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アップル(Apple)の2025年(FY25)の業績は、売上高が416,161百万ドルに達し、過去最高を更新する躍進の年となりました。特に第4四半期(4Q)は売上高102,466百万ドルを記録、サービス部門の成長とiPhoneの底堅さが業績を牽引しています。しかし、その素晴らしい数字の裏側で、競合他社に先んじられたAI戦略の立て直しや、巨額の資金の使い道といった課題が浮上しています。今回は確定した2025年(FY25)の通期実績を整理し、最大商戦期となる2026年(FY26)1Qの見通しを分析します。
(1)アップル(Apple)の直近業績と2026年(FY26)1Q予想
2025年(FY25)通期ベースで見たアップル(Apple)の業績は、前半の停滞感を振り払い、後半にかけて成長を再加速させるものとなりました。2025年(FY25)4Qの売上高は、前年同期比7.9%増で、営業利益率も31.6%と高水準を維持しました。特に当期純利益は前年同期比で86.4%増と跳ね上がりました。これは前年(FY24)の4Qに発生した一時的な税金支払いの反動によるもので、実態としては安定的に利益を成長させていると評価できます。


これを受けて、2026年(FY26)1Q(10〜12月期)の業績に対する関心は、かつてないほど高まっています。市場アナリストは、売上高138,400百万ドル前後、一株当たり利益(EPS)は2.67ドル前後と、過去最高水準を見込んでいます。注目は新製品のiPhone17シリーズが「AIスーパーサイクル」を巻き起こせるかどうかでしょう。
自社で開発・搭載したAI「アップルインテリジェンス(Apple Intelligence)」に対する期待が薄くなる中、グーグル(Google)のAI「ジェミニ(Gemini)」など外部技術の導入という新たな戦略が、ユーザーの買い替えを促す「トリガー」となり、より「強力なAI機能を使いたい」という動機から、果たして買い替え需要が起きるのかということが、同社の命運を握っています。


・「AIスーパーサイクル」到来による売上増の期待
アップル(Apple)の2026年(FY26)1Qの業績予想は、四半期として過去最高の売上高138,400百万ドルになると私は見込んでいます。市場も「より高性能なAI機能を使いたい」という動機から、世界中の既存ユーザーが一斉に、最新モデルに機種変更する「巨大な買い替えの波(AIスーパーサイクル)」が、iPhone17シリーズで起きるのではないかと期待しています。
前機種(iPhone16)で搭載され、期待を集めていた自前のAI「アップルインテリジェンス(Apple Intelligence)」が、先行するグーグル(Google)やマイクロソフト(Microsoft)のAIに比べて機能面で見劣りしたため、市場では「期待外れ」との厳しい評価が下されています。この窮地を脱するため、同社は自前主義を事実上断念し、グーグル(Google)の「ジェミニ(Gemini)」などの他社が開発したAIを搭載する方針へと舵を切りました。
投資家が期待しているのは、「iPhoneと外部の最強AIとの融合」です。優位性のある他社AIの搭載で、iPhoneの「AI機能」がようやく実用的なサービスへと進化し、世界中で買い替えを控えていた何億人ものユーザーによる爆発的な「機種変更」が起きることです。それでもサービス部門が二桁成長を継続し、パソコンや携帯電話などのハードウェアの販売台数に依存しすぎない収益構造が確立されつつあります。それもアップル(Apple)の評価を高める要因となっています。
・将来への投資姿勢に対する深刻な懸念
その一方で、証券アナリストの視点からは、「将来への投資姿勢」について、依然として深刻な懸念が残ります。アップル(Apple)の投資キャッシュフローは、保有する有価証券の売却などにより、依然として支出より収入が多いため、プラスの状態です。これはマイクロソフト(Microsoft)やグーグル(Google)が、AIインフラ(データセンターなど)に年間数兆円規模の巨額投資を行い、マイナスになっているのとは対照的です。
自前のAIサービス提供に事実上失敗し、今後、グーグル(Google)の「ジェミニ(Gemini)」という他社のAIサービスをアップル(Apple)の「オペレーションシステム(OS)」の中核に活用せざるを得ない状況は、かつて自社技術による垂直統合で世界を支配した同社にとって「イノベーションの鈍化」を示す決定的なサインと言わざるを得ません。
稼いだ現金の多くを使い、「自社株買い(財務キャッシュフローのマイナス)」することで、EPS(希薄化後一株当たり利益)を底上げする手法は、短期的にはアップル(Apple)の株主を満足させるでしょう。しかし、長期的には「次の巨大な成長の柱」の構築が遅れるリスクをはらんでいます 。今後アップル(Apple)が「稼いだ現金を株主に還元するだけの企業」になってしまうのか、それとも、他社AIを取り入れながらも、再び「世界を驚かせる革新的な企業」という評価を受けられるようになるのか、2026年(FY26)1Qの決算内容は、その行末を見極める上で極めて重要な意味を持つでしょう。
(2)売上高の動向
アップル(Apple)の売上高を通期ベースでみると、2021年(FY21)の365,817百万ドルから、2025年(FY25)は416,161百万ドルと着実に成長しています。2021年(FY21)は前年比33.3%増という驚異的な伸びを記録、2023年(FY23)は一時的にマイナス2.8%と、一時的に落ち込んで「踊り場」を経験しましたが、2024年(FY24)から再びプラス成長に転じました。2025年(FY25)は前年比6.4%増と成長を再加速させています。

2025年(FY25)の売上高は416,161百万ドルです。これは前年(FY24)の391,035百万ドルに対して106.4%の進捗率です。同社のビジネスが前年を上回るペースで拡大したことがわかります。

私は2026年(FY26)1Qの業績を売上高138,400百万ドル、売上高成長率11.3%になると強気な見通しを立てています。これはiPhone17の投入や、新しく利用できるようになったAI機能への期待から、四半期ベースとしては過去最高の売上高になると予測しているからです。
(3)営業利益の動向
営業利益についても、売上高同様に2025年(FY25)は非常に好調な結果となりました。通期ベースの営業利益は133,050百万ドルに達し、前年比で8.0%の成長を実現しています。特筆すべきは営業利益率の向上です。2021年(FY21)の29.8%から改善し、2025年(FY25)は32.0%という高水準に到達しています。これは徹底したコスト管理と利益率の高いサービス事業の拡大が寄与していると考えられます。
2026年(FY26)1Qは、営業利益47,700百万ドル、営業利益率34.5%を見込んでいます。売上高成長率(11.3%)を上回る営業利益成長率(11.4%)が予想されていることから、次年度もさらなる収益性の改善が期待されます。

(4)当期純利益の動向
当期純利益を通期ベースで見てみましょう。2024年(FY24)は税金の支払いなど一時的な要因から3.4%のマイナス成長となりました。続く2025年(FY25)には112,010百万ドルを稼ぎ出し、前年比19.5%増とV字で回復しています。

なお、2026年(FY26)1Qの純利益は39,400百万ドル、前年同期比8.5%増を見込んでおり、アップル(Apple)の高収益体質は今期も継続すると予想しています。

(5)株主価値指標の動き
続いて株価が会社の価値に対して「割安」か、それとも「割高」かなどを判断する指標について見ていきましょう。
1)EPS(希薄化後一株当たり利益)
EPSは会社が1株あたりどれだけの利益を上げたかを示す指標です。アップル(Apple)は利益の成長に加えて、巨額の自社株買いを行っているため、通期ベースでみると、EPSは2021年(FY21)の5.61ドルから、2025年(FY25)は7.46ドルと大幅に上昇しています。

なお、2026年(FY26)1Qの予想も2.67ドルと、高水準を維持する見込みです。

2)PER(株価収益率)
PERは株価が利益の何倍まで買われているかを示し、市場の「期待値」を表します。2021年(FY21)の26.17倍から2024年(FY24)には37.44倍まで上昇しました。これはAI戦略などの将来性に対する期待が膨らんでいることを示します。2025年(FY25)は34.22倍でした。依然としてアップル(Apple)は市場からは高い信頼と期待を寄せられています。

3)PBR(株価純資産倍率)
PBRは会社の資産価値に対して株価が何倍かを示す指標です。アップル(Apple)のPBRは60倍を超える時期もあり、極めて高い水準にあります。これはブランド力といった目に見えない資産が高く評価されていると同時に、自社株買いによって会社自身の純資産を圧縮しているという特殊な財務戦略の表れでもあります。
(6)貸借対照表から見る「財務の安定性」
会社の「健康診断書」である貸借対照表は、会社の財産(資産)、借金(負債)、そして純資産のバランスを示します。アップル(Apple)の貸借対照表は、一般的な企業とは大きく異なる特徴を持っており、その背景を知ることが分析の鍵となります。


1)資産の動向
アップル(Apple)の総資産は2021年(FY21)の351,002百万ドルから緩やかに増加してきました。しかし、2024年(FY24)には364,980百万ドルをピークに、2025年(FY25)の4Q終了時点では359,241百万ドルとなり、前年末比で減少しています。
資産の内訳を時系列で見てみます。工場や設備などの固定資産が210,000百万ドル前後で安定的に推移しており、現金や売掛金などの流動資産の変動から総資産は増減しています。
2025年(FY25)に関して、四半期ごとの資産推移を補足すると、1Qの344,085百万ドルが2Qには331,233百万ドルまで減少しました。その後、4Q末にかけて359,241百万ドルまで回復させました。この変動は莫大な利益による現金の増加と、株主還元のために実施した巨額の自社株買いによる現金減少のバランスから生じています。
2)負債の動向
アップル(Apple)の負債合計は、2022年(FY22)に302,083百万ドルまで増加した後、2023年(FY23)に一度減少して、2024年(FY24)に再び308,030百万ドルまで拡大しました。2025年(FY25)は285,508百万ドルまで大幅に減少、財務の健全化が進みました。
特に長期借入金などの固定負債が、2021年(FY21)の162,431百万ドルから2025年(FY25)の119,877百万ドルと大きく減少しています。金利負担が軽減された点はポジティブに評価できます。なお、短期的な支払い義務を示す流動負債は、2024年(FY24)の176,392百万ドルから2025年(FY25)の165,631百万ドルと、わずかに減少しただけで、依然として高水準です。これはアップル(Apple)が取引先に対して強い価格交渉力を持ち、支払いを遅らせることで手元の資金効率を高める戦略をとっているためと考えられます。
3)純資産の動向
純資産は総資産から負債を差し引いた返済の必要がない会社自身の資本です。アップル(Apple)の純資産は、2022年(FY22)に50,672百万ドルまで落ち込みました。ただ、その後は増加に転じて、2025年(FY25)は73,733百万ドルと、この5年間で最高水準に達しています。
同社は年間で100,000百万ドル(1,000億ドル)を超える利益を稼ぎ出しながら、その多くを自社株買いで支出しているため、資産規模に対して純資産が小さく保たれる傾向にあります。しかし、2025年(FY25)の当期純利益112,010百万ドルという大幅な利益成長は、巨額の株主還元をはるかに上回り、純資産の総額を押し上げています。四半期ベースで見ても、2025年(FY25)1Qの66,758百万ドルが、4Qには73,733百万ドルまで積み上がっており、内部留保が強化されていることがわかります。
4)流動比率の動向
流動比率(流動資産 ÷ 流動負債 × 100)は、会社の短期的な支払い能力(安全性)をはかる指標です。一般的に150%以上が「望ましい」と判断されます。
同社の流動比率は、2021年(FY21)の107.46%から低下して、2022年(FY22)以降は80%から100%の間で推移しています。2024年(FY24)に86.73%まで低下しましたが、2025年(FY25)は89.33%となり、わずかに改善しています。数値だけを見れば「100%割れ」なので、「懸念材料」と受け止められがちですが、アップル(Apple)の場合は、強力な営業キャッシュフロー(本業で稼ぐ現金)があることから、手元資金を多めに用意しておかなくても支払いに支障がないという状況で、自信に満ちた極めて効率的な資金管理が可能になっています。
5)自己資本比率の動向
自己資本比率は「純資産 ÷ 総資産 × 100」で計算され、総資産のうち「返さなくてよいお金」が占める割合を示します。会社の安定性を示す指標で、一般的な製造業は40%以上が安全の目安となっています。
アップル(Apple)の自己資本比率は、2022年(FY22)に14.36%まで低下しましたが、その後は回復傾向にあります。2024年(FY24)に15.60%だったものが、2025年(FY25)には20.52%と、1年で大きく改善しています。これは負債の圧縮と純資産の増加が同時に進んだ結果です。依然として低い数値であることは否めませんが、これはアップル(Apple)が意図的に資本構成を最適化し、自社株買いを通じて株主利益を最大化させているからです。2025年(FY25)は20%台を回復しています。これは「攻め」の経営を維持しつつ、財務の安定性を一段高めたことを示唆しています。
(7)キャッシュフロー計算書から見る「事業の健全性」
最後に現金の出入りを示すキャッシュフロー計算書をみてみます。キャッシュフロー計算書は、いわば会社の「家計簿」です。


1)営業キャッシュフロー(営業CF)の動向
アップル(Apple)の営業CFは本業であるiPhoneの販売やサービス事業から稼いだ現金のことです。営業CFのプラスが大きいほど評価は高くなります。
アップル(Apple)は2021年(FY21)から2025年(FY25)まで、5期連続で年間110,000百万ドル(1,000億ドル)を超える極めて高水準の営業CFを維持しています。2022年(FY22)は122,151百万ドルでピークを記録、その後も110,000百万ドル台で推移しています。
2025年(FY25)の営業CFは111,482百万ドルとなりました。前年(FY24)の118,254百万ドルに対して94.3%の進捗率です。わずかに下回りましたが、安定的に巨額の現金を稼ぎ出す本業の強さは健在で、同社のあらゆる投資や株主還元の源泉となっています。
2)投資キャッシュフロー(投資CF)の動向
投資CFは将来の成長のために、どれくらい設備投資や企業買収に現金を使ったかを示すもので、成長企業においては、マイナスになるのが一般的です。
アップル(Apple)の投資CFを見ると、「将来への投資姿勢」に関する同社の課題が浮き彫りになります。 2021年(FY21)はマイナス14,545百万ドル、2022年(FY22)もマイナス22,354百万ドルと、いずれもマイナス(支出が多い)でしたが、2023年(FY23)以降、プラス(収入が支出を上回る状態)に転じています。
2025年(FY25)は15,195百万ドルで、前年(FY24)の2,935百万ドルと比較すると、517.7%になる計算で、プラス幅を大きく拡大させています。これは設備投資などの支出より、保有する有価証券などの売却益が上回っていることを意味します。競合他社がAIインフラなどで巨額投資(支出)を続けている一方で、アップル(Apple)は営業CFによる多額の現金を投資に回しきれず、むしろ「余らせている」状況です。これは同社が「次なる成長の柱」を見つけられていない可能性を示唆しています。
3)財務キャッシュフロー(財務CF)の動向
株主への還元(自社株買いや配当)や借金の返済などで動いたお金を示す財務CFが、アップル(Apple)の場合、巨額のマイナス(支出が多い)が継続しており、株主還元を重視する経営戦略が鮮明に表れています。
なお、2025年(FY25)の財務CFはマイナス120,686百万ドルでした。これは前年(FY24)のマイナス121,983百万ドルに対して98.9%と、ほぼ前年と同水準の資金を自社株買いや配当に充てたことを示しています。
営業CFで稼いだ現金のほとんどを株主還元に充てる姿勢は、株価維持に寄与するかもしれませんが、「成長のための投資先を見つけられず、株主還元に回している」という見方もできます。これはアップル(Apple)が成長企業から成熟企業に移行する兆候という捉え方もできます。
(8)経営上の岐路に立つアップル(アップル)はどこに向かうのか
アップル(Apple)は今、損益計算書で示された「収益性の改善」と、キャッシュフロー計算書で示された「投資の停滞」という、「光」と「影」が交錯する局面にあります。2026年(FY26)1Qは売上高138,400百万ドル、営業利益47,700百万ドルで過去最高になると私は予想しました。これは新製品のiPhone17が、期待外れとなった自前AIに見切りをつけ、グーグル(Google)のAI「ジェミニ(Gemini)」など、強力な他社のAIを取り込む戦略に方向転換したことで、爆発的な買い替え需要が喚起され、「AIスーパーサイクル」が起きるという市場の大きな期待を反映させたからです。
しかし、アップル(Apple)という巨大企業の「真の姿」を、単に売上高や利益率(収益性)だけで理解しようというのは無理があります。自己資本比率が20.52%と低水準であっても、同社が安定しているのは、年間110,000百万ドル(1,100億ドル)を超える圧倒的な営業CFがあるからです。その一方で、投資CFの大幅なプラスは、競合他社がAIインフラに巨額の投資を続ける中で、アップル(Apple)の未来への投資規模が相対的に小さくなっていることを示しており、その成長性に懸念が生まれています。
同社が潤沢な営業CFを武器に、かつて世界を驚かせたイノベーションを再び起こせるのか、あるいは現金を株主に返す高収益な成熟企業の道を歩むのか。2026年(FY26)1Qの決算は、極めて重要な意味を持っています。
(本文ここまで)
岩田仙吉(いわたせんきち)氏株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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