目次
▼米景気堅調で米利下げ期待の巻き戻し…ランドは下落
▼南アの景気は緩やかな拡大見通し…ランドは対円では底堅いか
米景気堅調で利下げ期待の巻き戻し…ランドは下落
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
(資料)Bloomberg
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
FRBによる利下げ期待を背景に、昨年11月以降、ドルの下落基調が続いて来たが、依然として底堅く推移する米景気動向を受けて、こうした利下げ期待が年初から一部巻き戻されると、米金利と共にドルも反発に転じた。ランドもこうしたドルの反発を受けて再び下落方向へ推移した。
南アの景気は緩やかな拡大見通し…ランドは対円では底堅いか
南アフリカ経済は、緩やかな景気拡大が続いているが、国営電力会社エスコムが1月に入り予定を前倒しして計画停電を再開したことなど、固有のマイナス材料が嫌気されている面もありそうだ。南アフリカ準備銀行(SARB)も、1月25日に政策金利の据え置きを発表し、引き続き緩やかな景気拡大見通しを公表したが(第2図)、長引く電力や物流の問題を潜在成長率の引き下げ要因として警告していた。今後もFRBの利下げ開始を巡る市場の期待の揺らぎにランドも翻弄され易いとみられ、目先ドルが底堅く推移するとすれば、ランドもさらに下落方向へ推移しそうだ。一方、米金利持ち直しの動きは、これと比較的安定した逆相関関係にある円相場の軟調推移にもつながり易いことから、ランドは対円では一定の底堅さを期待できそうだ。もっとも、3月や4月の日銀金融政策決定会合での政策修正期待が高まり、円が独自に反発する動きには注意を要しよう。
第2図:SARBによる南アGDP成長率見通し
南アランド/円 週足チャート
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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