総括
FX「米金利低下とドル安が継続するか、米雇用統計とISMが注目される」
ドル円= 125-130、ユーロ円=134-139 、ユーロドル=1.05-1.10
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価8位(7位)、ドル円は3週連続週足陰線も、日足はボリバン下限で一服」
国内では曲がりなりにもインフレが2%にのせた事、上半期の輸出先行のドル売り需給、海外では米国のインフレピーク感や年後半の利上げ停止説もでて米金利が低下した。5月はここまでドル円は陰線、週足も3か月連続陰線となったことは、これまでも触れた通りである。
8月までこのペースが基本だが、6月に入れば少し気をつけたい。6月と12月は外債金利の受け取りが減少し、貿易が赤字となれば経常赤字になる可能性のある月だ。米国債の発行が6,12月は少ないからだろう。また日本の貿易赤字も減少する兆しがなく5月上旬は1兆円超えの赤字となっている。それでも上半期の輸出先行のドル売り需給で大きくドル円は戻さないだろう。貿易赤字が秋以降も続けば、今度は季節的に輸入が増加するので再び円安となるかもしれない。
6月の所得黒字の減少を相殺するものは、外国人の入国を緩和することだろう。コロナ禍で年間2000億円程度の黒字に減少した旅行収支がコロナ禍前の2兆円超えとなる。また日本の対外純資産が21年末で411兆となった。円安によるものだが、その金利配当が円転されれば円買い要因が増加する。また引き続き、日銀、財務省の為替・金利の発言にも気をつけたい。
*米ドル「通貨3位(3位)、株価(NYダウ)9位(14位)、米金利低下で2週連続でドル安、今週の金利敏感指標にも注目」
先週はNYダウが6.24%、ナスダックが6.84%上昇と今年では稀にみる上昇を示した。米金利低下によるものだ。先々週は賃金の伸び、消費者物価、卸売物価、輸入物価からインフレがピークに達したのではないかとの見方が出て、先週はFOMC議事要旨やボスティック・アトランタ連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁が年後半の利上げペイすの鈍化や低下を示唆したことで米金利が低下し、ドルが下落した。対円では3週連続、それ以外の通貨では2週連続ドルが下落した。詳細は語らなかったが、バイデン大統領がインフレは改善していると発言したことも印象的であった。
1QGDP改定値は前期比1.5%減となり、4月の速報値(1.4%減)から下方修正された。高水準の貿易赤字や在庫の伸び鈍化が重しとなった。今週も金利動向に大きく影響する、雇用統計やISM製造業・非製造業の指標に注目したい。全米の産業動向がわかベージュからも目が離せない。
*ユーロ「通貨9位(9位)、株価10位(10位)DAX)ECBも7月利上げが多数派に、2週連続上昇」
ラガルド総裁の利上げ示唆と、米FRBの年後半の利上げ後退論ユーロは2週連続上昇した。ラガルド総裁はECBが7月に中銀預金金利の引き上げを開始し、9月末までにゼロか「ゼロをわずかに上回る」水準に達する可能性があるとし、現在の水準から少なくとも0.5%の引き上げを示唆した。クノット・オランダ中銀総裁やレーン・フィンランド中銀総裁も、7月と9月にそれぞれ0.25%の利上げを実施することを支持すると表明した。4月のユーロ圏の企業向け融資は5.2%増と1年以上ぶりの大幅な伸びとなった。ECBの利上げ開始前に企業が駆け込みで借り入れを増やした可能性がある。
独IFOの5月の業況指数は93.0と、前月の91.9から予想外に上昇した。高インフレ、供給網の問題、ウクライナ戦争にもかかわらず、底堅さを示した。サービス部門が上向いた。新型コロナウイルス規制の緩和で観光や接客などのサービス業が恩恵を受けている。ただ工業製品の需要が大幅に減退しており、製造業や小売業で供給問題が続いていると指摘した。今週は7月消費者物価の発表があり、予想は7.7%と高い。
*ポンド「通貨10位(10位)、株価3位(3位)、2週連続上昇も英国内要因ではなく、米利上げ停止論で」
ポンドは対円、対ドルで2週連続上昇した。ただ全体では12通貨中10位と強くはない。米FRBがFOMC議事要旨で今年後半に急速な利上げを一時停止する可能性を示唆したことを受け、ドルが売られポンドは買われた。英国の指標は弱い。5月の総合PMIは51.8で、4月の57.6から予想以上に低下し昨年2月以来の低水準となった。インフレが進行する中、景気後退懸念が台頭している。サービス部門PMIは58.9から51.8に低下。今後1年の楽観度を示す指数は、新型コロナウイルス流行を受けた最初のロックダウン中だった2020年5月以来の低水準となった。消費者物価高騰や金利上昇などを背景に家計、企業ともに慎重姿勢が高まっている。製造業PMIも55.8から54.6に低下し、21年1月以来の低水準。新規輸出受注は20年5月以来の大幅な低下となった。
高インフレと景気減速には英中銀も悩んでいるようだ。英中銀チーフエコノミストのピル氏は、追加利上げは必要だが、過度な利上げは景気後退につながることを中銀は意識していると述べた。「過度な利上げを行えば深刻な景気後退に陥り、多大なコストを強いられるリスクがある。利上げが少なく過ぎれば、インフレが自律的に勢いづき、目標から乖離するリスクがある」と発言。
*豪ドル「通貨5位(5位)、株価7位(6位)、小売売上好調。追加利上げ観測もあり底堅い」
豪ドル円、豪ドルドルともに2週連続で上昇した。5月の予想をやや上回った0.25%の利上げで上昇も4月企業信頼感指数・5月消費者信頼感指数や建設許可の低下、1Q賃金指数の伸び悩みでボリバン2σ下限へ下落していたが、新政権誕生、4月小売売上の改善、最低水準の4月失業率などで反発、ボリバン2σ上限へ近づいてきた。
5月のRBA理事会の議事要旨では、インフレの高まりを受けて決定よりも大幅な利上げを議論したことが明らかされた。「理事会は毎月開催されるため、追加情報に基づき比較的短期間で金利設定を見直す機会がある」、「また、豪のインフレ率が徐々に目標に戻るようにするには、さらなる利上げが必要になりそうだという点でも意見が一致した」とした。6月7日の理事会で再び0.25%引き上げるという見方も強まっている。先物市場では6月に政策金利が0.60%に引き上げられることを完全に織り込んでおり、年末までに2.75%に達すると見込まれている。
また米国の賃金の伸び、消費者物価、卸売物価、輸入物価でインフレが3月にピークに達したという見方も広がり、ドル以外の通貨が買われてきたことも豪ドルを引き上げている。今週は経常収支 住宅建設許可 GDP 貿易収支などの発表がある。
*NZドル「通貨6位(7位)、株価14位(12位)、追加利上げ観測、国境再開で輸出と観光客の誘致拡大を目指す」
4月からの下落が一服し対円、対ドルで2週連続陽線となっている。5月25日の政策金利引き上げ前後から上昇している。米国インフレピーク説が出始めたこともNZドルを引き上げた。政策金利は0.5%引き上げられ2%となった。利上げは5会合連続。中銀は声明で「消費者物価(CPI)上昇率を目標の1-3%に確実に戻すため断固とした姿勢で取り組む」と指摘し、今後も金融引き締めでインフレを抑制する方針を示した。
中銀は「より大きい幅でより早期に金利を引き上げることで、インフレが持続するリスクを減らすことができる」とも説明した。1QのCPI上昇率は前年同期比6.9%と約30年ぶりの高さとなった。中銀はNZ経済は底堅いとしたが「世界経済の不確実性の高まりや高インフレが消費意欲をそいでいる」と指摘。ローン金利の上昇や供給の増加により住宅価格が下落していることにも言及した。
政策金利は22年末までに3.5%となり、中銀はその後23年後半から利下げに踏み切ると見られている。
さてアーダン首相は5月31日にバイデン大統領と会談する。首相は米国がインド太平洋地域との経済的な連携を望むのであれば、環太平洋連携協定(TPP)に復帰すべきだとの考えを示した。またNZは7月末から国境を全面再開し輸出と観光客の誘致拡大を目指す。
テクニカル分析
*ドル円「ボリバン下限で下げ一服。週足の下降ラインが上値抵抗であり続けるか」
日足、5月は下落しているが、ボリバン下限というか127円がさらなる下げに抵抗している。5月26日-27日の下降ラインが上値抵抗。526日-27日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線下向き。
週足、9週連続陽線後に3週連続陰線。3月7日週-5月23日週の上昇ラインがサポート。5月9日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。5週平均線下向く。
月足、漸くボリバン2σ上限まで下げてきた。ボリバン2σ上限と3σ上限の間で推移する強さ。3月-4月の上昇ラインがサポート。5月はここまで陰線。3か月ぶり陰線となるか。5月陰線で終われば3月-4月の上昇ラインを下抜いて6月は始まりそうだ131円以上で4月、5月上ヒゲあり。
年足、2021年は6年ぶり陽線。今年もここまで陽線。2016年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「日足はボリバン2σ上限へ。月足、5か月ぶりに陽転となるか」
日足、ボリバン2σ下限から上限へ、5月26日-27日の上昇ラインがサポート。4月21日-5月27日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き、20日線も上向き。
週足、2週連続陽線。ボリバン2σ下限から反発。5月16日-23日週の上昇ラインがサポート。2月7日週-3月28日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、ボリバン3σ下限から反発、5か月ぶりに陽転となるか。3月-4月の下降ラインが上値抵抗。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。17年-20年の上昇ラインも下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。年足的サポートラインがない。ボリバン2σ下限は1.00あたり。
*ユーロ円「5日線上向き20日線を上抜く」
日足、ボリバン3σ下限まで下落し反発。現在雲中。5月23日-27日の下降ラインが上値抵抗。5月26日-27日の上昇ラインがサポート。5日線上向き20日線を上抜く。
週足、4月18日週に一時、ボリバン3σ上限に近づいたがその後は反落。ボリバン中位と雲の上は維持。5月9日週-16日週の上昇ラインがサポート。5月9日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く。20週線上向き。
月足、1月、2月は陰線。4月にボリバン3σ上限へ上昇したが4月の長い上ヒゲもあり5月は反落している。20年5月-22年3月の上昇ラインがサポート。22年4月-5月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2年連続陽線。今年も3月に陽転。14年-21年の下降ラインを上抜く。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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