総括
FX「ドル円はボリバン2σ上限で反落。2月15日は米債利払いの日。投信概況・GDP・貿易統計にも注目したい」
ドル円=113-117、ユーロ円=128-133 、ユーロドル=1.11-1.16
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨5位(6位)、株価9位(9位)、ドル円はボリバン2σ上限で反落。2月15日は米債利払いの日。投信概況・GDP・貿易統計にも注目したい」
円相場はウクライナ緊張で2月11日は全面高になるも年初来で12通貨中5位、昨年はだいたい11位にいたので今年はそれよりもやや強い感じで推移している。ドル円では日足、週足でボリバン2σ上限に達したが、それ以上に上伸することなく反落するいつも通りの秩序だった動きだった。前回はそろそろ日銀が円相場にも言及するのではないかと書いたが、輸出企業出身の中村委員が「103-115」のレンジが望ましいと発言し若干円が強い含んだ。また黒田総裁は消費者物価がまだ0.8%と目標の2%から乖離していることもあり「金融緩和の縮小や引き締め方向への切り替えはあり得ない、 出口の議論、今の物価見通しである限り私がする可能性はない。22年度・23年度の物価、少なくとも2%になるとか2%を上回ると考えている政策委員はいない」と発言した。その後、0.25%の無制限国債買い切りオペが告知されドル円が上昇する場面もあった。
ウクライナ緊張や米国利上げ観測による株安からリスク回避の円買い場面はあるだろう。需給的には10日ごと発表される貿易統計、2月14日の投信概況をチェックしたい。また2月15日には米国債などの金利支払いの円転も出るだろう。2月後半は円高になる傾向がある。過去10年で8割程度。先週は日銀が円相場にコメントしたが、115円になると財務相や経済関連大臣から相場への発言が出るのはやはり神経質になる水準なのだろう。今週は10-12月期のGDPも発表される。
*米ドル「通貨3位(5位)、株価(NYダウ)10位(6位)、利上げではインフレが解消せず株価だけが下がる。供給問題が解決すれば金融緩和・ドル下げへ」
インフレで利上げ、デフレで利下げをすると中銀には仕事をやった感が芽生えるが、結果が伴わなかったのが歴史だ。
インフレは上昇、利上げ機運が高まっている。ただ利上げでインフレを抑制できるのかというのも疑問だ。デフレは利下げで抑制されたのはなくコロナ感染での供給問題に起因する。バイデン大統領は半導体工場の新設でサプライチェーン問題を解決しようとしている、日欧も同様だ。需給をこのように換えるのが正しいのだが、ただ工場建設・稼働まで時間がかかる。元々中国の半導体企業に制裁を加えたことに起因する。インフレは金融引き締め以外の需給の変化で突然解消すると思う。その兆しを見つけたい。利上げ観測とウクライナ危機で米株は弱い。またドル高維持で貿易赤字は「-過去最高となっている。これはドル売り要因であるが、米国も資源国のメリットがあるので、南ア、英国同様に通貨は底堅くなっている。ただ一たび貿易赤字に焦点が移るとドルも売られるだろう。
ウクライナで万が一開戦しても米国の経済への影響は隣接している欧州よりは小さい。いや第三者的立場をとっている中国によりメリットがありそうだ。中国がさらに強大化しそうだ。
*ユーロ「通貨7位(2位)、株価10位(6位)DAX)、金融政策とウクライナ情勢で揺れる。貿易大国が貿易赤字に陥る」
先週は通貨2位から7位へ下落。前週は10位から2位へ上昇していたが目まぐるしい。金融政策への発言とウクライナ危機の状況で上下している。ただ一番気になるのは11月の貿易赤字で、12月も貿易赤字が予想されている。赤字は2014年1月以来。やはりエネルギー価格の高騰が輸出圏のユーロ圏の貿易収支を狂わせてしまった。日本、ドイツと大貿易黒字大国が赤字に転じるようになったのは、やはり中国の台頭があるのだろう。
さて1月31日週はラガルドECB総裁が「年内利上げの公算は極めて小さいという発言を避けた」ことでユーロが急騰したが先週は「金利を急いで引き上げても過去最高水準にあるインフレの抑制にはつながらず、経済に打撃を与えるだけだ」と発言したことや、ウクライナ問題で緊張が高まったことで下落した。ウクライナに近接していることで下落幅はポンドより大きかった。多くのユーロ圏の国がまだコロナ感染位苦しんでいることもある。また欧州員会が成長は下方修正、インフレは上方修正という予測を示したこともネガティブに働いた。ユーロ圏のGDP伸び率は今年が4.0%、2023年が2.7%。昨年11月の予測は今年が4.3%、23年が2.4%だった。
*ポンド「通貨2位(4位)、株価5位(5位)、インフレ、賃金上昇で3月は0.5%利上げ観測浮上」
2位と堅調、一時対円で158円をつけるが先週末はウクライナ緊張で円が全面高となり終値は156円半ばとなった。ただウクライナにより近いユーロよりショックは小さくユーロポンドは下落(ポンドの上昇)した。「パーティーゲート」と呼ばれるジョンソン首相のスキャンダルは市場には影響がなかった。
英中銀は3月もしくは5月に0.5%の利上げを決定するとの観測が金融市場で高まっている。英中銀が5月の会合までに合計0.75%pの利上げを実施する確率が98%であることが織り込まれている。
英中銀は今月3日の会合で、金融政策委員9人のうち5人の賛成多数で政策金利を0.5%に0.25%引き上げることを決定したが、インフレ高進が懸念されるなか、4人が0.5%の利上げを主張していた。
21年の成長率は7.5%と1941年以来最大で、G7の中では最も高い伸びとなった。ただ、昨年12月のGDPは新型コロナウイルスのオミクロン変異株の拡大で消費者が家にとどまることになり前月比でマイナス0.2%だった。
また賃金上昇が加速していることも利上げを促している。1月に求職者の減少が加速し、初任給の上昇ペースは1997年の調査開始以来3番目の高さとなった。物価高騰を乗り切るため求職者はますます高い賃金を求めるようになっている。また企業の63%が賃金負担の増加で価格引き上げに追い込まれている。
ジョンソン英首相は、新型コロナウイルス感染後の自主隔離について、イングランドでは2月下旬から法的に義務付けられなくなると述べた。コロナとの共生に向けた現行の計画を早める意向だ。今週は1月消費者物価の発表あり。
*豪ドル「通貨10位(11位)、株価8位(8位)、ロウRBA総裁発言で上下した先週、今週は雇用統計」
年初来から低迷していたが、先週は対円で年初来1.68%安と前週の2.6%安から下げ幅を縮小した。ただ先週末はロウ総裁発言やウクライナ危機でのリスク回避で下落した。ロウRBA総裁は2月11、年内に利上げする可能性はあるものの拙速な行動はリスクを伴うとし、四半期インフレ統計を2回見てから決定する意向を示した。RBAは2月1日に債券買い入れの終了を決定。ロウ総裁は、経済が予想以上の好調なら年内に利上げする可能性を示唆していた。しかしロウ総裁は、議会経済委員会で、最近のインフレ高進が持続するか、まだはっきりしないとし、中銀は忍耐強く情勢を見極める用意があると説明。「この不確実性は早期に解消することはない」と述べ、あと2回、四半期消費者物価指数(CPI)統計を見たいと示唆した。したがって利上げは8月以降の可能性がある。
市場は、0.1%の政策金利が6月までに0.25%に上がり、さらに4回の利上げで年内に1.25%に達する可能性を織り込んでいた。しかしロウ総裁は、米国でみられるインフレ圧力の多くは豪には存在しないと強調。コアインフレ率が中銀の目標レンジ(2-3%)まで上昇したのはつい最近のことだと指摘した。賃金の伸びも2.2%と米英の半分足らず。豪中銀は緩和措置を縮小するには3.0%かそれ以上になる必要があるとみている。ロウ総裁は、失業率を50年ぶりに4%未満に押し下げる、めったにない機会が与えられていると述べた。今週は17日にその注目の1月雇用統計の発表がある。前月の失業率は4.2%であった。
なお2月21日からワクチン接種済みのビザ保有者の渡航再開となる。景気回復に繋がるか。
*NZドル「通貨最下位(最下位)、株価13位(12位)、来週の利上げ観測が強まる」
先週は対円で0.6%上昇も、年初来では2.73%安で最弱通貨だ。需給的には貿易・経常赤字が続いていることがある。ただ2月23日の政策金利決定を控えて上昇する可能性はある。予想は0.25%引き上げ、0.5%引き上げの声も出ている。21年4Qの消費者物価は前年比5.9%上昇し、予想の5.7%を上回り、約30年ぶり高水準を記録したが、中銀は、インフレは1Qに加速するとの四半期調査結果を公表した。
企業予想では今後1年の平均インフレ率は4.4%で、前回12月の調査の3.7%から加速した。今後2年のインフレ率予想は3.27%で、前回の2.96%から加速。中銀の政策行動が物価に浸透するのは2年間と考えられている。21年12月四半期の平均的な世帯の生活費は2020年12月四半期より5.2%高かった。21年4Qの失業率は3.2%と、1986年の集計開始以来の低水準に改善した。利上げの材料は出揃っている。
またアーダーン首相は、段階的な国境再開を発表した。新型コロナウイルスワクチンを接種済みの国民について、豪に滞在している場合は今月27日から、他国に滞在している場合はその2週間後から、隔離なしで帰国できるとした。これが景気を浮揚できるか。
テクニカル分析
*ドル円「日足、週足でボリバン上限から反落」
日足、ボリバン3σ上限まで上昇も先週末は反落し雲の上限に迫った。2月10日-11日の下降ラインが上値抵抗。2月2日-11日の上昇ラインがサポート。
5日線、20日線下向き。
週足、1月3日週に続き、先週もボリバン2σ上限に達するも反落、長い上ヒゲを残した。1月31日週-2月7日週の上昇ラインがサポート。
月足、ボリバン2σ上限から下落も20か月線から反転で陽転。10月-12月の上昇ラインがサポート。雲の上。
年足、2021年は6年ぶり陽線。2022年は僅かに陽転。15年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン2σ上限から反落」
日足、ボリバン2σ上限から反落、中位まで下落。2月10日-11日の下降ラインが上値抵抗。1月31日-2月11日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線下向く。
週足、ボリバン下限から中位越えも先週は反落。21年8月30日週-22年2月7日週の下降ラインが上値抵抗。1月31日週-2月7日週の上昇ラインがサポート。
月足、2月はボリバン下限から上昇、一時雲の上に出る。20年3月-22年1月の上昇ラインがサポート。21年1月-5月の下降ラインが上値抵抗。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。20年‐21年の上昇ラインを下抜いている。17年-20年の上昇ラインがサポート。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「ボリバン2σ上限上抜きから急落」
日足、ボリバン下限から一気に2σ上限上抜くも先週末は雲の上限近くまで反落。2月3日-11日の上昇ラインがサポート。2月10日-11日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く。
週足、1月31日週の大陽線から先週はボリバン2σ上限へ達するも続かず陰線。雲の上限で踏みとどまる。1月31日週-2月7日週の上昇ラインがサポート。10月18日週-2月7日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、1月の陰線から2月第1週は陽転。ボリバン中位から反発。21年10月-11月の下降ラインを上抜く。21年12月-22年1月の上昇ラインがサポート。
年足、2年連続陽線。20年-21年の上昇ラインを下抜く。14年-21年の下降ラインが上値抵抗。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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