執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼5月8日週のユーロ/円とポンド/円は米ドル/円に連動
- ▼ユーロ/円、200日線の支持力確認の展開も
- △▼【ユーロ/円チャート 日足】
- ▼英国利上げサイクル終了近い?
- △▼【ポンド/円チャート 日足】
- 5/15 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2023年5月12日 15時00分
短期調整地合い増す、戻り売り狙いか
5月8日週のユーロ/円とポンド/円は米ドル/円に連動
米ドル/円が134円前半へ押し戻されると、ユーロ/円は149.262円を頭に146.129円、ポンド/円は171.173円を頭に167.846円まで後戻りしました。ユーロ/円については、域内の景況感改善が一服したほか、インフレピークアウト期待も重しとなったようです。また、ポンド/円は追加利上げ観測があるものの、ベイリー英中銀(BOE)総裁が「利上げを一時停止できる時期に近づいている」との認識を示したことも下押し圧力として機能しました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FX ライブ配信、今年のドル円 Sell in May(5月は売り)? (2023年5月11日)- YouTube
ユーロ/円、200日線の支持力確認の展開も
来週のユーロは調整的な動きが目立ちそうです。域内の景気動向はサービス業の回復が続いているものの、製造業に陰りが見え始め域内全体ではやや足踏みといったところで、これまでの回復の勢いが緩みつつあり、ユーロへの重しとなり始めています。5/16(火)に発表されるドイツ・ユーロ圏の5月ZEW景況感調査の結果が予想を下回れば、ユーロへの調整圧力が増すかもしれません。また、イタリアの格付けについても気がかりです。格付けを巡っては、大手格付け会社のフィッチが早ければ12日にも見通しをネガティブへ引き下げる可能性が囁かれています。見通し引き下げが見送られればユーロは超短期的に戻りを試すかもしれませんが、イタリアの具体的な行動がなければ、今後も懸念材料としてくすぶり続けるため、ユーロの下押し材料として残るでしょう。
また、トルコの大統領・議会選挙の行方にも気を配りたいです。11日までは、クルチダルオール氏(支持率は49%)と現職のエルドアン大統領(支持率43%)が、28日の決選投票に進むとの見方が優勢でした。しかし、支持率5%で第3位につけていた少数野党候補のインジェ氏が選挙戦から撤退を表明すると、同氏の支持票はクルチダルオール氏へ流れるとの見方から、一発で決着が付く可能性が出てきました。逆に、クルチダルオール氏がこのアドバンテージを生かせなければ、エルドアン大統領の再選の可能性が高まることになります。何れにしても、選挙の結果を受けてトルコリラがボラタイルな動きとなる可能性が高く、その波を受けて経済的な結び付きが強いユーロの動意も活発化する危険があるため、注意は怠れません。
ユーロ円は3月20日安値(138.825円)と5月2日高値(151.609円)までの上昇幅の61.8%レベル(146.725円)で下げ渋っているものの、21日移動平均線を明確に割り込んできており、徐々に下向き圧力が増しつつあるようです。61.8%押し水準を明確に割り込むなら、次は143.050円付近の200日線での支持力を確認しに行く流れが強まりそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:143.500-148.500
英国利上げサイクル終了近い?
ポンドは上昇が一巡しそうです。0.25%利上げした英中銀金融政策委員会(MPC)では、金融政策のガイダンスは前回から変わっておらず、タカ派スタンスが強まる様子は見られませんでした。逆に、ベイリー総裁は「インフレは今年末までに半減する見込み」としたほか、「金利についてはエビデンス次第」としたため、英中銀が利上げサイクルを休止しこれまでの累積効果を見極める作業に入ろうとしているとの見方が優勢にななっています。5/16(火)の4月失業率、5/19(金)の 5月GFK消費者信頼感調査の結果が、総裁の発言の裏付けとなるかが着目されそうです。利上げサイクル停止への意識が強まれば、ポンドの調整幅が深くなるかもしれません。
ポンド/円は、これまで支持線だった5日移動平均線(169.617円)を割り込んで、日足一目均衡表・基準線(167.892円)付近へ下げています。基準線はまだ支持線として機能しており、ポンド下落の勢いが強まる雰囲気ではありませんが、これまでの上昇チャネルから下降チャネルへ転じた可能性を踏まえると、戻り売り目線から一目基準線割れトライを期待したいところです。基準線を割り込んでくれば、3月24日安値(158.260円)と5月2日高値(172.328円)の半値押し水準となる165.294円付近まで視線が下がると考えます。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:165.500-170.500
5/15 週のイベント
5/15(月) ― ユーロ 欧州委員会春季経済予測
5/15(月) 18:00 ユーロ 3月鉱工業生産
5/16(火) 15:00 イギリス 4月失業率
5/16(火) 18:00 ドイツ 5月ZEW景況感調査
5/16(火) 18:00 ユーロ 5月ZEW景況感調査
5/16(火) 18:00 ユーロ 1-3月期四半期域内総生産(GDP、改定値)
5/16(火) 23:00 ユーロ ラガルドECB総裁、発言
5/17(水) 18:00 ユーロ 4月消費者物価指数(HICP、改定値)
5/19(金)- 5/21(日) 主要7カ国(G7)首脳会議(広島サミット)
5/19(金) 8:01 イギリス 5月GFK消費者信頼感調査
5/19(金) 15:00 ドイツ 4月生産者物価指数(PPI)
5/19(金) 28:00 ユーロ ラガルドECB総裁、発言
一言コメント
連日、メジャーリーガーの大谷選手の試合のニュースが流れるたびに、来期の年俸は6500万ドル近くまで跳ね上がりそうと実に景気の良い話が流れています。実際に6500万ドルって言われても実感が湧かなかったので、色々と調べてみたら、太平洋南西部のナウル島を領土とするナウル共和国の国家予算(2016年度)と同じ規模だそうです。ん~、ますます分かりづらくなった。
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