高金利通貨であるメキシコペソについて、中長期にわたり買いポジションを保有する場合に知っておきたい情報、投資を行う視点で、現在の市場を分析します。
執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
Twitter:@gaitamesk_naka
メキシコペソ/円 上昇・下落のパワーバランス
メキシコペソ/円をトレードするうえで重要となる経済指標やイベントを個別に点検します。
6月の失業率は2.65%に低下(前月:2.93%)。ただし、低水準は統計基準が緩いからとの指摘もある。労働環境は厳しく、最低賃金(もしくはそれ以下)での労働者数は増加している。2005年に現在の方法で統計を開始して以降の最低水準は2023年3月の2.39%。
メキシコ中銀は5月と6月の会合で金利を据え置き。2021年6月から始まった利上げは2023年5月まで15会合連続で行われ、この期間で政策金利は11.25%となった。8月10日の会合では利下げに関しての言及がある可能性もあり警戒されている。
7月7日に発表されたメキシコ6月消費者物価指数(CPI)は前年比+5.06%となり、2021年3月以来の水準となった。食品とエネルギーを除く6月コアCPIは+6.89%となり2022年3月以来初めて7%を割れた(前月:+7.39%)。ただし、メキシコ中銀のインフレ目標は3%±1%のため、まだ目標には距離がある。
最大の貿易相手国である米国の景気はソフトランディング期待を抱かせるほど底堅さを見せている。その他、米中対立が深まる中で、メキシコへの生産の拠点を消費地(米国)に近づけること(ニアショアリング)が起こっており、メキシコ経済への好材料が多い。
パワーバランス まとめ
メキシコ中銀は、5月、6月と政策金利を11.25%で据え置き、今月も金利を据え置く可能性が高い。6月会合では、「当面は現行水準で維持する」ことを示唆したが、この文言に修正が加えられるかに注目。5月にインフレは5.84%まで低下しているが、コア指数が高止まりしている。失業率は低水準にあるが、労働条件等を加味すると先進国のそれと同等には捉えられない。中国と米国の政治的な対立により、メキシコへのニアショアリングが起こっていることはポジティブ要因だ。
メキシコペソ/円、いまが買いどき?
メキシコ中銀は5月に利上げを停止した。政策金利を11.25%で今後も同水準を維持することを示唆している。一方で、中銀メンバーからはハト派的な見解も聞かれるため、8月10日の中銀会合ではフォワードガイダンスに注目。インフレが2年3カ月振りの水準まで低下しているが、中銀のインフレ目標とはまだ距離があるため楽観視は出来ないようだ。経済的に繋がりの強い米国経済が底堅いことはメキシコペソの支援材料。また米中対立によりメキシコへのニアショアリングが起こっていることは国内経済にとってポジティブ材料。一方で、中国の景気回復に勢いが感じられないこと、高金利の影響から世界の主要国の景気減速が予想されていることなどは、資源国通貨であるメキシコペソにとっては懸念材料。
最新のメキシコペソ/円チャート
メキシコペソに関する経済指標予定
8月10日 28:00 メキシコ中銀オーバーナイト・レート(政策金利)発表
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当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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