ベースで約3.7%の大幅下落。一時は9月5日以来の安値となる140.19円前後まで下値を広げた。米10月消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に鈍化したことで米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの観測が高まった。
もっとも、CPIは鈍化したとはいえ前年比+7.7%の高水準だ。FRBのインフレ目標が2%であることを踏まえると、利上げペースが緩んでも利上げの停止が見通せる状況にはない。CPIを受けた大幅かつ急激な米債高(金利低下)とドル安は行き過ぎの反応であろう。
ドル/円はボリンジャーバンドの-3シグマをも超えて下落しており、一時的に「売られ過ぎ」の水準と判断できる。今朝は142円付近まで反発しており、この後もどこまで値を戻せるかが焦点となりそうだ。戻りのメドとしてはボリンジャーバンド-2シグマの142.50円付近、昨日の下落幅の半値戻し143.39円前後などが挙げられる。仮に142.50円前後すら超えられないようだと、逆に戻りの鈍さが意識される可能性もある。
本日の値動きは目先の相場展開を読む上でも重要なポイントになりそうだ。注目材料は、米11月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値で示される5-10年期待インフレ率(予想、前回ともに2.9%)だ。
注目の経済指標:英16時 複数の経済指標
注目のイベント:ユーロ圏 要人発言
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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