FX/為替見通し「ユーロ/円の下値は限定的。ECB９月の0.5％利上げ、あり得る」週刊為替レポート　ハロンズ　ユーロ＆ポンド　2022年6月12日

主要国との金利差拡大に根差した円安が下支えとなり、ユーロ/円は144.253円、ポンド/円は168.724円まで各々レンジ上限を広げ、両通貨ペアとも年初来高値を更新しました。ただ、ユーロ/円はラガルドECB総裁の会見後に利食い売りが優勢となり、142.273円レベル（執筆時点）まで押し戻される場面もありました。

ECBは表面上緩やかなタカ派でも・・

9日のECB理事会では、大方の予想通り、7月から利上げが開始されることがアナウンスされ、利上げ幅も0.25％とする意向が示されました。一方、9月の利上げ幅については、0.25％になるか0.5％以上になるかはインフレ動向次第とし、言質を与えませんでした。成長見通しが下方修正される中で、無難な選択と言えそうで表面的には緩やかな引き締めとの捉え方が優勢のようでした。しかし、実情はかなりタカ派な議論がされていたのではないかと考えています。あくまでも個人的な考えですが、メディアでは、「一部のメンバーは7月0.5％の利上げを支持」と伝えていました。「一部」なので正確な数は分かりませんが、半数を超えないながらも相当数の支持者がいたのだろうと感じました。

「9月の予測で2024年インフレ見通しが2.1％以上であれば、9月の利上げ幅は0.25％より広がる」と、少し遠回しな言い方でしたが、2.1％は今回の見通しの数字です。しかも、インフレリスクは上振れ方向としていますので、9月の新たな見通しではこれを上回ってくる可能性が高いとみられます。いったん材料出尽くしから、ユーロは頭が重くなっていますが、9月の0.5％利上げ期待はユーロを支えそうです。そのため、下方向への調整を短時間で済ませて、ショートカバー中心の展開になりそうな雰囲気です。何れにしてもデータ次第であることに変わりありませんので、17日に発表される5月のユーロ圏消費者物価指数・改定値がどこまで上方修正されるのか注目されます。

ポンド、利上げ打ち止め感が出るのか？

スタグフレーションへのリスクは他の主要国より高いものの、6月も政策金利を0.25％引き上げ、1.25％にすることが確実視されています。注目は「今回の利上げ後、しばらくBOEが様子をみるのでは」との観測が市場関係者の間に浮上する中、BOEがこれに対してどのような回答を示すのかでしょう。利上げ停止なら英経済に対する不透明感が和らぎ、ポンドを下支えする一方、利上げの継続性が強調されれば、成長減速への不安からポンドには売りバイアスがかかりやすくなるのではないでしょうか。筆者は、英国の雇用情勢が底堅いため、利上げサイクルの停止は早計と見ていますので、ポンドは引き続き下押し圧力がかかった状態が続くと考えています。この点では、金融政策委員会の直前に発表される失業率のデータも重視されそうです。

ユーロは次第に持ち直しか

ユーロ/米ドルでは、1.06891ドル付近（執筆時点）の日足一目均衡表・雲下限がレジスタンスとして機能していて、ユーロの上値の重さは気になります。ただ、同基準線1.05683ドル、執筆時点）レベルのサポートが厚そうなため、このまま雲に突入できれば、徐々に下値不安が後退して戻りを試すのではないでしょうか。ユーロ/円も買われ過ぎからの調整で、140.529円レベル（執筆時点）を推移する一目・転換線付近への後退はありそうですが、ユーロ買い戻しと円安の動きが重なれば、146.000円付近への反発も期待できそうです。

【ユーロ/円チャート　日足】

ユーロ/円チャート日足
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：EUR/JPY：140.500-146.000

ポンド/円、あきらめ悪く売り目線継続

目先の抵抗帯だった、日足一目・雲上限を突破して168円後半まで上伸してしまい、目測を大きく誤りました。一度、仕切り直しが必要です。そこで、改めて個人投資家に人気があるRCI（順位相関係数）をみると、ようやく短期の6日間ラインがさげ始めてきたため、ここはもう一度売り仕掛けで臨みたいと考えます。上向きの勢いが残っていますので、引っ張らずにストップロスは浅めにして、再度、売り直しができる余力を残しながらですが・・・。

【ポンド/円チャート　日足】

ポンド/円チャート日足
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：GBP/JPY：165.000-169.000

6/13 週のイベント

6/13(月) 15:00 イギリス 4月月次国内総生産（ＧＤＰ）
6/14(火) 15:00 ドイツ 5月消費者物価指数（ＣＰＩ、改定値）
6/14(火) 15:00 イギリス 5月失業率
6/14(火) 18:00 ドイツ 6月ＺＥＷ景況感調査（期待指数）
6/14(火) 18:00 ユーロ 6月ＺＥＷ景況感調査
6/15(水) 25:00 ユーロラガルドECB総裁、講演
6/16(木) －ユーロ圏財務相会合（ユーログループ）
6/16(木) 16:30 スイススイス国立銀行３カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値
6/16(木) 20:00 イギリスイングランド銀行（ＢＯＥ、英中央銀行）金利発表
6/16(木) 20:00 イギリス英中銀金融政策委員会（ＭＰＣ）議事要旨
6/17(金) 15:00 イギリス 5月小売売上高
6/17(金) 18:00 ユーロ 5月消費者物価指数（ＨＩＣＰ、改定値）

一言コメント

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目次

ユーロ/円の下値は限定的。ＥＣＢ９月の0.5％利上げ、あり得る

6月6日週のユーロ/円、ポンド/円はそろって上昇