執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪ドル/円の方向感は出にくい?欧米のリセッション懸念と米高官発言を材料に動く
今週の振り返り
今週の豪ドル/円、NZドル/円は共に前週からの円買い調整相場が継続。2日には豪準備銀行(RBA)が0.50%の利上げを実施し政策金利を1.85%としましたが、声明文の変化がハト派的と捉えられて豪ドル/円は90.52円前後まで下落、NZドル/円も豪ドル/円に連れる形となり下値を拡大しました。その後、米国金融当局者の相次ぐタカ派発言を受けて、「米国の景気後退(リセッション)の影響で米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを落とすのでは?」との思惑が弱まり、米ドル/円を中心とした円買い戻しの調整相場は終焉を迎えました(と見られています)。
その後は、3日にペロシ米下院議長が台湾を訪問、台湾の蔡英文総統と会談を行ったことで、中国が猛反発。台湾海峡にて実弾を使用した軍事演習を行うなどリスク警戒感が強まったこと、欧米の景気減速(リセッション)懸念が強まったこと等によりクロス円は上値が重くなりました。
RBAはハト派に傾きつつある?
今週RBAは、市場の予想通り0.50%の利上げを行いました。これで0.50%利上げは3会合連続となりました。声明では「RBAは経済の安定を保ちながら、インフレを目標の2-3%に戻すことを高い優先順位をつける」としたほか、今後の利上げについて「あらかじめ決められた道筋はない」と今までの声明にはない文言が追加されました。市場はこれらの文言を「ハト派的」と捉えて、豪ドルは売りで反応しました。ただ、筆者はRBAがハト派に転換したとは考えていません。声明に「経済の安定を保ちながら…」という言葉がありました。豪州経済を見ると、雇用市場は高い労働参加率と低い失業率で、統計開始以来、今が一番良い状態です。小売売上高などから見ると消費行動もまだ悪化はしていません。貿易収支を見ると、石炭や天然ガスを中心とした資源高の影響から5月、6月と2カ月連続で過去最高の貿易黒字額を更新しました。現時点では豪経済は、大幅利上げに耐えられる状況です。
今後指標が悪化してくれば利上げ幅の調整はあると思いますが、次回(9月6日)のRBA理事会では最低でも0.50%の利上げは継続と考えています。
来週の注目経済指標は?
来週は豪州で消費や生産などの実数を表すハードデータの経済指標の予定はありません。消費者信頼感指数などのソフトデータの発表はありますが、RBAが「ハードデータを重視」とはっきり言いきっています。豪州の経済指標へ反応は一時的なものとなりそうです。
欧米では10日に米7月CPI、独7月CPI(改定値)、12日には英4-6月期GDPや米8月ミシガン大消費者態度指数といった注目経済指標の発表が予定されています。現在、市場では欧米のリセッションへの警戒感を強めています。各々の経済指標の結果が、リセッション入りを想起させるようであれば、リスクオフの姿勢が強まり、豪ドルには売り圧力がかかってきそうです。 一方で、今週はFRB高官のタカ派的な発言が市場心理を一転させました。来週も複数のFRB高官の発言が予定されており、総じて大幅利上げに前向きな発言となることが予想されます。たとえ経済指標の結果が芳しくなくても、タカ派的な発言で米ドル/円が買い戻される。結果、豪ドル/円は米ドル/円につれて底堅い動きとなるのではないでしょうか。
テクニカル的には
豪ドル/円の日足一目均衡表雲下限は2月16日に上抜けて以来、強いサポートとして機能してきました。今週大きく下抜ける場面もみられましたが、終値ベースではかろうじてサポートしています。来週もこの水準、92.088円が目先の下値目途として見られそうです。終値でこの雲下限を下抜けてしまった場合は、①転換線が基準線の下、②遅行線がローソク足の下、③ローソク足が雲を下抜け、と三役逆転、売りのサインが点灯することになり、下げが加速する可能性があります。7月1日~6日下値を支えた91.50円前後や8月2日安値の90.50円前後を通過点に、節目となる90.00円を目指す動きとなりそうです。一方で上値は雲上限(93.61円前後)を終値でしっかり上抜けられるかが焦点となりそうです。ここを上抜けることが出来れば、7月高値の95.75円前後を目指すのではないでしょうか。
【豪ドル/円 日足チャート・一目均衡表】
予想レンジ:
AUD/JPY:90.00-95.80、NZD/JPY:82.00-86.00
8/8 週のイベント:
08/07 (日) 未定 中 7月貿易収支
08/09 (火) 10:30 豪 7月NAB企業景況感指数
08/10 (水) 09:30 豪 8月ウエストパック消費者信頼感指数
08/10 (水) 10:30 中 7月消費者物価指数(CPI)
08/10 (水) 10:30 中 7月生産者物価指数(PPI)
08/12 (金) 07:30 NZ 7月製造業PMI
一言コメント:
夏になると食べたくなるものはありますか?私はここ数年、酢の物が食べたくなります。中の具材は、数年前はタコとかだったのですが、昨年からはミョウガにはまっています。我が家の酢の物は簡単。きゅうりやミョウガなどスライスして、すし酢をかけて30分くらい冷蔵庫で寝かしたら出来上がり。お酢は夏バテ防止にも良いらしいですよ。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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