執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪ドル/円は方向感模索中。独自材料少なく、米ドルの動向に身をゆだねる
今週の振り返り
今週の豪ドル/円、NZドル/円は共に底堅さを見せつつも、上値を伸ばすことも出来ず方向感のない動きとなりました。15日に発表された中国の経済指標が予想を下回ったことで、中国の景気減速懸念が台頭。同日夜に発表された米国の経済指標が予想を大幅に下回ったことも材料視され、豪ドル/円は93.00円台、NZドル円は84.30円台まで大きく下落することとなりました。その後は米国の大幅利上げ期待が再燃する中、豪ドル、NZドルは対米ドルで売られた一方、米ドル/円が上昇したことから円に対する下値は限定的でした。豪ドル/円は93円台半ば~94円台半ば、NZドル/円は84円台半ば~85円台半ばを中心とした、方向感のない動きとなりました。
来週は米ドル中心の動きとなりそう
来週は豪、NZでは注目経済指標の発表がほぼありません。一方で、米国では8月25日~27日にジャクソンホール会議が開催されるほかにも、注目経済指標の発表が多数予定されています。各々の経済指標の結果を受けて米国の経済先行きに対する期待値の増減、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演(26日 日本時間23時)を受けての米国の利上げペースや先行きの見通しが為替相場のメインドライバーとなりそうです。米ドル/円の動きに豪ドル/円、NZドル/円は追随するものと見ています。
8月25日にはNZ4-6月期四半期小売売上高が発表されます。基本的には前述の通り米ドル中心の動きとなることから、NZの小売売上高への反応は一時的なものとなると思いますが、仮に前期よりも悪化していた場合にはNZ経済の先行き不安からNZドルは売られることとなりそうです。
RBAは大幅利上げを継続出来るのか?
今週は豪雇用市場の注目経済指標が2つ発表されました。
まず8月17日には4-6月期賃金指数が発表されました。前年比+2.6%と予想(+2.7%)を下回る結果となりましたが、
①前期から賃金の堅調な伸びは継続している(前期比+0.7%)
②豪州では7月1日から最低賃金が5.2%引き上げられた
こういった思惑から、予想を下回る結果にも関わらず、豪ドル/円への影響は限定的となりました。
翌18日には、豪7月雇用統計が発表されました。結果は図1の通りです。
【図1 豪7月雇用統計結果】
雇用者数が予想外のマイナスに転じたことで、ファーストリアクションは豪ドル売りとなりましたが、
①失業率が3.4%と1978年に月次統計を開始して以来の最低記録を更新した
②労働参加率は減少したが、それでも66%台は歴史的に見ると高水準
③失業者数は474,000人となったが、6月30日に発表された最新の求人(2022年5月)は480,100人となっており、失業者数よりも求人が多い
こういった事が材料視され、豪労働市場の逼迫は続いていると判断されました。そのため、「これらの経済指標の結果を受けて豪準備銀行(RBA)の利上げ幅を縮小する」との思惑は強まりませんでした。
現時点で、市場は9月6日のRBA理事会では0.25%と0.50%の利上げ確率を半々と見ています。来週はオーストラリアで主要な経済指標の発表が予定されていません。そのため、再来週(29日週)に発表される経済指標次第となりそうですが、筆者は、過去最高の貿易黒字を記録するなど、国内経済は依然として強いと見られていることから最低でももう1回は0.50%利上げを続けると考えています。
テクニカル的には
豪ドル/円の下値は日足一目均衡表雲の基準線が93.14円(週後半には93.10円前後)付近に位置しています。週足を見ると転換線も同じ水準にあります。今週安値(93.06円前後)もこの水準ですので目先の目途となりそうです。この水準を下抜けた場合は、日足の雲下限(92.088円)が次の下値目途になるでしょう。雲下限は2月16日に上抜けて以来、強いサポートとして機能してきました(8月2日に一旦下抜けましたが終値ではキープ)。終値で下抜けるまではサポートとして意識されそうです。一方で上値は引き続き7月高値の95.76円前後が目先の目途となりそうです。この水準を上抜けると6月8日高値の96.879円(年初来高値)を目指す動きとなるのではないでしょうか。
【豪ドル/円 日足チャート・一目均衡表】
予想レンジ:
AUD/JPY:92.00-96.90、NZD/JPY:83.00-87.00
8/22 週のイベント:
08/22 (月) 10:15 中国 ローンプライムレート(1年物、5年物)、公表
08/23 (火) 08:00 豪 8月サービス業PMI
08/23 (火) 08:00 豪 8月製造業PMI
08/25 (木) 07:45 NZ 4-6月期四半期小売売上高(前期比)
一言コメント:
先日、電車で座っていたら、私の前に立った男性の社会の窓が全開でした…教えてあげようかと思いましたが、少し強面の方だったので話しかけられず…目の前で全開はあまり気分が良いものではありませんね。私自身も気を付けます。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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