総括
動いたヨコハマ。政経最悪の事態脱出のきっかけとなるか
ドル円=107-112、ユーロ円=126-131 、ユーロドル=1.15-1.20
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(11位)、株価15(13位)、中途半端なコロナ対策、株価対策や景気対策はなしで消費低迷の円高くすぶる」
今夏の円は最強ではないが全体で強含み推移している。6月、7月は3位の強さだったが8月はここまで2位。ただ夏の需給の円高要因でも最強通貨になれなくなったのは、理由がある。中途半端なコロナ対策で感染者は増加するばかりだが、景気対策は打たれていない。4-6月期のGDPは前期比0.3%増、年率換算で1.3%のプラス成長となった。マイナス成長だった1-3月期の落ち込みを取り戻せず、日本経済は景気停滞から抜け出せなかった。4度目の宣言が発令中の7-9月期も消費低迷が確実だ。欧米の回復基調と比べると見劣りがする。トヨタ自動車は、9月の世界生産が当初計画から4割程度減少する見通しを明らかにした。東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足が続いており、9月も国内完成車工場の生産調整を行う。これも景気減速の要因となろう。日経平均も年初来マイナス圏に落ち込んでいるが対策は出ない。
晩秋になれば、輸出のドル売りも出尽くして、輸入が目立つ円安となる傾向があるが、消費低迷が続けば、輸入金額も伸びず円安の度合いも小さいものとなろう。コロナ禍、株安、低成長での円高が続く。
(横浜市長選、与党敗れる。政経最悪の事態脱出のきっかけとなるか)
さて横浜市長選挙は立憲民主党が推薦した山中氏が初当選を決めた。地元選出の菅首相が全面支援した前国家公安委員長の小此木八郎氏は敗れた。政治に無関心派の多い横浜市民だが今度ばかりは違った。投票率は前回の37.21%から49.05%へと上昇した。政府が推すIRカジノの問題やコロナ感染拡大、ワクチン接種の遅れに不満が高まったということだろう。全国民も同じような状況だと推測できる。こうなれば、政権交代が考えられる。現在の海外に比し中途半端で方針が定まらぬコロナ感染対策や思い切った景気対策がなく低成長や株価の低迷を生んでいる現状では、次期政権に誰がつこうと少なからず改善していくことが予想できる。問題は多いが、ネットなどの意見は選挙に反映されることが分かった以上、国民の声を重視した政策がとられるだろう。そうなれば円相場や株価が安定すると思われる。
*米ドル「通貨2位(4)位、株価(NYダウ)5位(6)位、リスク回避の初期反応はドル高だが一時的」
世界的なリパトリとなれば、資金力が大きく、短期で回す米国のリパトリの勢いが強くドル高となる。8月はここまでドルが最強だ。円が追う。さて注目は週後半のパウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演だ。FRBはコロナ危機を受けて導入した量的緩和に関し、景気回復を踏まえて縮小に向けた議論を進めている。7月の議事要旨では、大半の参加者が「年内の縮小開始が適切である公算が大きい」との見解を表明。早ければ次回9月下旬の政策会合で縮小開始を判断する可能性がある。ただ雇用回復を見極めるべきだとの意見も根強い。感染力の強いコロナ変異株が景気や雇用に及ぼすリスクへの警戒もあり、パウエル議長が講演で景気認識や政策の方向性についてどこまで踏み込むかが焦点となる。
しかし米国の景気は強いのだろうか。8月の経済指標を見ると手放しで強いとは言えない。強い指標は、雇用、景気先行指数、失業保険、住宅建設許可、鉱工業生産など、弱いものは、フィラデルフィア連銀製造業、住宅着工、NAHB住宅市場指数、小売売上、NY連銀製造業、ミシガン大消費者態度指数、ISM製造業などだ。また物価はPPIは強い。CPIも強いが前月比やコアは上昇縮小してきている。コロナ感染者数も急増している。金融緩和を縮小しても、直ぐに元に戻す可能性もある。8月は冒頭の世界的リパトリの初期減少でドルが強いが、拡大しつつある貿易赤字がある限り、ドルが上昇続けることはなくFRBや米政府が容認することもないだろう。
*ユーロ「通貨8位(9)位、株価4位(6位)DAX)、ユーロ圏成長率下方修正」
夏の円高基調の下でまた世界的なリスク回避の流れでユーロは下げた。世界同時にリスク回避でリパトリとなれば、資金運用の大きい米国の戻す勢いが強くドル高ユーロ安となりやすい。ユーロ圏の長期金利も低下している。ECBは米国のテーパリング示唆に対して既に金融緩和の継続をフォワードガイダンスで表明している。ZEW景気期待指数も弱い。独自動車大手のフォルクスワーゲンは、トヨタに続き世界的な半導体不足を理由に生産を縮小する可能性があると明らかにした。景気減速の一因となるだろう。ユーロ圏のエコノミスト調査では、ユーロ圏の経済成長率は3Qが2.1%、4Qが1.2%と予想され、前月時点の2.4%、1.3%からそれぞれ下方修正された。インフレ率については、4Qに平均2.8%とピークを付けた後、来年に平均1.5%に低下すると予想されている。
6月のユーロ圏経常収支は黒字額が218億ユーロで、前月の139億ユーロから増加した。サービス黒字が急増した。6月までの12カ月間の経常黒字は、ユーロ圏域内総生産(GDP)比2.8%となった。需給的にはユーロの下落に歯止めをかけるだろう
*ポンド「通貨3位(3位)、株価9位(9)位、資源価格下落、消費者物価、小売売上弱く、コロナ感染再拡大も売り要因」
世界的なリスク回避の流れで資源価格が下落すると、資源関連の本社機能がある英国のポンドも連れ安となる。7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.0%上昇した。伸び率は前月から予想以上に縮小し、英中銀の目標と一致した。6月の上昇率は2.5%だった。予想は2.3%の上昇が見込まれていた。7月小売売上も弱かった。前月比では2.5%減少、予想は0.4%増加で6月は0.2%増加であった。前年比では2.4%増、予想は6%、6月は9.2%増であった。前回も触れたが中銀はややテーパリング方向へ向かっていたが、CPIと小売売上の弱さでポンドは売られた。1日当たりコロナ感染者数も5万人から2万人台へ低下したがここ7日間平均では再び3万人台へのせていることも不安要因だ。
*豪ドル「通貨11位(10位)、株価7位(7位)ロックダウン、資源価格下落で続落」
ついに円に抜かれ年初来では12通貨中11位に下落した。対中関係の悪化や中国経済の減速、中国のIT企業中心の規制強化で世界的なリスク回避の流れとなり資源価格も下落し豪ドル売りとなった。国内ではシドニーでコロナ感染者が増加してロックダウンとなり景気にも影響が出ると見られる。ロックダウンは9月末まで延長される。シドニーで最も影響が大きくなっている12自治体のエリアを対象に午後9時から午前5時までの夜間外出禁止令を今週から導入する。RBAは8月17日公表した8月理事会議事要旨の中で、新型コロナウイルス流行に伴う国内のロックダウンが景気後退を悪化させる恐れがあれば、政策面で行動を取る用意があるとした。デルタ株の拡大により債券買い入れプログラム縮小計画を延期するよう中銀に求める圧力が強まる中、その可能性が高まっているとみられている。
8月の消費者信頼感指数や7月の企業景況感指数は悪化した。7月の雇用統計は、失業率は4.6%となり、予想外に改善したが、統計局は、新型コロナウイルス対策のロックダウンの影響で職探しが制限されたことが要因だとしているので良いニュースではなかった。
*NZドル「通貨9位(7位)、株価13位(最下位)、ロックダウンで利上げ見送りも中銀は10月利上げを示唆し小反発」
先週、NZドルは対円で2.72%、対ドルで2.9%下落した。 新型コロナウイルスの市中感染が半年ぶりに確認されたことを受けて全国的なロックダウンが増入されたからだ。アーダーン首相はロックダウン導入で「はるかにリスクが少ない状態」になると述べた。国内ではワクチン接種が遅れており、人口500万人のうち接種が終了したのは21%で、OECD加盟国では最も少ない。ただこれによってNZ中銀の金融政策決定会合では経済指標改善を受けて予想されていた利上げが見送られた。NZドルは下落したが、先週の株価指数は世界で唯一上昇した市場となった。
週末にオア中銀総裁は、国内で新型コロナウイルスの感染が続いても、10月の次回会合で政策金利引き上げを決定する方針をこれまでで最も明確に示した。新型コロナ感染だけでは中銀の政策引き締めを妨げないだろうと述べ、この見解を変えるには「需要への大きなショック」が必要になると付け加えた。総裁は「われわれが時とともに学んだことは、所得は引き続き堅調で、需要は非常に迅速に回復しているが、こうしたロックダウンの繰り返しがしばらく続くだろうということだ」と述べた。NZドルは小反発した。今週は小売売上、貿易収支、消費者信頼感の発表がある。
テクニカル分析
*ドル円「ボリバン2σ下限近くから反発。雲には入れず」
日足、ボリバン2σ下限近くから反発。雲には入れず。8月19日-20日の上昇ラインがサポート。8月19日-20日の下降ラインが上値抵抗。雲下。ボリバン中位。5日上向き、20日線下向く。
週足、ボリバン中位。8月9日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。8月2日週-9日週の上昇ラインがサポート。雲の上。5週線下向き。20週線も下向きに。
月足、一目の雲に入りきれない6か月。21年5月-7月の上昇ラインを下抜くも戻す。ボリバン2σ上限からは下落。ボリバン上位。5か月移動平均線は下向き。
年足、2020年まで5年連続年足陰線だが、今年はここまで陽線維持。15年-20年の下降ラインを上抜く。16-20年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「ボリバン中位から2σ下限まで下落」
日足、ボリバン中位から2σ下限まで下落。8月17日-20日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く。
週足、ボリバン下位、雲中。8月2日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。20年11月2日週-8月16週の上昇ラインがサポート。
月足、4月-6月の上昇ラインを下抜ける。1月-6月の下降ラインが上値抵抗。20年3月-5月の上昇ラインがサポート。雲の上維持。ボリバン上位。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。17年‐20年の上昇ラインがサポート。14年‐20年の下降ラインも上抜いたが下抜き返す。
*ユーロ円「ボリバン2σ下限で推移」
日足、ボリバン2σ下限で推移。8月19日-20日の上昇ラインがサポート。8月19日-20日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。20日線下向き。雲の下。
週足、ボリバン2σ下限。20年11月2日週-21年8月16日週の上昇ラインがサポート。8月9日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。雲の上。
月足、8か月連続陽線とならず2か月連続陰線。今月も陰線スタート。134.10あたりでダブルトップ。20年11月-21年7月の上昇ラインを下抜く。20年6月-11月の上昇ラインがサポート。21年6月-7月の下降ラインが上値抵抗。雲の上。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインも上抜く。
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