執筆：外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2023年7月28日 17時40分
日銀YCC修正、下降チャネル上限の141円が頭か
7月24日週の米ドル/円は日銀修正で急落
米国のサービス部門PMIが予想を下回ったほか、FOMCが将来の利上げは「データ次第のアプローチで臨む」とこれまでより、タカ派トーンを後退させたことから、米ドル/円は139.37円付近まで売りが先行しました。その後、米4-6月期国内総生産（GDP）が個人消費の健闘で強い伸びを示したことで、141.30円台まで切り返したものの、「日銀がイールドカーブ・コントロールに柔軟性を持たせることを議論」との報道から、138円後半まで急落。実際に日銀は長短金利操作について、より柔軟に運用する方針へ変更し、10年物国債金利について1.0％利回りでの指値オペを毎営業日実施することを決めました。日銀の結果公表後に、米ドル/円は139円前半から141円付近へ急騰したものの、直ちに押し戻され、138.065円まで下げるなど、上下に3円近く振幅しました。（各レート水準は執筆時点のもの）
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FX ライブ配信、日銀植田総裁 本領発揮でドル円は137円 or 143円？ (2023年7月27日)
円債金利の動向に注意
今週は月初め恒例のISM景況指数や雇用市場データが発表されます。これらを通じて米経済の底堅さが再確認されれば、米ドルが他通貨に対して強含む期待はあります。また、本邦金融政策を巡っても、「粘り強く緩和を続ける」としているため、米ドル/円は歴史的な円安水準を年後半も維持する公算が高いと考えますが、当面は、本邦の円債金利動向が上向きの流れを抑制する危険はあります。本邦の10年物国債利回りは現在0.55％付近で、日銀の指値オペ1.0％の水準までかなりの幅があることになります。いきなり1％に向けて金利が上昇する展開は想定していませんが、0.5-1.0％の変動幅のどこで落ち着くのかも読めず、とりあえず日銀の許容できるレベルを市場が探りに行く展開から、円に対する上昇圧力は燻りやすいと考えます。
日銀金融政策の変更点：
・長短金利操作の運営の柔軟化を決定
・長期金利の変動幅「±0.5％程度」を目途とし、10年物国債金利について1.0％の利回りでの指値オペを実施
詳細は日銀のホームページをご覧ください。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230728a.pdf
米ドル/円は21日移動平均線に上値を止められる形で、下方向を試す動きが鮮明になりつつあります。また、短期的には下降チャネルに沿った推移も見込まれそうです。チャネル上限が位置する141.000円付近までの戻りはあるのかもしれませんが、そこを超えていくにはまだ力不足のようで、チャネル下限の135.35円付近を一先ず試す流れが先行するのではないでしょうか。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：USD/JPY：135.500-141.000
7/31 週のイベント:
7/31(月) 8:50 日本 6月鉱工業生産・速報値
7/31(月) 14:00 日本 7月消費者態度指数・一般世帯
8/1(火) 8:30 日本 6月失業率
8/1(火) 22:45 米国 7月製造業購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
8/1(火) 23:00 米国 7月ＩＳＭ製造業景況指数
8/1(火) 23:00 米国 6月雇用動態調査（JOLTS）求人件数
8/2(水) 8:50 日本 日銀・金融政策決定会合議事要旨
8/2(水) 21:15 米国 7月ＡＤＰ雇用統計
8/3(木) 8:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
8/3(木) 20:30 米国 7月チャレンジャー人員削減数
8/3(木) 21:30 米国 バーキン米リッチモンド連銀総裁、発言
8/3(木) 21:30 米国 新規失業保険申請件数
8/3(木) 22:45 米国 7月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
8/3(木) 22:45 米国 7月総合購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
8/3(木) 23:00 米国 7月ＩＳＭ非製造業景況指数（総合）
8/3(木) 23:00 米国 6月製造業新規受注
8/4(金) 21:30 米国 7月雇用統計
一言コメント
結局、日銀会合は最後まで報道に振り回されることになり、ほとほと疲れました。今週以降、夏季休暇入りする投資家や要人も多いため、9月ぐらいまで相場が落ち着くと良いのですが・・・。
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