他の多くの新興国通貨と共に南アランドも対ドルで急反発
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート(資料)Bloomberg
4月2日に発表された米国による約60の貿易相手国・地域に対する相互関税が、総じて当初予想以上の高い税率であったことから、世界経済への悪影響が強く警戒され、市場でもリスク回避地合いが強まった。為替市場では当初ドルが安全通貨の1つとして、円やユーロなど一部主要通貨を除く多くの通貨に対して上昇する中で、ランドもドルに対して急落した。その後、米経済への悪影響や政策運営への不信感などから、米国の株式・債券と共にドルが下落する米国トリプル安のような動きがみられ始めたこともあり、トランプ政権は4月9日に一旦発動していた相互関税を、中国以外の国に対して90日間延期すると発表。市場のリスク回避地合いが一部緩和したことに加え、ドル売りの流れも続いたことなどから、他の多くの新興国通貨と共にランドも対ドルで急反発に転じた。
南アフリカランドの見通し
もっとも、相互関税発表以降のランドのパフォーマンスは相対的に悪く(第2図)、内外情勢が依然ランドにとって好ましくない状況にあることが一因になっているようだ。
第2図:主要な通貨の対ドル上昇・下落率(4/1→4/22)(資料)Bloomberg
まず相互関税については、南アフリカへの適用税率が30%と高く、また南アフリカにとって第一、第二の貿易相手国である米国と中国の間で関税の応酬となっている。また、国内情勢に目を向けると、付加価値税の引き上げを巡って連立政権内の対立につながっていた2025/2026年度の政府予算案が4月2日に議会で可決されたが、これに反対票を投じた連立政権第二党の民主同盟(DA)が、議会の採決手続が違法として裁判所に提訴するなど、対立は収束していない。連立政権内で構造改革の推進役として期待されて来たDAが離脱するリスクが取り沙汰されており、こうした点もランドのパフォーマンスにマイナスに作用していよう。今後も、トランプ政権による関税政策の行方と世界経済への影響・市場のリスクセンチメントと共に、こうした国内の混乱の動向もランドの行方に大きな影響を与えて行きそうだ。
【南アフリカランド/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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