「ドル/円」をデイトレードする上でFX個人投資家が事前にインプットしておきたいトレードシナリオなどを、ギュッとまとめました。
執筆:外為どっとコム総合研究所 宇栄原 宗平
X(Twitter) : https://twitter.com/gaitamesk_ueha
トランプ関税発動と市場への影響
2025年2月4日から、トランプ大統領が発動する関税が本格的に始動します。今回の関税は、カナダ、メキシコ、中国に対してそれぞれ異なる税率が適用され、アメリカとこれらの国々の間に新たな貿易摩擦が生じる懸念が高まっています。具体的には、カナダとメキシコには最大25%の関税賦課、中国に対しては10%の追加関税が課せられる見通しです。この動きは、単なる一方的な関税措置ではなく、各国が自国の利益を守るために対抗措置を講じる可能性があることから、貿易戦争へと発展するリスクが指摘されています。
各国の反応とリスク回避の動き
カナダでは、アメリカからの輸入品に対して25%の関税を追加する方針が示され、場合によっては米国で製造された商品の販売停止といった厳しい措置が検討されています。一方、メキシコも同様に、特定の製品に対して報復関税を5%から20%の幅で課す可能性があり、中国は自国の利益を守るためにWTOへの提訴を含む対抗措置を準備しています。また、EUに関しても、今後の追加関税の発動が確実視されており、各国間で貿易戦争の火種が拡大する兆候が見られます。このような中、投資家は安全資産とされる円に資金を逃す動き(いわゆるリスク回避の円買い)に注目しており、ドル円相場にも大きな影響が出ると予想されます。
ドル円相場のテクニカル分析
今回の関税発動のニュースを受け、ドル円相場は一時的に下落局面を迎えましたが、その後、インフレ懸念など他の要因から再びドル高へと反発しています。チャート上では、ドル円は一時的にリスク回避の動きで円買いが働いた結果、下落したものの、テクニカル指標では10日線を突破する勢いを見せ、今後の上昇局面が期待される状況です。現在、156円台の水準が重要なサポートとなっており、これを下回るとさらなる下落が懸念されます。一方で、20日線の突破や、直近の高値である156~157円のレジスタンスゾーンをクリアできれば、元々のレンジ内に戻り、さらに上値が伸びる可能性が示唆されています。
また、ユーロ円やユーロドル、さらにはカナダドル円やメキシコペソ円といった他の主要通貨ペアでも、窓開けの下落が確認されており、特に報復関税の影響が顕著になると見られています。メキシコペソ円については、テクニカル分析でも安値を割り込む局面が懸念され、7円割れの可能性も指摘されています。全体として、貿易戦争が拡大する場合、ドル円は一時的に横ばいになる一方で、クロス円市場では下値への動きが強まる可能性があるため、トレードの際には注意が必要です。
注目イベントと今後の展望
今後の注目イベントとして、きょう24時に発表される米国1月ISM製造業景気指数があります。この指数は、アメリカ経済の現状を示す重要な指標であり、50を上回る結果が出れば、経済の拡大が続いていると評価され、さらなる利下げ観測の転換が起こる可能性があります。市場関係者は、この指標の結果とともに、トランプ関税の発動が実際に貿易戦争へと発展するかどうかに注目しており、その初動がドル円や他のクロス通貨市場にどのような影響を及ぼすのか、引き続き慎重な分析が求められています。
最後に
今回のトランプ関税発動を巡る動向は、各国の対抗措置や市場のリスク回避の動きと相まって、FX市場において大きな波乱をもたらす可能性があります。ドル円のテクニカルな動向だけでなく、関連するクロス通貨の動きにも注視しながら、今後の市場展開を見守ることが求められます。今後の経済指標発表や各国の動向にも十分注意を払いながら、リスク管理を徹底し、賢明なトレード戦略を構築していきましょう。
お知らせ
「UsUP(ユーズアップ)リスト」では、FXトレードの考え方などをお伝えしています。無料でダウンロードすることができます。FX口座ログイン後に「マイページ」に入っていただき、会員限定コンテンツ集からダウンロードが可能です。ぜひご活用ください。
『最新のドル/円相場を解説』
経済指標・イベントの結果について
主要な経済指標・重要イベントの結果について、最新情報は外為どっとコムサイトの「経済指標カレンダー」で確認できます。
お知らせ:FX初心者向けに12時からライブ解説を配信
外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。

宇栄原 宗平(うえはら・しゅうへい)
国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト(CFTe) 2015年から金融業界に参入し、顧客サポートなどに従事。また金融セミナーの講師としても活躍する。2022年2月(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。これまでの経験や知識を活かしながら、FX個人投資家へ精力的な情報発信を行っている。経済番組専門放送局「ストックボイス」や、ニッポン放送『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』でのレギュラー解説ほか出演多数。マネー誌『ダイヤモンドZAi(ザイ)』にてドル円・ユーロ円見通しを連載中。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。