総括
ドル安傾向の通貨が増えてきている。スイス、円、ユーロなど
ドル円=107-112、ユーロ円=128-133 、ユーロドル=1.16-1.21
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価13(13位)、コロナ感染者増、日経続々落、景気対策遅延の「三刀流」、移動平均線では円高ドル安が始動」
今年は5月までは単月で12通貨中、常に10位を下回っていた。現在も年初来では11位だが、6月、7月単月では連続3位と調子を上げてきた。夏の円高需給があった。年初来では10位豪ドルに迫りつつある。貿易収支も1-6月で約1兆円の黒字で昨年同期は約1兆円の赤字だったので2兆円をまき戻している。困ったことは感染者増加でまたまた経済が停滞しそうだ。8月16日発表の4~6月期の実質国内総生産(GDP)の予想は前期比年率で0.7%増にとどまった。プラス成長となれば2四半期ぶり。ワクチン普及の遅れなどから個人消費の低迷が続いており、米欧など他の主要国に比べても景気の足取りは重い。多くの国はコロナ前の2019年10~12月期を上回っているが日本は下回りそうだ。コロナ前の水準の回復には21年10~12月期までかかる見通しだ。米国の4~6月期の実質GDPは前期比年率で6.5%増え、コロナ前の水準まで回復した。ワクチン接種の進展で個人消費が大きく伸び、全体をけん引した。
日経平均は3月から5か月連続で下落してついにマイナス圏となった。株価を上昇させられない政権は短期で交代するが、今回はどうだろう。これといった景気対策は出されていないし、飲食業への支援金支給も遅れているようだ。米国は即座に小切手を郵送する素早さがあったのが景気回復、株価回復をもたらしたのだろう。総選挙前の景気対策では遅すぎる気がする。遅ければ内閣支持率も落ちて、景気後退も続き、リスク回避の悪い円高が続くのだろう。
*米ドル「通貨5(5)位、株価(NYダウ)4(3)位、ドル安傾向の通貨が増えてきている。スイス、円、ユーロなど」
米ドルは年初来では12通貨中5位で強くもなく弱くもないが、7月単月では8位と弱含み推移となった。20日移動平均線では「円、ユーロ、ポンド、スイス、トルコ、人民元」でドル安方向となってきた。2Q・GDPは前期比年率6.5%増。予想の8.4%増を下回った。サプライチェーンの制約が経済全体に影響し、政府支出や住宅投資、在庫が伸びを抑制した。ただ米経済の最大部分を占める個人消費は前期比年率11.8%増加し、予想も上回った。FOMCでは、現在の困難な時期に米経済を支えるため、あらゆる手段を用い、それによって最大限の雇用と物価安定という目標を促進することにコミットしているとした。米金利低下は続いている。パウエル議長は雇用と物価の両面で進展があったとし、テーパリング開始まで市場との対話を十分に重ねる意向を示した。開始の時期は今後の経済データ次第で変わると強調し、特定のスケジュールは「決めていない」と語った。コロナ感染者の増加もテーパリングを抑制させるだろう。さて財政の崖、債務上限問題も国民の日常生活に支障を来すため最終的には上限の引き上げで合意するが、長引けば、ドルの頭を押さえるだろう。今年はドルが強いとも言われるが一度も12通貨中でトップに立ったことはない。膨大な貿易赤字がそれを許さない。今週は雇用統計の発表がある
*ユーロ「通貨8(8)位、株価6位(4位)DAX)、経済指標好調。緩和的フォワードガイダンスは堅持か。ユーロ上昇基調か」
ユーロの対円20日線はまだ下向きだが、対ドルの20日線は上向きとなり、FOMCのテーパリング示唆やチャイナショックでのユーロ安から持ち直してきている。株価は独DAXは年初来13.31%高とマイナス圏に陥った日経平均と比べると堅調だ。
経済指標は好調だ。ユーロ圏2Q・GDPは前期比2%増、前年比13.7%増で予想を上回った。新型コロナウイルス感染防止のための規制が緩和されたことが寄与した。ユーロ圏7月CPIは前年比2.2%で目標を上回った。独7月IFO業況指数は6月の101.7から100.8に低下したが、ユーロ圏の7月景況感は119で過去最高となった。ユーロ圏6月失業率、7.7%で5月の8.0%を下回った。
ただECBは政策の目標とする物価の上昇率をこれまでの「2%近く」から「2%」に改めたうえで、物価の上昇率が一時的に2%を上回ってもこれを容認することを明確にしている。そのうえで、今のマイナス金利政策や国債の買い入れなどの大規模な量的緩和についてすべて現状のまま維持することを決定した。経済再開の動きに合わせて物価に上昇の動きが見られる一方で、感染の再拡大が再び影を落とし始めていることを考慮しているので良好な経済指標も想定内で慌てて金融政策の変更は行わないだろう。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価11位(10)位、感染縮小、金融政策は緩和維持か」
チャイナショックやコロナ感染拡大で一時下落するも、ここ2週間は対円、対ドルで持ち直してきた。通貨番付では12通貨中2位、FT株価指数は年初来8.85%高でまずまずだ。対ドルでは20日線が上向きポンド高ドル安方向へ、対円では20日線下向きでまだ円高ポンド安方向だ。コロナ抑制策解除で感染者数は1日あたり5万人を超えたが、現在は2万7千人へ半減していることもポンド買いに繋がった。
今週の英中銀政策決定会合では6月消費者物価は目標を超える2.5%となったが金融政策は据え置きと見られている。金融政策委員ではインフレは一時的な上昇と見るものが多い。ブリハ委員は、最近のインフ
レ高進は一過性である可能性が高く、新型コロナウイルスが依然として経済の脅威であることから、英中銀は2022年に入るまで刺激策を縮小すべきではないと述べた。将来的な政策金利に関しては、借入コストが低水準にとどまる可能性が高く、英中銀の政策余地が限られることから、今後金融刺激策が必要になった場合には政策金利をマイナス0.5%またはマイナス0.75%に引き下げることも認められると言及した。
ブロードベント副総裁、ハスケル委員、次期委員のマン氏もインフレ上昇は一時的とした。一方、ラムスデンBOE副総裁やサンダース委員ら少数は「緩和縮小の検討を開始する可能性がある」としている。
*豪ドル「通貨10位(10位)、株価8位(9位)、RBAはテーパリングを覆すか、コロナ感染者増大、ロックダウン延長で」
豪ドルは弱い。通貨番付では10位に落ち、夏好調の11位の円に追い抜かれそうだ。一番の問題はNSW州でコロナ感染者数が増加し8月28日まで自宅待機などのロックダウンが延長される(ただ感染者数は全人口
2500万人に対して1日平均189人と日本の常識から比べると少ない)。軍隊も出動し国民の行動を抑制する。2Q消費者物価は前年比3.8%上昇と目標の2%をはるかに超えたが、コロナ感染拡大による経済活動停滞を勘案し今週のRBA理事会では前回発表したテーパリング決定を覆すと見られている。7月の理事会で、経済が予想以上に好調となる中、9月から債券買い入れプログラムの購入ペースを現行の週50億豪ドルから40億豪ドルに縮小すると発表していた。しかしそれ以降、多くのエコノミストが経済見通しを大幅に下方修正している。RBAの利上げ開始時期の見通しも2023年3Qに後ずれしている。これまでは23年2Qに0.15%の利上げが予想されていた。
*NZドル「通貨7位(7位)、株価15位(15位)、8月利上げ観測あるが豪の動向も注意」
NZドルも強くはないが、テーパリング解消見込みの豪ドルよりは強い。豪、NZともに金融政策の変更には機動的というか小回りが利く。これまでも世界の利上げ、利下げを先導してきた。通貨介入も機動的に対処する。今のところ、テーパリングから金融緩和維持へ逆戻りしそうな豪と異なり、8月18日の中銀政策決定会合では政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げる予想だ。2Qの消費者物価が、予想以上に上昇し、約10年ぶりの大幅な伸びを記録したからだ。前年比では3.3%上昇し、2011年6月以来の大幅な伸びとなった。目標の1-3%を超えた。中銀は既に、大規模資産買い入れ(LSAP)プログラムに基づく追加的な資産購入を7月23日から停止すると発表している。もし利上げ予想が覆るとしたら、豪の感染拡大がNZまでに及ぶ時か、NZドルが対豪ドルで強くなりすぎる時だろう。利上げ観測もあり通貨は豪より強いが、NZ株価は下落して年初来3.8%下落している。今週は2Q雇用統計に注目したい。
テクニカル分析
*ドル円「日足5日線、20日線下向き、週足5週線下向く。20週線上向きもなだらかに」
日足、ボリバン2σ下限で反発。7月19日-30日の上昇ラインがサポート。7月28日-30日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。雲中。
週足、ボリバン2σ上限から下落し中位に達す。6月28日週-7月26日週の下降ラインが上値抵抗。7月19日週-26日週の上昇ラインがサポート。雲の上。5週線下向く。20週線上向きもなだらかに。
月足、一目の雲から落ちる。21年5月-7月の上昇ラインがサポート。ボリバン2σ上限から下落。ボリバン上位。
年足、2020年まで5年連続年足陰線だが、今年はここまで陽線維持。15年-20年の下降ラインを上抜く。16-20年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「日足、5日線上向き。20日線も上向くか」
日足、ボリバン2σ上限まで上昇し、7月30日は6日ぶり陰線。7月28日-30日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。20日線も上向くか。
週足、ボリバン下位、雲中。6月7日週-7月26日週の下降ラインが上値抵抗。7月19日週-26週の上昇ラインがサポート。
月足、4月-5月の上昇ラインを下抜ける。1月-7月の下降ラインが上値抵抗。20年7月-21年7月の上昇ラインがサポート。雲の上維持。ボリバン上位。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。17年‐20年の上昇ラインがサポート。14年‐20年の下降ラインも上抜いたが下抜き返す。
*ユーロ円「ボリバン2σ下限から反発し中位へ」
日足、ボリバン2σから反発し中位へ。7月28日-30日の上昇ラインがサポート。7月29日-30日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。20日線下向き。雲の下。
週足、ボリバン2σ下限から反発。7月5日週-26日週の下降ラインが上値抵抗。7月19日週-26日週の上昇ラインがサポート。雲の上。ボリバン下位。5週線、20週線下向き。
月足、8か月連続陽線とならず2か月連続陰線。134.10あたりでダブルトップ。20年11月-21年7月の上昇ラインがサポート。21年6月-7月の下降ラインが上値抵抗。雲の上。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインも上抜く。
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