執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼7月3日週のユーロ/円とポンド/円は方向性定まらず
- ▼景況感や中国次第で下げ幅拡大か
- △▼【ユーロ/円チャート 日足】
- ▼複数指標で売りシグナル点灯
- △▼【ポンド/円チャート 日足】
- 7/10 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2023年7月7日 14時50分
成長への不安が円買戻しを誘発?引き締め継続も市場は景気判断重視へ
7月3日週のユーロ/円とポンド/円は方向性定まらず
米ドル/円が144.00円を中心とした振幅に留まったことから、ユーロ/円やポンド/円の値動きも限定され、ユーロ/円は155.842円から157.953円、ポンド/円は182.506円から184.010円の間でもみ合いました。ただ、株価がさえない展開となったため、気持ち上値の重さが意識される時間帯が長かったように感じました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
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景況感や中国次第で下げ幅拡大か
ユーロ圏当局者の多くがインフレ抑制に強い意志を示している一方、各国の製造業・サービス業ともに景況感が停滞気味でスタグフレーションが懸念され始めています。7月10日のユーロ圏7月センティックス投資家信頼感や、7月11日のユーロ圏7月ZEW景況感調査がマイナス幅を広げるようなら、景気後退観測を強めユーロへの調整圧力が高まるかもしれません。また、中国関連のニュースにも注意が必要となります。中国当局は地方政府が抱える債務を把握するため、全国的な調査に乗り出していますが、何かしらのネガティブな話題が提供されれば、投資家のリスク回避志向がユーロを圧迫する展開も考えられます。日銀の緩和継続期待から円の頭は抑えられやすいものの、グローバルな景気減速観測が強まる局面では、避難先としての円の存在感が増し、ユーロと円の両輪でユーロ/円を下押す危険が高まります。
ユーロ/円は、155.390円付近を推移する21日移動平均線を支持線として上昇トレンドが継続しているものの、5日移動平均線の反転や、短期EMA12日間、長期EMA26日間、シグナル9日間のMACDはすでにデッドクロスしているほか、パラボリックも転換サインが点灯しており、調整地合いが意識されやすそうに見受けられます。21日線のサポート力を確認できれば、160円に向け下値を切り上げる展開も期待できますが、もしそれに失敗するようなら、6月7日安値(148.637円)と6月28日高値(157.994円)の値幅の61.8%レベルとなる154.420円や、半値レベルとなる153.316円まで目線が下がるかもしれません。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:153.500-158.500
複数指標で売りシグナル点灯
英国では7月11日に6月の雇用統計が発表されます。平均賃金で上昇の兆しが見られており、インフレ再燃への警戒が燻っています。英中銀は年後半にインフレが大きく低下する見通しを示しているものの、市場はすでにこの姿勢に懐疑的となっており、このままではスタグフレーションに陥るのではとの警戒を強めています。短期金融市場は8月に0.5%の利上げが行われ、政策金利は来年2月までに6.5%へ達することを織り込み始めており、金利の先高観はポンドを下支えしそうですが、利上げによる景気後退懸念が払しょくできない中で、ポンドを素直に買っていける状況にはないように考えます。
ポンド/円のトレンド系テクニカル指標は上昇傾向を示す指標が並んでいるものの、オシレーター系指標では売りシグナルが点灯するものが複数見られており、直近1週間の安値レベルとなる182.142円を下回った場合、心理的節目の180.00円まで目線が下がりそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:180.000-186.000
7/10 週のイベント
7/10(月) 17:30 ユーロ 7月センティックス投資家信頼感
7/10(月) 28:00 イギリス ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
7/11(火) 8:01 イギリス 6月英小売連合(BRC)小売売上高調査
7/11(火) 15:00 イギリス 6月失業率
7/11(火) 15:00 ドイツ 6月消費者物価指数(CPI、改定値)
7/11(火) 18:00 ドイツ 7月ZEW景況感調査
7/11(火) 18:00 ユーロ 7月ZEW景況感調査
7/12(水) 17:00 イギリス ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
7/13(木) 15:00 イギリス 5月月次国内総生産(GDP)
7/13(木) 15:00 イギリス 5月鉱工業生産
7/13(木) 15:00 イギリス 5月製造業生産指数
7/13(木) 15:00 イギリス 5月貿易収支
7/13(木) 18:00 ユーロ 5月鉱工業生産
7/13(木) 20:30 ユーロ ECB理事会議事要旨
7/14(金) 18:00 ユーロ 5月貿易収支
一言コメント
日銀の緩和継続姿勢を見て、円売り安心感が広がったように見受けられましたが、グローバルな景気動向を眺めると、景気の鈍化懸念が燻っている状況下で、昨年のように円安が加速するかは微妙かもしれませんね。
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