執筆：外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2023年9月15日 15時00分
150円視野入りも、米FOMC・日銀会合次第で波乱含み
9月11日週の米ドル/円は終わってみると定位置
読売新聞が９日に報じた植田日銀総裁のインタビュー記事が、早期の金融政策の正常化観測を高めたことで、1週前の終値147.799円レベルから147円前半へギャップダウンして週の取引を開始しました。その後も売りが継続し、一時145.896円まで下げました。ただ、同水準からは米長期金利が底堅く推移したほか、米国の根強いインフレ期待もあって、米ドル/円は147.710円まで反発するなど振幅の荒い展開でした。（各レート水準は執筆時点のもの）
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※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日銀、総裁発言をどう処理するか
来週は、日米の金融政策会合が開催されます。米国の労働市場は雇用拡大ペースが鈍化する中で、米FOMCもそう簡単に利上げには踏み切れないとの見方が優勢で、9月は金利が据え置かれることを市場はほぼ織り込んでいます。そのため、注目は新たな経済見通しで、来年末のFF金利見通しが6月見通し（6月時点では中央値が4.6％）からどの程度引き上げられるかでしょう。現状のFF金利とFOMC参加者の6月時点の予想中央値との差は約1％ですのでその差が縮小（利下げのスピード弛緩）すれば、米ドルの押し上げ材料と受け止められ、逆のケースなら米ドルを圧迫しそうです。
かたや日銀は、次回の政策修正時期の前倒し観測を高めた植田総裁の発言を、どこまで声明文に反映させてくるのか注目されます。前倒し期待がさらに高まれば、円が上昇しやすくなる一方、日銀が先日の総裁発言の内容を巡る市場の受け止め方を修正し、政策調整期待を従来通り2023年4月以降へ押し返せば、円の上値が重くなりそうです。また、円安が進んだ場合、本邦財務省による円買い介入への警戒心も高まるため、米FOMC、日銀、本邦財務省への思惑が複雑に絡み合い、米ドル/円の値動きが荒くなる可能性があり注意が必要です。
米ドル/円、146円割れは警戒
米ドル/円のチャート形状は9月7日の147.869円をトップに上値を抑えられているものの、146円台へ集まる支持線からは相応な底堅さも窺えます。日足一目均衡表においては相場の流れが変化しやすいとされる箇所（雲のねじれ）を無難に通過したことで、今度は雲の上限を支えにもう一段上方向に向かう可能性があります。148円を突破できれば、150.00円の声も聞かれそうです。 ただ、支持線が集まる146円台を割り込んでくるようなら、期間21日のボリンジャーバンド-2σ（144.878円：執筆時点）付近まで下げ幅が広がる恐れはあります。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：USD/JPY：144.500-150.500
9/18 週のイベント:
9/18(月) 23:00 米国 9月ＮＡＨＢ住宅市場指数
9/19(火) 21:30 米国 8月住宅着工件数
9/19(火) 21:30 米国 8月建設許可件数
9/20(水) 8:50 日本 8月貿易統計
9/20(水) 27:00 米国 米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）、終了後政策金利発表
9/20(水) 27:30 米国 パウエル米連邦準備理事会（ＦＲＢ）議長、定例記者会見
9/21(木) 21:30 米国 新規失業保険申請件数
9/21(木) 21:30 米国 9月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
9/21(木) 23:00 米国 8月中古住宅販売件数
9/21(木) 23:00 米国 8月景気先行指標総合指数
9/22(金) ― 日本 日銀金融政策決定会合、終了後政策金利発表
9/22(金) 8:30 日本 8月全国消費者物価指数（ＣＰＩ）
9/22(金) 8:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
9/22(金) 15:30 日本 植田和男日銀総裁、定例記者会見
9/22(金) 22:45 米国 9月製造業購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
9/22(金) 22:45 米国 9月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
9/22(金) 22:45 米国 9月総合購買担当者景気指数（ＰＭＩ、速報値）
一言コメント
あれから1年。政府・日銀が昨年9月、24年ぶりに円買い介入に踏み切った記憶が思い出される状況になっています。「羹（あつもの）に懲りて膾を吹く」結果となる可能性もありますが、「一度あることは二度ある」のことわざもあります。迷うところですね。
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