総括
紆余曲折あっても、また前に進んだ。真夏の円高はまだ注意
ドル円=105-110、ユーロ円=118-123 、ユーロドル=1.10-1.15
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨2位、株価9位、コロナは少し前進、真夏の円高とF35円安?」
日本だけに限らず前月比の経済指標は改善し、前年比では悲惨な数字が続く。経済を休止していた3-5月からは再開すれば元に戻るので前に進んでいることになり、世界中でリスク選好の株高が続いている。その中でコロナウィルス感染第2波や上半期の輸出超で時折円高となる。下半期になれば輸出のドル売りも剥落するので例年通り円安傾向が強まる。
日本のアビガンは残念ながら期待外れであるが、ギリアドのレムデシビルは死亡リスクの低下と重症患者の症状の大幅な改善が確認されたことで先週末はリスク選好が進んだ。コロナ感染でも紆余曲折ありながら前に進んでいる。
日本は米国からステルス戦闘機F35を購入、金額は230億ドルになるようだ。最近の減少する出来高の10日分なので巨額だが、外貨準備を使えば為替は起きなくなるので注意したい。
さて4-6月期の、国内総生産(GDP)は年率23.9%減少する見通し。中国以外は同じく悲惨な結果となるので為替的には大騒ぎすることはないが、経済的には日本はコロナ以前から縮小しているのが気がかりなところだ。
*米ドル「通貨4位、株価(NYダウ)10位、紆余曲折あっても、また前に進んだ」
紆余曲折ありながら株高ドル安の流れが続いている。トランプ大統領はロシア疑惑で有罪となった友人のストーン被告を恩赦し米国の分断をさらに広めた。中国との確執も治まらない。それでも先週もナスダックは4%上昇し、年初来18.3%高となった。政治やコロナ感染がどうあろうと前に進む強さを感じる。別にトランプ大統領だけが任期中に株を上げたのではなく、オバマ大統領やクリントン大統領はもっと株価を上昇させていた。バイデン氏が大統領になれば増税懸念も出てウオール街が危惧するところだが、杞憂となるだろう。コロナ感染終了後もハイテク産業の勢いは止まらないとみたい。
もちろんギリアド社がレムデシビルの死亡リスクの低下と重症患者の症状の大幅な改善を確認したことも大きい。
リスク選好となると世界最大の米国の対外資産(27兆ドル)が動き出す。それは海外の株高とドル安を招く。日本は対外純資産国だが資産は米国の3分の1程度(10兆ドル)であり、かつ米国に預けている外貨準備や機関投資家のバッファーのようなものなので動きにくい。やはり米国の投資家の動きが重要だ。コロナ感染対策で膨らんだ財政赤字の問題も出てくるが、そこで共和・民主が対立することはないだろう。
*ユーロ「通貨3位、株価8位(DAX)、着々と。ドルを上回る強さ」
地味ながら年初来ではドルより強くなってきた。仲間も増える。クロアチアとブルガリアの欧州為替相場メカニズム2(ERM2)加盟が承認された。両国は早くて2023年にユーロを導入する見通しとなった。 5月の製造業PMI、小売売上、鉱工業生産など前月比で改善するという最低限のことは進んでいる。ミシェルEU大統領は2021-27年度予算案について、欧州委員会の提案よりも小規模となる1兆740億ユーロとする案を提示した。加盟国間の予算を巡る見解の相違を緩和し、7500億ユーロの新型コロナウイルス復興基金案の合意につなげたい考えだ。17-18日に開く首脳会議で7年間の中期予算を巡り討議する。全加盟国が全ての内容に同意するわけではないが、いつもの欧州スタイルで時間をかけて乗り切るだろう。ECB理事会では金融政策の効果を見極めるために現状維持か。
*ポンド「通貨9位、株価14位、やや戻すも年初来ではポンドも株も弱い。要因は」
世界的なリスク選好でユーロドルは3週連続上昇したが、ポンドドルも負けずに2週連続上昇となった。ただ年初来ではポンド、FT株価ともに弱い。EU離脱後の交渉が難航していること、従来からの貿易赤字、欧州では出遅れたコロナ感染対策がその要因だろう。
ムーディーズは、今年、英国経済が被る打撃は先進国中で最も大きく、公的債務が国内総生産(GDP)に占める比率は2019年比で24%ポイント急増する可能性が高いとの見方を示した。今年の英国経済が10.1%のマイナス成長に陥るとした上で、ロックダウンが解除されれば段階的な回復が予測されるとし、来年の成長率はプラス7.1%に達するとしている。
その中でスナク財務相は、、新型コロナウイルス感染拡大を受けた企業の人員削減による雇用危機の回避に向け、総額300億ポンドの対策を発表した。一時帰休された従業員の復帰支援のほか、接客業と旅行業向けの減税措置などが盛り込まれている。接客業者と旅行業者に対する付加価値税率を6カ月間にわたり20%から5%に引き下げる。また、8月の1カ月間は月曜日から水曜日の間に外食する人に対し1人当たり10ポンドを上限として飲食費の50%の割引を政府が負担する。 また来年3月末までの時限措置として、不動産取得税の適用水準を50万ポンドと、現在の4倍の水準に引き上げた。
*豪ドル「通貨6位、株価11位、徐々に回復。対中関係は悪化」
先週は豪ドル、豪株価指数ともに弱含んだ。特に株価が弱いのは中国との軋轢が影響しているのだろう。政府は自国民の中国への渡航に関して注意喚起の勧告を発した。「中国当局は外国人を、国家の安全を脅かしたとして拘束したことがある」と警告。豪中関係は、豪政府が新型コロナウイルスの発生と拡散について国際的な調査を要請したことを受けて悪化している。コロナウィルス第2波を懸念して再びビクトリア州で外出が制限されている。ただ感染者数は多くなく、米国に比べればかなり慎重な対策だ。
景気は徐々に元に戻り始めている。RBAは停滞していた経済活動が予想より早く再開したことについて、慎重ながらも楽観的な見方を示した。
ロウ総裁は、「国内経済が1930年代以来最大の落ち込みに見舞われているが、最近になって状況は安定してきており、景気低迷は以前の予想ほど深刻ではなくなっている」とし「国内の総労働時間は5月も減少したが、減少幅は4月よりもかなり小さく、事前予想よりも小さかった。また、国内のほとんどの地域で感染の減少や規制の緩和を受 けて、個人消費にも持ち直しの動きが見られた」との見解を示した。
また「緩和的なアプローチは必要とされる限り維持する。完全雇用に向けて進展があり、インフレ率が2-3%の目標値の範囲内で持続的に推移すると確信するまでは、キャッシュ・レートの目標値を引き上げない」と表明した。今週は雇用統計の発表がある。
*NZドル「通貨7位、株価4位、今週は消費者物価、通貨安定、株価は再びマイナス圏に」
今年のNZドルは強からず弱からず。株価は強く先々週はプラス圏を回復したが、先週は再びマイナス圏へ下落した。下落はNZの要因ではなく、世界的なコロナウィルスの感染拡大がありリスク回避が進んだ影響もある。米市場での先週末のワクチン治験改善の動きはNZ市場にはまだ反映していない。今週は2Qの消費者物価の発表がある。四半期ごとなので大きく前期から振れやすいが、1Qの前年比2.5%からコロナ感染の影響もあり1.4%に低下する予想となっている。
悪いニュースは、リオ・ティントが、住友化学との合弁事業であるアルミニウム精錬所「NZアルミニウム・スメルターズ(NZAS)」を閉鎖すると発表したこと。コストの高さと厳しい市場環境を理由に挙げている。
政治は安定強化。アーダーン首相は9月19日の総選挙に向け、自らが率いる労働党の選挙活動を本格化させた。首相は中小企業向け融資制度の期限延長とインフラおよび環境関連の雇用の拡大を約束した。
首相は新型コロナウイルスのパンデミックへの対応が評価され、近年の首相の中では最も高い支持率を誇っており、総選挙にこれが反映されれば、労働党の単独過半数獲得も可能性になる。
テクニカル分析
*ドル円=「下落もボリバン下限から反発」
日足、ボリバン下位。下限からは反発。6月23日-7月10日の上昇ラインがサポート。7月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。
週足、6月22週-29日週の上昇ラインを下抜く。6月22週-7月6日週の上昇ラインがサポート。6月29日週-7月6日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下位。
月足、3月-4月の下降ラインを上抜く、3月、4月の下ヒゲ効果で5月上昇。2月-6月の下降ラインが上値抵抗。5月-6月の上昇ラインがサポート。ボリバン中位以下に。
年足、4年連続陰線。16年-19年の上昇ラインは一旦下抜くも上抜き返す。16年-17年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロドル=「ボリバン上限越えから小反落」
日足、ボリバン上限越えから小反落。先週末に一旦7月3日-8日の上昇ラインを下抜くも、再び上抜き返して越週。7月3日-10日の上昇ラインがサポート。7月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。
週足、3週連続陽線もやはりボリバン上限に近づくと押される。6月29日週-7月6日週、6月22週-29日週の上昇ラインがサポート。6月8日週-7月6日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、2月から5月までボリバン下限を何度も一時下抜くも下げ止まる。5月-6月の上昇ラインがサポート。3月-5月の下降ラインを上抜き、ボリバン上位へ上昇も押し返される。3月-6月の下降ラインが上値抵抗
年足、2年連続陰線。現在はわずかに陽線。18年-19年の下降ラインを上抜く。02年‐17年の上昇ラインがサポート。14年‐18年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円=「先週金曜日は下ヒゲ長い」
日足、6月22日-7月9日の上昇ラインを下抜く。先週金曜日は下ヒゲ長い。7月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。6月22日-7月10日の上昇ラインがサポート。5日線下向き。雲の上。ボリバン中位。
週足、6月8日週-7月6日週の下降ラインが上値抵抗。6月22週-7月6日週の上昇ラインがサポート。雲中、ボリバン上位
月足、ボリバン下限で3か月連続で長い下ヒゲを出し漸く5月、6月は陽線。ただ6月の上ヒゲ長く7月は5月-6月の上昇ラインを下抜いてオープン
年足、2年連続陰線。18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
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