総括
FX「ドル円下落一服。貿易統計で中期トレンドを掴む」
ドル円=136-141、ユーロ円=153-158、ユーロドル=1.10-1.15
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(10位)、株価3位(3位)、団子天井からの下落は2σ下限で一服。戻しのメドは。6月貿易統計が中長期トレンドを決める」
ドル円は団子天井の145円台から一時137円台へ下落、約8円の下落。先週末は7日ぶりに下ヒゲの長い陽線が出て雲の上に浮上した。8円下落して漸く、輸入や資本筋の動意が出たのであろう。ボリバン2σ下限からの自律反発でもある。これが5日線を超えるか、20日線まで戻るかが焦点。団子天井/先週の安値の半値141.15あたりが戻しのメド。
ただ大幅円安をもたらしていた貿易赤字は大きく縮小。7月20日は6月貿易統計の発表。黒字に転換するかというよりも輸入の大幅減少が続くかどうかに注目。日本の貿易動向はエネルギー価格如何だが、ロシア・サウジアラビアも必死に減産して価格を吊り上げようとしているのが最近の動きだ。円相場は原油価格本位制とも言える。
6月消費者物価にも注目したい。3%以上が継続すれば、日銀の物価見通し上方修正やYCC修正にもつながる。ただ金利変更はあくまで短期的要因で、中長期的な円相場は貿易収支が決める。2016年の黒田前総裁のマイナス金利導入後もドル円は120円から98円へ下落している。ドル円を押し上げたのはマイナス金利ではなく貿易収支動向であり、特にロシアのウクライナ侵攻による原油高である。
(細かいことを言えば、7月18日も3連休明けでドル需要は強い。7月14日と同様だ)
なお、週末のG7財務相・中央銀行総裁会議の終了後、植田日銀総裁は日、債券市場では全般的に流動性低下などの機能度低下はある程度見られる一方、イールドカーブ(利回り曲線)のゆがみは「かなり緩和されてきている」との認識を示した。
*米ドル「通貨8位(6位)、株価(NYダウ)16位(15位)、ドルの後退は有事の緩和。平時のドル安」
ドルはさらに弱くなり、中位から8位へ後退。昨年は2位であった。ドルが弱いということは世の中が平時へ向かっているのだろう。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰で取引通貨であるドルの需要の高まりは緩和している。そうなると米国の貿易赤字が反映する伝統のドル安となる。米金利上昇、来週のFOMCでも0.25%の利上げが予想されているが、実際の米国長期金利は今年はやや低下気味だ。それが米国経済を表しているのではないだろうか。投資家は政策金利に投資するのではなく10年国債などに投資する。経済指標は強くもなく弱くもない。インフレは低下傾向。債務上限問題は解決したが、債務が減少しているわけでもない。
来週の2Q・GDPも前期比年率1.8%の予想で強くも弱くもない。指標の良し悪しがドルの強弱に繋がるものでもなく、あくまでも需給だ。
ロシア問題があるもドルのひっ迫感は緩和、中国問題あるも対中貿易総額は変わらず、貿易赤字は大きい。昨年ほどの有事のドル買いもないといったところでドルはじり安傾向となるのだろう。NATOの結束強化、サプライチェーン問題の緩和なども平時のドル安に結び付いている。
*ユーロ「通貨4位(4位)、株価7位(7位)DAX)、経常・貿易収支の改善がユーロの底堅さの基調」
7月当初は円全面高であったが、次第にドル全面安の流れでユーロも浮上、対ドルで1.12台へ上昇した。ドイツの景気低迷に代表されるが如く、ユーロ圏全体の景気も強くはない。しつこいくらいの、インフレは粘着質であり利上げを継続するというECB当局者の発言はあるが、投資対象としての長期金利は上昇していない。
昨年と比べればエネルギー価格は下落し、ユーロ圏の貿易・経常収支は改善している。元々、ユーロ圏は日本ほどエネルギーの海外依存度は高くはないので、経常収支の改善は速い。5月のユーロ圏貿易収支(季節調整前)は3億ユーロの赤字だった。 化学製品や機械の輸出が増加する一方、特にロシア産エネルギーの輸入が減少し、貿易赤字がほぼ解消された。ユーロの回復もそれについてきた。どこの国でもそうだが、景気の強弱と為替フローは関係がないので、景気が弱いからと言ってユーロが弱くなることもない。
ECBは7月も利上げをするとしているが、利上げの影響は短期的なものにとどまるだろう。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価19位(19位)、2回連続で0.5%利上げか。経済指標は強い」
ポンドは12通貨中2位と強いが、株価指数は年初来1.86%安と低迷している。通貨高の株安という宿命だ。物価動向では低下傾向にある米国と低下しない英国との差異によるポンド買いも出ている。ただ対円では夏の円高傾向もあり伸び悩んでいる。
中銀だけではなく、政府、またIMFもインフレ抑制のために高金利を維持する政策で一致している。8月の英中銀理事会では政策金利を2回連続で0.5%引き上げるとの予想が多い。3-5月の賃金上昇率は過去最高に並んでいる。賃金上昇圧力がまだ持続していることを示す証拠により、英中銀は利上げを続けるだろう。6月の小売売上高は前年同月比4.9%増となり、5月の3.9%増から伸びが加速した。5月のGDPは前月比0.1%減となり、予想の0.3%減ほどは落ち込まなかった。2Qはマイナス成長を回避できる見通しだ。
週末に出たニュースでは次期選挙のマニフェストとして相続税の廃止が議論されている。経済の活性化に繋がるか、財政赤字拡大とネガティブに取られるかチェックしていきたい。
*豪ドル「通貨6位(7位)、株価17位(18位)、政策金利決定に、より緊張感が求められる。よりデータ次第になる」
7月は対ドルで強いが「夏の円高」の円よりは弱い。政策金利ではFRBがRBAより高いが、10年国債は米国より豪のほうが若干高いという状況が維持されている。安定度の高い米ドルと豪ドルだが、若干でも金利が高く貿易黒字でもあり財政規律が守られる豪の国債・社債に投資するのも選択肢だ。
さてロウRBA総裁は政策金利の利上げを巡って国民から強い批判を浴びており、退任することとなった。副総裁のブロック氏が新総裁となる。ロウ総裁は、コロナ禍で政策金利を過去最低の0.1%にまで引き下げ、「金利は2024年まで上昇する可能性は低い」と繰り返し述べてきたが、その後は、インフレへの対応で利上げを余儀なくされ、現在は4.1%にまで上昇している。このため、過去の発言との整合性で批判を浴びていた。
また来年からは政策金利の決定方法やコミュニケーションが変わり、より透明性のあるものとなる。新総裁はRBA生え抜きでもあり、現在の政策との継続性はあるが、より厳しく監視されることとなる。すなわち思惑よりデータ次第とならざる得ない。
そのデータではインフレは低下気味だが、他の経済指標は強い。雇用指標、消費者信頼感は強い。貿易収支も黒字が拡大している。前回はFRBと同様に政策金利を据え置いたが、来週のFOMCは0.25%利上げ予想が優勢だ。FRB同様に様子見→利上げとなるのか。8月1日の政策金利決定前にRBA議事要旨。雇用、インフレ指標が発表されるのでそれを精査しての話となる。
*NZドル「通貨7位(8位)、株価13位(11位)、リセッションということもあり政策金利は据え置き。今週はCPI」
12通貨中7位と、一つ順位を上げた。豪ドルとともに米ドルを抜き去った。対円では先週はボラティリティは高まったが終値では大きく変わらず、とNZドルも底堅い。NZ中銀は政策金利)を5.5%に据え置いた。これまでの利上げが想定通りに支出を抑制しインフレ圧力を弱めているとの認識を示した。既にリセッション入りしていることもある。
中銀は「政策金利は予見可能な将来において、制約的な水準に維持する必要があるとの認識で一致した」とした。また中銀はインフレ率がピークの水準から低下すると予想。「消費支出の伸びは鈍化し、住宅建設活動も減少した。住宅価格はより持続可能な水準に戻った」とした。 インフレ率はここ数カ月鈍化傾向にあり、現在は30年ぶり高水準の6.7%を若干下回る水準にまで落ち着いた。中銀はインフレ率が24年下半期までに目標の1-3%に低下すると見込んでいる。
6月の製造業パフォーマンス指数(PMI)は47.5と、5月の48.7から低下した。景況改善・悪化の分岐点となる50を引き続き下回った。主首相は打開策を中国やEUとの自由貿易協定に求めている。
今週は2Q消費者物価の発表がある。予想は前年比で5.9%の上昇で前期の6.7%を下回る。
テクニカル分析
*ドル円「団子天井から下落、一時2σ下限下抜く。5日線に続き20日線も下向く」
日足、団子天井から下落、一時2σ下限を下抜くが先週末は2σ内へ戻す。下ヒゲも長い。5日線。20日線下向く。5月11日-7月14日の上昇ラインがサポート。7月12日-14日の下降ラインが上値抵抗
週足、2週連続陰線。ボリバン2σ上限から一時中位まで下落。6月19日週-26日週の上昇ラインを下抜く。6月8日週-7月10日週の上昇ラインがサポート。7月3日週-10日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線の後、7月は陰線スタート。5か月、20か月線は依然上向き。5月-6月の上昇ラインを下抜く。4月-5月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2023年はここまで陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上り一服。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「7日連続陽線でボリバン3σ上限へ。若干警戒か」
日足、7日連続陽線でボリバン3σ上限へ。22年2月10日-23年7月14日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線上向き。7月11日-12日の上昇ラインがサポート。
週足、ボリバン2σ上限を上抜く。5週線、20週線上向き。下ヒゲ長い7月3日週が効いて上昇。7月3日週-10日週の上昇ラインがサポート。22年2月7日週-23年7月10日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、5月の3か月ぶりの陰線から6月は回復。7月は5月-6月の下降ラインを上抜いて上昇。ボリバン中位越え。21年1月-6月の下降ラインが上値抵抗。3月-6月の上昇ラインがサポート。5か月線上向く、20か月線下向き。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインは下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。22年の下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「団子天井から下落も2σ下限で破発し連続陽線」
日足、団子天井から下落も2σ下限で破発し連続陽線。5日線下向く。20日線上向き。7月13日-14日の上昇ラインがサポート。7月5日-14日の下降ラインが上値抵抗。
週足、7月3日週は4週ぶり陰線。先週は下ヒゲ長く寄り引き同時。6月12日週-7月10日週の上昇ラインがサポート。7月3日週-10日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、6月は大陽線でボリバン2σ上限上抜く。7月は陰線スタートも下ヒゲ長い。5月-6月の上昇ラインがサポート。2008年7月-23年6月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。
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