ドル下落が南アランドの支援材料に
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
9月10日に開催された米大統領選討論会で民主党のハリス氏が比較的善戦したとの見方から、いわゆるトランプ・トレードの追加的な巻き戻しがドルの下落材料になった。米経済のソフトランディング期待が維持される中で、FRBが緩やかな利下げを進めて行くとみられていることも、ドルの下落と共に、ランドのような高金利・新興国通貨の支援材料となっている。
南アフリカの政治・経済
南アフリカの国内情勢をみても、これまでの報道をみる限り、5月の総選挙で誕生した国民統一政府(GNU)の運営で引き続き大きな支障は生じていない模様で、金融市場における構造改革進展への期待は維持されているようだ。国営電力会社エスコムによる9月20日付の報道発表によれば、同日時点で今年3月26日以来177日間に亘って大規模な計画停電が行われておらず、経済活動にも一定のプラスの影響を与えつつあるようだ。
南アフリカ経済は、今年第2四半期の実質GDP成長率が前年比+0.3%と堅調とは言えないが、安定した推移を維持している。内外インフレ環境が安定しつつある中、南アフリカ準備銀行(SARB)は、9月19日についに0.25%(8.25%→8.00%)の利下げを実施し、世界的な金融緩和への転換の動きに足並みを揃えた(第2図)。景気への支援効果が期待され、ランドも上昇で反応している。
第2図:南アフリカ政策金利とCPI上昇率(前年比)
南アフリカランドの見通し
こうした情勢を背景に、ランドは引き続き年初来でみて主要な通貨の中で対ドルで底堅く推移している通貨の1つとなっている。今後も南アフリカの国内情勢と共に、グローバルにリスク選好的な地合いが維持されるか、特に米経済のソフトランディングが実現され得るのかが、ランドの堅調推移が維持されるかをみる上で重要となろう。11月の米大統領選が近づいており、トランプ氏が政権に復帰することになるかどうかも、今後の重要な相場材料になって来そうだ。
南アフリカランド/円 週足チャート
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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