このレポートでは、メキシコペソとアメリカ経済や日本円との為替レートの動き、メキシコペソの見通し、そしてその影響を受ける可能性のある要因について詳しく解説します。
執筆：株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
X(Twitter)： https://twitter.com/KandaTakuya
「もしトラ」はペソに逆風
最近よく目にする「もしトラ」という言葉は「もしトランプ氏が米大統領に返り咲いたら」の意であり、安全保障や経済に関するリスク要因として語られることが多い。為替市場において「もしトラ」のリスクが最も大きいのはメキシコペソだろう。2016年米大統領選でトランプ氏は、メキシコから流入する不法移民が米国民の職を奪っているなどと主張し、国境の壁建設を公約に掲げて当選を果たした。当選が決まった2016年11月から、バイデン氏に敗れた2020年11月の大統領選までの期間を通じてメキシコペソは軟調に推移し、対ドルで最大約29.9％下落する場面もあった。トランプ氏はまた、大統領在任中に米国の製造業の生産拠点を国内に回帰させる方針を鮮明にした。「もしトラ」は、コロナ後のニアショアリング（米生産拠点の近隣移転）で潤うメキシコ経済にとって逆風になるとの市場の思惑を強める公算が大きい。
米大統領選に向け、トランプ候補は「初戦」を圧勝…関連報道に注意
トランプ氏は、1月15日に行われた大統領候補を選ぶアイオワ州での共和党党員集会で、2位候補に30ポイント近い差を付けて初戦を圧勝で飾った。1月23日には、候補者選びの第2戦となる東部ニューハンプシャー州で予備選挙が行われる。なお、予備選挙・党員集会のヤマ場は15の州で一斉に投票が行われる3月5日の「スーパーチューズデー」となる。そのほか2月8日には、トランプ氏には大統領選への立候補資格がないとする訴えを巡り、米連邦最高裁判所で口頭弁論が行われる。仮にこれらをクリアしてトランプ氏が共和党の候補となっても、11月の本線で民主党候補に勝たねばならず、大統領返り咲きへの道のりはまだまだ長い。とはいえ、「もしトラ」の確度が次第に高まるようならメキシコペソの下落圧力になり得るだろう。今後の米大統領選を巡る展開とメキシコペソの動きに注目したい。
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員神田 卓也（かんだ・たくや）
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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