執筆：外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年2月16日 13時10分
逆行気味、ユーロに分があるか？
2月12日週のユーロ/円、ポンド/円は逆行
ECB高官が利下げ時期が迫っている旨の発言をしたことで、欧州と米国との金融政策格差が意識され、序盤にユーロ/円は160.384円まで下げました。しかし、米ドル/円が150円台回復を果たしたほか、他のECB高官が早期の利下げをけん制したため、ユーロ/円は161.78円付近まで上昇幅を広げました。一方、ポンド/円は一時190.073円まで上昇したものの、インフレ抑制や成長減速が意識されて188.00円割れまで押し戻されました。（各レート水準は執筆時点のもの）
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※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ユーロ/円163円トライ、妥結賃金に注目
欧州の利下げを巡ってはECB（欧州中央銀行）内部でも見解は分かれており、今後発表されるデータの蓄積を待っての判断になることはこれまでから変わっていません。インフレ動向を見る上では、来週発表される10-12月期の妥結賃金のデータが相応に注目されるでしょう。前期の前年比4.7％から今回は小幅に伸びが鈍化すると見込まれているものの、予想以上に減速しているようなら、ECBの4月利下げ観測が再燃してユーロの上値を重くするかもしれません。ただ、逆に賃金の上昇圧力が思いのほか強ければ、利下げ開始時期の後ずれ感がユーロを下支えするでしょう。ユーロの目先のリスクは上下両方向と考えます。ただし、ユーロ/円は本邦のなだらかな緩和策脱却への思いから、底堅い展開が続きそうな雰囲気です。もっとも、高値圏だけあって長期ホールドには向かない時間帯のため、十分に引きつけてから押し目を買い拾いたいと考えます。
ユーロ円は昨年高値（164.306円）を起点とする下降トレンドラインを上抜けして、上昇チャネルの上限を目指す形になっています。足許の日足のローソク足も下ヒゲを伸ばす形となっており、下値も相応に底堅さが窺えます。160.52円付近の21日線をバックに161円割れのところは打診的に買い拾ってみたいと考えます。利食いは昨年高値からの下落幅の1.5倍返しとなる163.75円。ただ、160.52円を割ってしまったら、いったん撤退して159.00円台で改めて買い場を探したいと思っています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：EUR/JPY：159.000-164.000
ポンド、英経済低迷で目線下がる
英国経済は2四半期連続のマイナス成長でテクニカルリセッション入りと低迷が続いています。かたやインフレは鈍化の兆しはあるものの、依然として中銀の目標より高いとあって、利下げ開始を議論できる環境は整っていないように見受けられます。目先、スタグフレーションの状況下でポンドに対する目線は重くなったように感じられます。ポンド円は日銀に対する期待感から下げ幅は限定されながらも、短期的には調整含みの展開になりやすいと考えています。
ポンド/円は190.073円まで上昇して日足ボリンジャーバンド+3σに上値を抑えられ、そこから押し戻される形になっており、短期的には調整ムードが強いように感じます。％D（3）、Slow％D（3）のスローストキャスティクスでデッドクロスが発生していることも、上値抑制の一因と感じています。186.00円付近までの調整は想定しておいた方が良さそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：GBP/JPY：186.000-192.000
2/19 週のイベント
2/20(火) - ユーロ 10-12月期妥結賃金
2/20(火) 18:00 ユーロ 12月経常収支
2/20(火) 19:00 ユーロ 12月建設支出
2/21(水) 24:00 ユーロ 2月消費者信頼感（速報値）
2/22(木) 18:00 ユーロ 2月製造業購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
2/22(木) 18:00 ユーロ 2月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
2/22(木) 18:30 イギリス 2月製造業購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
2/22(木) 18:30 イギリス 2月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
2/22(木) 19:00 ユーロ 1月消費者物価指数（ＨＩＣＰ、改定値）
2/22(木) 21:30 ユーロ 欧州中央銀行（ＥＣＢ）理事会議事要旨
2/23(金) 9:01 イギリス 2月ＧＦＫ消費者信頼感調査
2/23(金) 16:00 ドイツ 10-12月期国内総生産（ＧＤＰ、改定値）
2/23(金) 18:00 ドイツ 2月ＩＦＯ企業景況感指数
2/23(金) 18:00 ユーロ ECB調査期待インフレ率
一言コメント
方向性があるのか、ないのか分かりづらい相場展開が続きています。焦らず少し手を休めて、相場を俯瞰する気持ちになって眺めてみるのも一つでしょうか。
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