総括
ここでも米中対立 米国のテーパリング示唆 VS 中国の景気減速
ドル円=108-113、ユーロ円=128-133 、ユーロドル=1.16-1.21
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価13(13位)、海外需要増、国内需要減少は貿易黒字拡大に繋がる円買い要因。補正予算は」
ドル円は6月末のドル買いが終わったところで、日足、週足、月足もボリバン2σ上限へ伸びきっておりテクニカルで下落しやすかった。その後、東京では4度目となる緊急事態宣言の発令および首都圏3県などでのまん延防止等重点措置の延長があり、景気停滞に繋がることもあり、日経平均が大幅下げ、円もリスク回避の買いがでて109円後半へ下落した。6月末にドル円の売り注文が110円後半から111円台へ続いていたこともドルロングポジションの調整売りとなった。実需では輸出のドル売りが先行するいわゆるリーズ&ラグスは8月頃まで続くだろう。
今週は日銀金融政策決定会合がある。展望リポートでは、東京都への緊急事態宣言を受けて21年度の成長率見通しが下方修正される一方、消費者物価は原材料価格の上昇を織り込んで上方修正の公算が大きい。いずれにせよ消費が盛り上がることはなく輸入増に結び付かない。海外景気回復で輸出は伸びているので貿易黒字は拡大し円買い要因となる。それを見越してか、自民党の二階幹事長は、新型コロナ対策などのため補正予算の編成が必要だとした上で、規模は「30兆円に近いものを考えていかなければならない」と話した。妥当だが遅れると景気停滞・円高が続いてしまうだろう。
日銀6月の「生活意識に関するアンケート調査」によると、1年後の景況感が「良くなる」と答えた割合から「悪くなる」の割合を引いた景況感指数(DI)はマイナス14.9と、3月の前回調査より6.4ポイント悪化した。前回調査と比べマイナス幅が広がったのは5四半期ぶりだ。
*米ドル「通貨5(6)位、株価(NYダウ)4(5)位、インフレは一過性か?債務上限問題は」
G20財務相・中銀総裁会合では「下方リスクと負の波及効果を防ぎつつ、支援策のいかなる早まった引き揚げを回避し、引き続き回復を持続させる」となった。これは主要中銀トップの言葉と同じだ。さてFRBは金融政策報告で、「ワクチン接種の進展に加え、緩和的な金融・財政政策からの支援により経済再開と力強い成長がもたらされている」としつつ、「新型コロナのパンデミッの影響が引き続き米経済に重しとなっており、雇用はパンデミック前の水準をなお大きく下回っている」とした。パウエル議長は14日に下院金融委員会、翌15日に上院銀行委員会でそれぞれ証言する予定。金融政策報告はそれに先立ち公表された。報告では、金融当局による資産購入、ならびに物価と雇用の目標を達成するまで利上げを実施しないとの方針により「回復が完了するまで金融政策が経済を強力に支援し続けることを確実にできる」と説明した。FRBはインフレ高進が落ち着かず、将来の物価上昇期待が2%目標と整合する水準を「持続的に上回った」場合、「金融政策スタンスの変更が求められる」可能性があると記した。
市場に基づくインフレ期待の指標については、インフレ率が短期的な急上昇の後、2.25%付近で落ち着くとの投資家の予想を示していると説明。その上で、この水準は金融当局の目標と整合していると指摘した。また米国債利回りは6月16日のFOMCのテーパリング示唆以前より低下している。市場が次第にパウエル議長のインフレは一時的という考えに同意してきたのだろう。今週は6月消費者物価の発表があり、予想は4.9%の上昇だ。目標の2%をはるかに超えているが5月も5%だったので市場は予想には驚いていないだろう。またイエレン財務長官が危惧する連邦政府の債務上限の期限が近付いてきた。引き上げなければ
8月中にも米国がデフォルトに陥る深刻なリスクがあると警告している。
*ユーロ「通貨9(9)位、株価2位(3位)DAX)、ECBとFRB、考え方には大きな差異はないだろう。あとはファンダメンタルズの差異に従う」
FRBのテーパリング示唆でのリスク回避での下げから反発している。対ドルの週足では2週連続で1.1860あたりから長い下ヒゲを出し下げ渋り感を出している。さてECBは、中期的なインフレ率目標を「2%」に変更すると発表した。これまでの「2%に近いが、それを下回る水準」を改め、物価の一時的な上振れを容認する。ラガルド総裁は会見で「物価の伸びが常に2%にならないことは承知している」とした上で、「緩やかで一時的な乖離が上下両方向にあり得るものの、問題ではない。しかし持続的で根強く、大幅な乖離があれば大きく懸念する」と表明した。今回の決定がおおむね刺激策のさらなる長期化につながるとみられている。また6月10日の理事会の議事要旨によると、政策当局者は、経済回復が加速する中で金融緩和策を縮小することを協議したが、最終的には緩和的な政策を維持することで「大筋で合意」した。
ラガルドECB総裁がインフレは一時的と見ていることは、パウエルFRB議長とは大きくは変わらない。もしテーパリングを実施するにしても時期は少々差があっても大きな違いはないだろう。
ドルとユーロの差はファンダメンタルズ、その時々の経済指標の差となる。ただ膨大な貿易黒字のユーロ圏と膨大な貿易赤字の米国では通貨の強弱は中期的に自ずと出てくるだろう。今週は米独首脳会談にも注目したい。特に中国問題で同意するかどうか。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価9(10)位、感染急増でも死者減少でロックダウン解除の賭け」
ポンドは米中対立激化やFRBのテーパリング示唆で一時対ドルで1.37台まで下落するも、先週終値は1.39に近づいた。対円でも一時151円台をつけるも153円へ戻してきた。強含みしてきた経済指標も5月のGDPは自動車生産低迷で前月比0.8%増に鈍化したが、ジョンソン大統領がイングランド地域で新型コロナウイルス感染対策として実施しているロックダウンを7月19日に全面解除し、経済活動を再開させる方針に期待している部分もある。ただ感染者が激増している中で、ロックダウン解除を実行に移せば、科学者の一部から、不安視する声が出てくるのは間違いない。首相の考えはこうだ。デルタ株の場合、ワクチンは感染予防よりも死亡と重症化を食い止める面で効果を発揮している。その結果、英国の新規感染者は急増しながらも、死者数の増加ペースはそれほどではない。具体的には、1日当たり新規感染者数は現在2万5000人超と5月半ばの10倍以上に膨らんでいる半面、死者数は4月半ば以降ずっと1日当たり30人未満で推移。これはワクチンが生命を救っている証拠だとした。
さらなる制限措置解除が、3Qの力強い成長継続に寄与するのか、それとも新型コロナの感染拡大が続き、消費者の警戒感が強まるのか、場合によっては新たな全面ロックダウンにつながるのかの賭けでもある。
今週は6月消費者物価の発表がある。5月の2.1%上昇に続き、目標の2%を超える予想だ。ただベイリー中銀総裁は、「一時的な」インフレ高進に過剰反応すべきではないと述べ、近く引き締めに動くとの臆測を打ち消している。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価10位(9位)、中国景気減速、豪の感染拡大でRBAは慎重なかじ取り」
米中対立激化やFRBテーパリング示唆でのリスク回避は簡単には終わりそうでもない。また中国の景気減速は中国への貿易依存度の高い豪経済へも影を落とすだろう。豪中銀(RBA)は政策金利を予想通り過去最低の0.1%に据え置き、2024年まで金利はこの水準にとどまるとの見通しを示した。債券購入ペースは、現行の週50億豪ドルから40億豪ドルに縮小することを決めた。これについてロウRBA総裁は債券買い入れの縮小は支援停止を意味しないと述べ、中銀が金融引き締めに乗り出したとの見方を否定した。金利は長期にわたって過去最低の0.1%にとどまると述べ、市場の利上げ観測を否定した。「小幅な買い入れ縮小であり、経済の進展を反映している」と述べた。インフレ加速には失業率がさらに低下し、4%台前半に維持される必要があるとの認識を示した。「総賃金の伸び率は緩やかに上昇するとわれわれはなお見込んでいる。インフレ率が持続的に2-3%の目標範囲内に収まるには2024年までかかると引き続き予想している」と語った。また「インフレ率がこの範囲内に収まると予想されるだけでは不十分だ。金利を変更する前に結果を見たい」とし、「実質的な進展をさらに遂げるまで債券買い入れを続ける」と述べた。
またシドニーでは、変異ウイルスの感染拡大に歯止めがかからないことから、外出制限を延長するとともに、運動などで外出できる距離や人数を制限するなど、規制が強化されることになった。
*NZドル「通貨7位(7位)、株価15位(15位)、11月の利上げ確率は76%」
今週は政策金利は据え置き予想、2Qの消費者物価は目標の2%を超えそうな予想だ。テーパリングが進みそうな雰囲気だが、米中対立激化による世界的なリスク回避もあり素直にNZドルが上昇する状況にはない。2Qの企業信頼感は大幅に回復した。力強い景気回復が向こう1年続くとの見通しが示された。 中銀が予想より早期に利上げするとの観測が高まった。業況全般が「良くなる」と回答した企業の割合から「悪化する」と回答した企業の割合を引いた値はプラス7で、前四半期のマイナス13から大きく持ち直した。労働力不足とサプライチェーンの問題が生産能力への一段の圧力となり、インフレ高進の可能性を示している。「コストと価格双方の上昇はインフレ圧力の高まりを示唆し、今後1年間中銀による利上げがあるとの見方を支えている」と予想されている。利上げ期待は顕著に高まり、金融サービス企業の約60%が今後1年間に利上げがあると予想している。
ウエストパック銀行やASB銀行も11月に利上げを行うとの見通しを示した。インフレと需要の指数は非常に強く、中銀があまり長く待つわけにはいかないことが一段と明確になった。市場金利にも変化が見られており、企業信頼感調査の発表後、翌日物金利スワップが織り込む11月の利上げ確率は76%となった。
テクニカル分析
*ドル円「ボリバン2σ上限から下限まで反落し小反発」
日足、ボリバン2σ上限から反落し小反発。7月8日-9日、5月25日-7月8日の上昇ラインがサポート。7月8日-9日、7月2日-8日3の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。
週足、4週連続陽線の後ボリバン2σ上限から反落し先週は陰線。1月4日週-7月5日週の上昇ラインがサポート。雲の上。ボリバン上位。
月足、一目の雲に突入。21年4月-5月の上昇ラインがサポート。2か月連続で109.30以下で下ヒゲが効いて上昇。ただボリバン2σ上限から下落中。今月は一時雲の下へ。
年足、2020年まで5年連続年足陰線だが、今年はここまで陽線維持。15年-20年の下降ラインを上抜く。16-20年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「先週末は連続陽線で反発、流れ引き継ぐか」
日足、7月8日-9日の上昇ラインがサポート。6月15日-16日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。ボリバン下位。
週足、ボリバン下位、雲中へ下落。1.1860以下の下ヒゲで抵抗。6月28日週-7月5日週の下降ラインが上値抵抗。3月29日週-7月5日週の上昇ラインがサポート。
月足、1月-5月の下降ラインが上値抵抗。4月-5月の上昇ラインを下抜ける。20年11月-21年4月の上昇ラインがサポート。雲の上維持。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。17年‐20年の上昇ラインがサポート。14年‐20年の下降ラインも上抜いたが下抜き返す。
*ユーロ円「ボリバン2σ下限から反発」
日足、ボリバン中位から下限へ下落。7月6日-9日の下降ラインが上値抵抗。7月8日-9日の上昇ラインがサポート。5日線下向き。雲の下。
週足、ボリバン2σ上限から中位へ反落。6月28日週-7月5日週の下降ラインが上値抵抗。1月18日週-7月5日週の上昇ラインがサポート。雲の上。
月足、8か月連続陽線とならず。134.10あたりでダブルトップ。2月-6月の上昇ラインを下抜く。20年6月-11月の上昇ラインがサポート。雲の上。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインも上抜く。
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