総括
FX「介入について日米で協議。ボラより145円にこだわり。貿易収支は黒字に転換するか」
ドル円=141-146、ユーロ円=154-159、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(11位)、株価3位(3位)、介入について日米で協議。今年のドル円のボラは小さいが、145円という水準は重要なのか」
四半期末の先週は例年通りドル高円安となった。
さて週末にイエレン財務長官から「為替介入の是非について、日本政府と調整に入っている」との発言が入った。今年の米ドルは12通貨中6位で対円で年初来10.05%高、去年の9月の介入時は2位で、25.87%高であったので、今年はそれほどの急激な動きではないので意外な円安警戒だ。ボラティリティーより、145円という水準で為替の介入を決定するのはわかりやすい。今年はドルより強い他のG7国通貨や、メキシコやスイスはどう反応するのか。G7の中で日本だけが中国と同じく管理相場を許されるのだろうか。
為替需給的には、6月上旬の貿易収支が黒字(今週は中旬分が発表)となり、これが続けば、円買い介入をすればインパクトは去年より大きくなる(「もし」の話ですが、貿易黒字下でドル売り介入をすると過去は壮絶な市場になった①プラザ合意②バブル時③アジア通貨危機)。また株高、税収増や、景気の緩やかな回復(今朝の日銀短観で確認したい)で日本経済が上手く回り始めているところで円買い介入はそのリズムを崩す恐れがある。ただ為替ディーラーは儲けるためには最大のプレーヤーの介入に乗る方が儲かりやすいことも事実だ。
季節的需給では、7月、8月のどちらかで円高になりやすい、特に7月末は円高傾向が強い。また今週7月4日は米国休日で市場も薄くなりドル安になりやすい日だ。
*米ドル「通貨6位(6位)、株価(NYダウ)15位(15位)、ドルの強さも中くらいなり」
「ドルの強さも中くらいなり」。今年のドルは去年の混乱時の有事のドル買いほど強くはないが、円ほど弱くはない。インフレは9%から4%へ半減しているが、FRBは目標の2%には程遠いとして、年内2度の利上げを示唆している。それは米政府も同じで、イエレン財務長官もインフレは、「まだ高すぎる」とし、サプライチェーンのリスクに対処すると述べた。FRBと米政府で足並みは揃っているのも強みだ。
リスク選好指数の「恐怖と欲望」の指数も80と高い。アトランタ連銀GDPナウは2.2%、クリーブランド連銀のCPIナウは3.2%とまずまずだ。株価もやや高い。
インフレも過熱はしていない。5月の個人消費支出(PCE)価格指数が前年同月比、前月比ともに伸びが鈍化したり、米シガン大の6月の消費者調査では、1年先のインフレ期待が約2年ぶりの水準に低下した。6月の消費者物価は3%台に低下する見込みだ。
今週も雇用統計を始め、ISM指数、FOMC議事要旨、貿易収支、雇用動態調査(JOLTS)求人件数など重要指数が続くが全体では緩やかな成長が続くと見たい。
*ユーロ「通貨5位(5位)、株価6位(6位)DAX)独が成長とインフレで足を引っ張る。こんなことは過去になかった」
かろうじてドルよりは強い。ただ今年強い「持たざる国」のポンドやスイスよりは弱い。ユーロ圏の牽引車の独の経済が弱い。昨年4Q、今年1Qと「リセッション」と定義される2期連続のマイナス成長を記録した。独連銀は2Qはリセッションから脱し、GDPが「若干増加する」と予想する。 「個人消費は底を打つ見込み」とし、「インフレ率が非常に高い水準にとどまっているにもかかわらず、賃金の大幅な上昇で家計の実質可処分所得は安定している」と指摘しているが、まだ指標にはそれが現れていない。
独の指標ではIFOの業況指数は88.5と、2カ月連続の低下、7月の消費者信頼感指数はマイナス25.4と、6月のマイナス24.4から低下、6月の失業者数は前月比2万8000人増加し予想の1万3000人を大きく上回った。それでも、ラガルドECB総裁らは「近い将来に完全な自信を持ってピーク金利に達したと宣言できる可能性は低い。見通しに大きな変化がない限り、7月も利上げを続ける」と語った。
それは独の消費者物価が6%強と強いからだ。一方、スペインは目標の2%を下回る1.6%。ギリシャは2.8、南欧諸国は比較的低い。南欧の中銀は利上げ継続を疑う声もあり、ECB内での議論が紛糾する可能性も今後は出てくるだろう。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価19位(19位)、高金利でポンド高も、弊害もあり」
ポンド高株安が続く。景気はかろうじてリセッションを回避するが株高に結びつかない。英中銀は根強いインフレでECBより金融引き締め度が強く、金利水準を高く設定。首相・政府も英中銀を指示している。ベイリー中銀総裁は政策金利をピーク水準で維持する期間について、トレーダーが現在予測しているより長期に及ぶ可能性があることを示唆した。「根強さを増すインフレに対処している中で、ピーク金利は短期間で終わるとの市場の見方を常に興味深いと感じていた」と述べた。過去30年で最もハイペースで進めてきた今回の利上げ局面に続き、今後さらに数回の追加利上げが織り込まれていると指摘した。
短期金融市場では今のところ、金利は来年2月に6.25%を若干下回る水準でピークを付けると織り込まれている。その後は少なくとも6カ月間は据え置きが続き、来年9月までの初回利下げが見込まれている。
もちろん金融引き締めの影響は国民の生活を苦しめている。1Q・GDP確報値は前期比0.1%増。2023年初めのリセッション入りはなかったことが確認された。ただ金利上昇による打撃の約60%がまだ実感されておらず、今年後半はリセッションの可能性があるとされている。インフレ調整後の1人当たり実質可処分所得は1Qに0.9%減少した。生活水準はこれで過去6四半期のうち5四半期で悪化した。
*豪ドル「通貨7位(7位)、株価17位(17位)、政策金利の予想は、まさに五分五分」
対円では底堅いが、対ドルではやや弱い。5月の消費者物価上昇率は前年比5.6%と、4月の6.8%から鈍化し、1年1カ月ぶりの低水準となった。予想の6.1%も下回った。燃料価格の大幅下落が主な要因。
前月比では0.4%低下した。
RBAは昨年5月以降、計4%の利上げを実施。政策金利は4.1%に上昇しているが、インフレの上振れリスクを考慮し、追加利上げが必要になる可能性を示唆している。
RBAは今週の理事会で政策金利を0.25%引き上げ4.35%とするか据え置くか予想が真っ二つに分かれた。
エコノミスト31人のうち16人が4.35%への利上げを予想、残りの15人は据え置きを見込んでいる。ANZは「7月に利上げを休止するリスクが高まっているが、5月までの雇用者数の伸びやインフレ率が減速する兆しがないことを踏まえると、休止よりも利上げの可能性が高い」と指摘。理事会の前日にはTD-MIの6月のインフレ指標が発表される。予想は前月比0.2%上昇で5月の0.9%上昇から大きく低下する。
またロウRBA総裁の去就も気になる。チャーマーズ財務相は、次期総裁人事について、7月には決定したいと述べた。ロウ総裁は2024年まで低金利が続くという2021年の宣言により、経済の暗転の責任を負わされ政府との関係は悪化してきた。チャーマーズ財務相はRBAの取締役会を廃止し、金利を設定する機関と銀行のガバナンスと日常業務を監督する機関の2つの別個の機関を設立することを勧告し新しい体制を打ち出す。
*NZドル「通貨8位(8位)、株価14位(13位)、リセッションのNZの好材料が続く。政策金利に影響するか」
NZと同様に株価は弱い。両国にとってまだ金利は高いのであろう。ただNZは景気も弱くリセッション入りしている。その中で珍しく良い指標が3つ続いた。5月貿易収支は4月に僅かだが4600万NZドルの黒字となった。輸出入ともに伸びた。
6月の消費者信頼感指数は85.5で、前月の79.2から上昇。ここ数カ月、リセッションを示唆する指標が広く見られるが、それでも6月には信頼感が顕著に上昇した。中銀が5月の政策決定会合で打ち止めを示唆したことが押し上げ要因となった可能性がある。また6月の企業信頼感は、2021年11月以来の水準に改善した。 向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答は差し引き18%と、5月の31.1%から大きく改善した。
自社の事業についても、向こう1年間に成長を見込む回答が差し引き2.7%となり、縮小するとの回答を1年2カ月ぶりに上回った。5月は差し引き4.5%が縮小を見込んでいた。これらが7月12日の政策金利決定に影響するか注目したい。
対外関係では、NZと中国政府は協力協定に調印した。共同宣言で貿易を強化し、電子商取引やグリーン経済などの分野で協力を拡大することで合意。新エネルギー車に関する対話メカニズムの確立でも一致した。 また、最近の外交・国防分野の協議に基づき、食料安全保障と農業に関する協力を強化することでも合意。NZは歴史的に中国に対し融和的なアプローチを取っている。
テクニカル分析
*ドル円「3週間連続、3か月連続陽線でイエレン発言」
日足、先週末はボリバン2σ上限から小反落。5日線、20日線上向き。22年10月21日-23年6月30日の下降ラインが上値抵抗。6月28日-30日の上昇ラインがサポート。20日線上向き。
週足、3週連続陽線、3週連続雲の上。ボリバン2σ上限。6月19日週-26日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-23年6月26日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線。5か月、20か月線は上向き。5月-6月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2023年はここまで陽線。2022年の長い上ヒゲ駆け上る。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「伸び悩みも雲に落ちず」
日足、下落傾向も先週末は雲に落ちず反発。5日線上向く。20日線上向き。6月8日-26日の上昇ラインがサポート。6月29日-30日の下降ラインが上値抵抗。
週足、2週連続伸び悩みで1.10を超えず。6月12日週-26日週の上昇ラインがサポート。6月19日週-26日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、5月の3か月ぶりの陰線から6月は回復。ボリバン中位越え。5月-6月の下降ラインが上値抵抗。3月-6月の上昇ラインがサポート。5か月線上向く、20か月線下向き。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインは下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「続、2008年9月以来、15年振りの高値維持」
日足、年初来高値から小緩むもボリバン上位で推移。5日、20日線上向き。6月26日-30日の上昇ラインがサポート。6月28日-30日の下降ラインが上値抵抗。
週足、3週連続陽線でボリバン2σ上限超える。6月19日週-26日週の上昇ラインがサポート。2008年7月9日週-23年6月26日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、6月は大陽線でボリバン2σ上限上抜く。5月-6月の上昇ラインがサポート。2008年7月-23年6月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。
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