主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2024年3月20日8時20分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼19日(火)の為替相場
(1):RBA 引き締めバイアスを弱める
(2):日銀 17年振りに利上げ
(3):植田日銀総裁 慎重な姿勢を示す
(4):ドイツ経済は著しく改善
(5):米住宅関連指標は予想を上回る
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:カギはFOMCの政策金利見通し/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
19日(火)の為替相場
期間:19日(火)午前6時10分~20日(水)午前5時55分 ※チャートは30分足(日本時間表示) 出所:外為どっとコム
(1):RBA 引き締めバイアスを弱める
豪中銀(RBA)は大方の予想通りに政策金利を4.35%に据え置いた。声明で今後の金融政策について「理事会はまだ何も決定しておらず何も排除していない」と表明。「金利のさらなる引き上げを排除することはできない」としていた従来の文言を削除したことで、市場はRBAが引き締めバイアスを弱めたと受け止めた。ブロック総裁はその後の会見で政策が中立にシフトしたかどうかについては明言を避けつつ、リスクは「絶妙に均衡している」と述べた。「われわれにできるのは慎重に行動することと、リスクがどちらかの方向に動くと判断した場合の行動に備えることだ」と述べた。
(2):日銀 17年振りに利上げ
日銀は無担保コールオーバーナイト金利を0~0.1%程度に誘導するよう政策金利を変更(従来は一部の当座預金残高に適用する-0.1%を政策金利としていた)して17年ぶりの利上げを決めた。また、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)は撤廃したものの、長期国債の買い入れは「これまでと概ね同程度の金額(月間6兆円前後)」で継続するとした。このほか、上場投資信託(ETF)およびJ-REAT(不動産投資信託)の新規買い入れを終了することを決定した。ただ、事前の報道通りの決定だったことで材料出尽くし感が広がったことから、次第に円売りが優勢となった。声明で「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と表明したことで追加利上げ期待が後退したことや、マイナス金利の解除に2人の政策委員が反対票を投じたことも追加利上げへの期待を薄れさせた。
(3):植田日銀総裁 慎重な姿勢を示す
植田日銀総裁は記者会見で「今回の政策変更に伴う短期金利の上昇は0.1%程度にとどまる」として「今回の措置を受けて預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとは見ていない」との見解を示した。今後の金融政策については「おおまかに言うと普通の短期金利を政策手段にしている他の中央銀行と同じように設定していくことになる。物価経済見通しに従って適切な政策金利水準を選んでいく。ただ、予想物価上昇率の観点から見ると2%には多少距離がある。そのギャップに着目すれば緩和的な環境を維持することが大事という点に留意しつつ普通の金融政策を行っていく」と述べた。長期国債の買い入れについては「大規模緩和終了後はバランスシート縮小を視野に入れていくつもりだ。将来のどこかの時点で買い入れ額を減らしていくことを考えたいが今具体的に申し上げられる段階ではない」と慎重な姿勢を示した。
(4):ドイツ経済は著しく改善
独3月ZEW景況感調査は31.7と市場予想(20.5)を上回り、前回(19.9)から大幅に上昇した。ユーロ圏3月ZEW景況感調査も33.5と前回(25.0)から上昇した。ZEW(欧州経済研究センター)は、欧州中銀(ECB)の利下げ期待を背景に「ドイツの経済見通しは著しく改善している」との見解を示した。
(5):米住宅関連指標は予想を上回る
米2月住宅着工件数は年率換算152.1万件と市場予想(144.0万件)を上回った。前月は137.4万件だった。住宅着工の先行指標となる建設許可件数も151.8万件と市場予想(149.6万件)を上回る高水準となった。
19日(火)の株・債券・商品市場
ドル/円 外為注文情報(FX板情報・オーダー状況)
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:カギはFOMCの政策金利見通し
昨日のドル/円は年初来高値を更新。日銀がマイナス金利を解除するなど大規模緩和の修正を決めたが、事前の報道通りの決定で新味に乏しかったことから発表後は円売りが優勢となった。植田日銀総裁の会見も追加利上げに慎重な姿勢を示したとの見方から円売りは止まらず150.96円前後まで上伸して昨年11月16日以来の高値を付けた。終値は前日比1.1%高の150.87円前後。昨年高値の151.91円前後や一昨年高値の151.94円前後が再び視野に入ってきた。当面、日銀の追加利上げを意識する必要がなくなったことでドル/円相場の焦点は米金融政策に絞られるだろう。
本日未明に発表される米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利見通しがドル/円続伸のカギを握ることになりそうだ。FOMCは昨年12月に公表した見通しで今年3回(合計75bp=0.75%ポイント)の利下げを見込んでいたが、今回の改定で2回(50bp)に引き下げられる可能性があると見ており、米長期金利とドルの上昇を後押しするか注目したい。一方、可能性は低いと見るが仮に量的引き締め(QT)の縮小に関する詳細が明かされればドルの下押しにつながることも考えられる。その意味でも、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見が注目されよう。
注目の経済指標:FOMC政策金利
注目のイベント:FOMC金利見通し
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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