総括
コロナ第二波よりトランプリスク
ドル円=104-109、ユーロ円=113-118 、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨首位、株価8位、静かな最強通貨」
円は依然として年初来最強通貨の位置を保っている。リスク回避の円買いもあるが、新年度(4月-9月)で季節的に輸出のドル売りが輸入のドル買いより予約が活発になる時期だからだ。それでもかつてのような急激な円高にならないのは、ここ数年続いている貿易収支の均衡にあり需給の歪みがなく年間を通じればアウトライトの円買い、円売りが拮抗しているからだろう。ただ輸出入双方が減少傾向にあり、出来高も減少傾向が続く。今週は1-3月のGDPの発表がある。他の国同様に大幅悪化、リセッションとなる。政府自ら歴史的な危機としている以上、リーマンショック以上の危機があれば消費税は引き上げないとしていたので消費税は引き下げるのが当然だろう。また今週は4月貿易統計の発表がある。予想は5000億円程度の赤字で年間トータルでも少額の赤字となる。一方資本筋は海外投資にはそれほど積極的でなく、一時的な円売りの圧力も小さい。日経平均は今年の高値安値の半値近くまで戻している。市場は前を向いている。秋に向かって補正予算が組まれればリスクオンとなるだろう。
*米ドル「通貨2位、株価(NYダウ)9位、コロナウィルスより怖いトランプ大統領」(米中緊張とマイナス金利はドル高要因)
経済指標は頗る悪い。14%の失業率、300万人増加する失業保険申請、2000万人減少する非農業部門雇用者数、それでもドルは円程ではないが底堅い。今まで経済指標の小さな動きにに一喜一憂していたのが嘘のようだ。元々長期的にドルを動かすのは一般の経済指標より貿易需給なので経済指標に一喜一憂しないのが正しい姿かもしれない。コロナウィルス感染者数や死亡者数が依然深刻な状況にある米国も経済活動を再開し始めた。ナスダック市場は世界に先駆けて年初来プラス圏に回復した。過去の悪化した経済指標を嘆くより将来へ前向きに進んでいる。波乱は大統領選挙を前にしたトランプ大統領。コロナウィルス感染の責任を中国やオバマ前大統領に向けている。もちろん、中国もオバマ氏も一歩も引かず反論してくるだろう。長引く論争は、経済にととって悪影響を及ぼす。コロナウィルスよりもトランプ大統領の暴走が怖い。ただ世界もその暴走になれているかもしれない。
長期的には膨大な貿易赤字でのドル安傾向が残るが、短期的にウィルス責任問題で中国との貿易が縮小したり、マイナス金利で日本のように国民の可処分所得が減少して消費が衰えるとドル高要因となる。
*ユーロ「通貨5位、株価12位(DAX)、弱からず強からず。違憲とされた量的緩和政策は」
ユーロドルは2月から日足、週足、月足のボリバン下限にくると下げ止まる。年足では2002年‐17年の上昇ラインがサポートとなっている。今年は円やドルより弱いが、全体では上位グループにあり、当局としても為替については何の問題もないところだろう。1Q・GDPが他国同様に落ち込んだ。GDP改定値は前期比3.8%減となり、統計を取り始めた1995年以来、最大の減少となった。
国別では、フランスが前期比5.8%減と最も大きく落ち込み、イタリアは4.7%減、ドイツは2.2%減となった。3月のユーロ圏貿易統計では、輸出は前年比6.2%減、輸入は10.1減少した。貿易収支は282億ユーロの黒字。
さてドイツのメルケル首相はECBの量的緩和を一部違憲とした憲法裁判所の判断について、政府は賢明に対応すると述べ、ユーロ圏として経済政策でより緊密な連携を進める契機にするとの考えを示した。
メルケル首相は議会で「憲法裁の判断を尊重するのは私の責任だ。ユーロ圏が存続し、独連銀がECBの活動に参加できるよう、責任ある賢明な対応を取ることが重要だ」と述べた。
一方、欧州委員会は、ECBの量的緩和政策(QE)についてドイツ連邦憲法裁判所が一部違憲と判断したことを巡り、同国を提訴する可能性があると表明した。
欧州司法裁判所(ECJ)と欧州委員会は、域内ではEU規律が優先されるとの見解を表明していた。欧州委のフォンデアライエン委員長は、さらに踏み込んでドイツを提訴する可能性に言及した。
*ポンド「通貨8位、株価13位、EU離脱交渉進まず、対米交渉も不満あり」
労働者は手厚く保護されている。英政府は一時帰休を強いられている社員の給与を補償する制度を9月末まで延長する。補償規模は給与の60%に縮小される。
当初5月末まで3カ月の予定だった。それだけ感染症が改善されていない。さてEU離脱手続きの交渉は進展していないが、米国との自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉では、米農産物の輸入関税を引き下げる計画が打ち出された。ここではユースティス環境相らが英農家の競争力を損なう恐れがあるなどとして反対している。貿易交渉は前途多難だ。
1Q・GDPは前期比で2%減%となった。新型コロナウイルスの感染を抑制するための経済活動の封鎖措置が響き、金融危機の最悪期だった2008年末以来の大幅なマイナス成長を記録した。
英国のロックダウンは3月23日に始まったばかりで、多くのユーロ圏諸国よりも遅かった。4月以降はずっと経済の封鎖が続いていたため、もっと悪い数字になる公算が大きい。
*豪ドル「通貨7位、株価11位、気になる対中関係 3月小売売上は1982年以降最大の伸び」
豪ドルとNZドルに差が出ている。3月半ばはパリティーかと思われた豪ドルNZドル相場だが現在は1.08台で豪ドル高である。対ドルではともにボリバン上限から反落したが、豪ドルはそれでもボリバン中位に留まっているが、NZドルはボリバン下限に達した。対円では豪ドルは一目均衡表の雲の上、NZドルは雲の下である。ともにコロナウィルス抑制に成功したが、豪の3月小売売上高が前月比8.5%増加したことが豪ドルを支えた。統計を取り始めた1982年以降で最大の伸びとなったことが効いている。食品の売上高が24%増加、酒類が30%増加した。スープ類が180%増となったほか、小麦粉が140%強、トイレットペーパーは115%それぞれ増加した。4月の雇用は悪化した。就業者数は前月比59.43万人減少、失業率は6.2%となった。
心配なのは対中関係。豪政府は、新型ウイルスの発生源やWHOの対応も含め、感染の拡大に関する独立した調査を呼び掛けているが、中国はその必要性はないとして拒否している。中国は豪産大麦に反ダンピング関税を課す方針との報道もあり、豪に対し報復措置に出たとの見方が出ている。
*NZドル「通貨9位、株価3位、マイナス金利示唆」
3月半ばから中国の回復とともに上昇してきたNZドルだが、5月に入って反落している。オア中銀総裁は、一部の銀行はマイナスの政策金利や銀行間金利に実際に対応できるよう作業中で、運用上の課題が残っていると述べた。中銀は金融政策会合で、資産買い入れの規模を倍に拡大した。「財政ファイナンス」については、可能性を排除しなかったが、財政ファイナンスを実施したいかどうかは政府が決めることだと続けた。
政府は政府は、20年度予算を発表。新型コロナウイルスの世界的流行で打撃を受けた経済の立て直しに向け500億NZドルの過去最大規模の予算を計上した。インフラや医療、住宅向けの大型財政支出、給与支援プログラムの拡充を盛り込んだ。アーダーン首相は「雇用」予算と称したが、大規模な失業や企業破綻を防ぐのに十分ではない可能性もある。公的債務のGDP比率は22年度に53.6%に達し政府目標の15-25%を大幅に上回ることになる。S&Pは今回の予算について、今後数年、財政にかなりの打撃を及ぼした後、緩やかに回復すると予想している。
対中関係は悪化した。中国外務省はWHO総会について、NZが台湾のオブザーバー参加を支持したことを非難した。
コロナウィルス対策では、政府は14日から商業施設や映画館、飲食店、ジムなどの営業を条件付きで再開した。
テクニカル分析
*ドル円=「日足雲中5日、週足は4月27日週-5月4日週の下降ラインを上抜く」
日足、雲中。5月11日-15日の下降ラインが上値抵抗。5月14日-15日の上昇ラインがサポート。雲に入るか。5日線上向き。
週足、4月27日週-5月4日週の下降ラインを上抜く。5月4日週-11日週の上昇ラインがサポート。4月6日週-5月11日週の下降ラインが上値抵抗。雲の下。
月足、3月波乱、4月は陽線スタートも陰転。3月-4月、2月-3月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下位。
年足、4年連続陰線。16年-19年の上昇ラインは一旦下抜くも戻す。16年-17年の下降ラインが上値抵抗。年初来では陰線。
*ユーロドル「ボリバン下限から小反発も中位越えられず」
日足、ボリバン下位で小動き。5月13日-15日の下降ラインが上値抵抗。5月14日-15日の上昇ラインがサポート。5月1日-8日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。まだ終値でボリバン中位を越えられず。
週足、ボリバン下位だけで行ったり来たり。5月4日週-11日週の上昇ラインがサポート。同じく5月4日週-11日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、2月から今月までボリバン下限を何度も一時抜くも下げ止まる。3月-4月の上昇ラインがサポート。18年4月-20年3月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2年連続陰線。今年も陰線スタート。17年-19年の上昇ラインを下抜く。02年‐17年の上昇ラインがサポート。14年‐18年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円=「小反発も中位越えられず」
日足、5月12日-13日の下降ラインを上抜く。14日-15日の上昇ラインがサポート。5月1日-12日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く。
週足、再びボリバン下限下抜くも下限まで戻す。5月4日週-11日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、今年はずっと陰線、今月もここまで陰線。ボリバン下限到達。20年3月-4月の下降ラインが上値抵抗。
年足、16年-19年の上昇ラインを下抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。2連続陰線、今年もここまで陰線。
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