執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼8月28日週のユーロ/円、ポンド/円はタカ派期待後退で低下
- ▼ユーロ/円、チャネル下限でUターン出来るか
- △▼【ユーロ/円チャート 日足】
- ▼英中銀、利上げペース減速を示唆か
- △▼【ポンド/円チャート 日足】
- 9/4 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2023年9月1日 14時00分
神経質な展開か、引き締めの道筋巡り思惑が交錯
8月28日週のユーロ/円、ポンド/円はタカ派期待後退で低下
前半は米ドル/円の上昇や中国の住宅市場のテコ入れ策への期待から、ユーロ/円は159.767円、ポンド/円は186.056円までレンジ上限を広げました。また、ユーロ/円はドイツの消費者物価指数が予想ほど低下せず、インフレの高止まり観測が広がったことも手掛かりとなりました。しかし、円安地合いが一服すると、ユーロ圏や英国の9月利上げに対する不透明感から、ユーロ/円は157.56円付近、ポンド/円は184.08円付近まで押し戻されるなど、利上げを巡る思惑に振らされる格好になりました。(各レート水準は執筆時点のもの)
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※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ユーロ/円、チャネル下限でUターン出来るか
先日のジャクソンホール会議で、ラガルドECB総裁は「インフレ率を目標値へ引き下げるため必要に応じて金利を高水準に設定し、必要な限りその水準に維持する」と述べたこともあり、 9月利上げ観測は一時5割程度まで織り込みが進みました。しかし、ECB議事要旨で「スタッフ予想を踏まえれば、9月に追加利上げを実施する必要はないとの見解が示された」ことが伝わると、利上げ織り込み度が2割強まで低下するなど、ユーロは9月会合に向けて神経質な値動きとなっています。こうした雰囲気を醸成させる一因にもなっているのが、足許のさえない景気指標です。
来週の製造業・サービス業PMIの結果が、成長への懸念を高めるようなら、据え置きの織り込みが進んでユーロは下値を広げる可能性がありそうです。逆に、成長に対して楽観的な見方が持ち直してくれば、利上げ織り込みが浅い分、ユーロの反発幅も相応に広がりそうです。9月会合への織り込み状況を踏まえると、イベントリスクは上向きとなります。何れにしても、経済指標の強弱にECBへの思惑が絡んで、ユーロ/円は荒っぽい展開になるのではないでしょうか。
ユーロ/円は8月3日安値(155.532円)を起点とする上昇チャネルの下限付近まで押し戻され、ダブルトップ形成も視野に入りつつあります。チャネルの下限が推移する157.40-60円を下回ってくれば、8月23日安値(156.866円)割れを通じて、日足一目均衡表・基準線(155.579円:執筆時点)までの下げが想定されそうです。目先、チャネル下限で支えられて、反発できるかどうかが着目されます。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:155.000-160.000
英中銀、利上げペース減速を示唆か
英国は、政策委員のピル氏が英国の金利を一段と引き上げる必要がない可能性を示唆したため、9月の0.25%利上げ観測が後退しています。賃金の高止まりなど、利上げ継続を示唆する指標はあるものの、同氏は「金利を巡り過剰に行動した可能性」と、市場の行き過ぎたタカ派な見方をけん制しています。ピル氏の見方が正しいのかどうかを判断する材料は今のところ持ち合わせていないため、今後発表されるインフレ指標を注視する必要がありそうです。もっとも、同氏は「金利を十分な期間、十分に制限的にすることが望ましい」としており、英中銀が直ちに緩和的なスタンスに変わるとの見方も早計です。しばらくは利上げ織り込みの剥落からポンドは上値の重い推移が続く危険はありそうですが、金利が高水準で維持されそうなため、ポンド/円の下値もある程度限られるのではないでしょうか。
テクニカル的にはポンド/円は下降チャネルが始まったように見受けられるため、目線は下向き加減とし、期間21日のボリンジャーバンド-1σ(182.909円;執筆時点)付近までの下げが想定されます。勢いによっては、ボリンジャーバンド-2σと日足一目基準線が重なる181.54円(執筆時点)までの下げは考えられますが、その辺りまで下げてくれば、短期的な戻りを試すことになるのではないでしょうか。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:181.500-186.500
9/4 週のイベント
9/4(月) 15:00 ドイツ 7月貿易収支
9/5(火) 8:01 イギリス 8月英小売連合(BRC)小売売上高調査
9/5(火) 17:00 ユーロ 8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/5(火) 17:30 イギリス 8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/5(火) 18:00 ユーロ 7月卸売物価指数(PPI)
9/6(水) 15:00 ドイツ 7月製造業新規受注
9/6(水) 17:30 イギリス 8月建設業購買担当者景気指数(PMI)
9/6(水) 18:00 ユーロ 7月小売売上高
9/7(木) 15:00 ドイツ 7月鉱工業生産
9/7(木) 18:00 ユーロ 4-6月期四半期域内総生産(GDP、確定値)
9/8(金) 15:00 ドイツ 8月消費者物価指数(CPI、改定値)
一言コメント
過去15年間の9月のポンド/円の値動きを調べてみると、上昇が8で、下落7と僅かですが上昇に分があるようです。ただ、始値からの上昇値幅と下落値幅を比較すると、下落の方が値幅は大きいことになり買い安心感はそれほど高くありません。月初のレベルから3%近く上昇したところ、逆に3%を超えて下落した局面は逆張りと言ったところでしょうか。
出所:外為どっとコム総研
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