執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は101.06円前後、NZドル/円は91.42円前後で週初を迎えました。週末の衆院選で与党(自民・公明)の獲得議席が過半数議席割れとなったことによる政権運営への不透明感が出たことで、両通貨ペアともに上方向に窓を開けてオープンしました。31日の日銀金融政策決定会合後の定例記者会見で、植田日銀総裁が「時間的余裕」という文言を意図的に使わなかったことで、豪ドル/円は99円台、NZドル/円は90円台まで低下しました(執筆時)。
RBAの利下げは当分先 利上げ示唆には注意
来週は5日(火)にRBAが金融政策会合を開催します。今回RBAは政策金利を4.35%に据え置くと市場は予想しています。
30日に発表された豪7-9月期消費者物価指数(CPI)が前年比+2.8%と予想(+2.9%)以上に前回(+3.8%)からインフレの伸びが鈍化を示しました。ただ、豪準備銀行(RBA)が重視するCPIトリム平均は+3.5%で、まだRBAのインフレ目標レンジ内(2~3%)に入っていませんでした。
31日に発表された豪9月小売売上高は前月比+0.1%で市場予想(+0.3%)を下回りました。ただ、前月が予想を上回る伸びだったので、豪州の消費は堅調さを維持しているとの評価です。そして労働市場に関しても9月には雇用者数が市場予想(2.5万人増)を大幅に上回る結果(6.41万人増)だったため、現時点で利下げを急ぐ理由がありません。
総合のCPIが大幅に低下した一つの要因は豪政府による電気代の支援策です。政府の支援策の恩恵を受けて、7-9月期の電気料金は17.3%も低下しています。しかし豪統計局(ABS)の試算ではこの支援策がなければ電気料金は0.7%上昇していました。また、堅調な消費は豪政府による減税が一因として考えられています。つまり、RBAが金融引き締めをしてインフレを鈍化させようとしているのに対し、豪政府はインフレを加速させかねない政策を採っているのです。豪政府はこれらの政策を策定する際にインフレ加速につながらない程度の支援策だと試算していたようですが、CPIや小売売上高の結果を見る限り豪政府の試算は甘かったようです。
現時点で、短期金利市場が織り込むRBAの利下げ確率は来年の4月会合が60%強、5月会合が99%となっていますので、市場は「RBAの利下げは当面ない」ことを織り込んでいます。声明やブロックRBA総裁の記者会見で、利上げの可能性が示唆されなければ、豪ドルが買われる要素は少なそうです。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は200日移動平均線付近での動きが続いています。8月初旬の安値と9月中旬の安値でダブルボトムが完成し、9月初旬の高値を上抜けたことでネックラインを抜けたとも受け止めることが出来ます。ネックラインだった99.86円前後が引き続き目先の下値目途となりそうです。終値でこの水準を下抜けた場合は日足一目均衡表の雲上限が次のサポートになりそうです。また、週足一目均衡表の雲下限が97.60円前後に位置していますので、大きく値を下げた場合は同水準が意識されそうです。一方で目先の上値目途は101.40円前後です。この水準は10月3,4,7日の高値のほか、7月高値と8月安値を結んだフィボナッチリトレースメントの半値戻しの水準でもあります(8月5日の長い下ヒゲは考慮しない)。10月23日には101.69円前後まで上昇していますが、終値ベースでは抜けきれていませんので、終値ベースで上抜ければさらなる上昇が期待できそうです。その上の水準では同フィボナッチ61.8%戻しの103.25円前後が目途となりそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表、200日移動平均線】
予想レンジ:AUD/JPY:98.00-102.00、NZD/JPY:89.50-92.50
11/4週のイベント:
11/05 (火) 10:45 中国 10月財新サービス部門購買担当者景気指数(PMI)
11/05 (火) 12:30 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表
11/06 (水) 06:45 NZ 7-9月期四半期就業者数増減
11/06 (水) 06:45 NZ 7-9月期四半期失業率
11/07 (木) 未定 中国 10月貿易収支
11/07 (木) 09:30 豪 9月貿易収支
一言コメント:
先日、仕事の都合で子供の習い事(水泳)の送り迎えが出来ない日があり、その日の送迎を私の父に頼みました。父は初めて孫の水泳を見に行ったので帰宅後「どうだった?」と聞くと、「孫のクラスは子供が3人で先生が2人だった。楽しそうだった。」との感想。普段息子のクラスは生徒が2人なので、息子に「3人になったの?」と聞くと「2人だし、いつもの先生一人だけだった」との返答。どうやら父は全然違う子供を孫と勘違いして見ていたようです。祖父母あるあるですね…
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中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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