執筆：外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼6月26日週のユーロ/円とポンド/円は伸び悩む格好に
- ▼米指標とのコントラストを重視
- △▼【ユーロ/円チャート 日足】
- ▼英企業破綻で国民負担増なら
- △▼【ポンド/豪ドルャート 日足】
- △▼【ポンド/円チャート 日足】
- 7/3 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2023年6月30日 14時50分
後半失速、タカ派なのになぜ弱い 米国の一人勝ち状態が続くか注目
6月26日週のユーロ/円とポンド/円は伸び悩む格好に
米ドル/円が145円回復に向け上昇する中、ユーロ/円は157.994円、ポンド/円は183.766円まで上昇幅を広げました。しかし、欧州・英国の景気の先行き不安が台頭すると、その後は、米ドル/円が145円台回復を果たしたのとは対照的に伸び悩む形になりました。欧米の景況感の差が明暗を分けたように感じました。（各レート水準は執筆時点のもの）
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FX ライブ配信、ドル円 高値圏でのプライスアクションに注意！(2023年6月29日)
米指標とのコントラストを重視
ドイツの6月消費者物価指数は上昇しており、ECBが景気に配慮して金融引き締めの手を緩められる状況にはなく、ECBのタカ派姿勢が今後も維持されるとの思いは、ユーロの下値を限定しそうです。しかし、ドイツ6月IFO企業景況感指数や同7月GFK消費者信頼感調査がさえない結果となり、域内の経済回復の勢いは鈍りつつあります。加えて、直近の欧米のファンダメンタルズを見比べれば、米国経済の方がまだ底堅さが感じられます。中銀の姿勢は欧米とも同じようにタカ派なのに、通貨の強弱に違いが出てくる理由はこの部分にありそうです。7月5日のユーロ圏6月サービス部門PMI・改定値や、7月6日の同5月小売売上高の強弱もさることながら、米国で発表される経済指標とのコントラストにも注意が必要です。さえない結果となれば、相対的にユーロの調整圧力は高まりそうです。
ユーロ/円は全体的に地合いは堅調さを維持していますが、短期的には上昇の勢いが一服しつつあります。日足一目均衡表・転換線（156.023円）にサポートされれば、159.000円に向けて浮上していきそうですが、この水準を割り込むようなら、154.00円付近までの調整はありそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：EUR/JPY：154.000-159.000
英企業破綻で国民負担増なら
ベイリー英中銀総裁は金利がピークをつけて以降も、長期間そのレベルが維持される可能性を示唆するなど、タカ派な見通しを示したものの、ポンドは上値の重い展開となっています。小売売上高が2カ月連続でマイナスとなったほか、製造業・サービス業の景況感も頭打ち傾向が示され、急速な利上げが景気後退を招くとの観測は根強いようです。こうした中、1500万人の顧客を抱える英国最大の水道会社、テムズウォーターが巨額の負債を抱え破綻の危機にあり、政府管理下に置かれるとの観測報道が流れています。政府が支援に乗り出せば、財政を圧迫する可能性があるほか、使用料の引き上げなど国民への負担が増大し、景気回復やインフレ鈍化の後ずれなどが懸念される事態にまで発展するかもしれません。
財政負担が大きくなれば、将来的に英国債の信用低下からポンド安の流れに発展するリスクが高まるかもしれません。今週は英国独自の材料が少ない中で国外の材料が意識されますが、特に豪州では金融政策会合が開催されるため、豪ドルの振幅が波及する形でポンドの値動きが大きくなる危険もありそうです。ちなみに、RBA（豪中銀）は政策金利の据え置きと・引上げがほぼ拮抗していますが、豪州の高インフレを踏まえるとまだタカ派姿勢が続きそうなため、ポンド/豪ドルは短期的に下向き（ポンド安・豪ドル高）が強まり、日足ベースでダブルトップ形成に向かうかもしれません。
【ポンド/豪ドルチャート 日足】
ポンド/円は21日移動平均線（178.953円）が上昇傾向を続けており、トレンドは上向きのままです。しかし、ローソク足が+1σラインを割り込みつつある形状を考えると、超短期的には調整の流れが優勢となり、21日線に向けて水準を下げていくのではないかと考えています。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：GBP/JPY：179.000-184.500
7/3 週のイベント
7/3(月) 17:00 ユーロ 6月製造業購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
7/3(月) 17:30 イギリス 6月製造業購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
7/4(火) 15:00 ドイツ 5月貿易収支
7/5(水) 15:45 フランス 5月鉱工業生産
7/5(水) 17:00 ユーロ 6月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
7/5(水) 17:30 イギリス 6月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
7/5(水) 18:00 ユーロ 5月卸売物価指数（ＰＰＩ）
7/6(木) 15:00 ドイツ 5月製造業新規受注
7/6(木) 17:30 イギリス 6月建設業購買担当者景気指数（ＰＭＩ）
7/6(木) 18:00 ユーロ 5月小売売上高
7/7(金) 15:00 ドイツ 5月鉱工業生産
7/7(金) 25:45 ユーロ ラガルド欧州中央銀行(ＥＣＢ)総裁、発言
一言コメント
テムズウォーターの話題が出たので、イングランドの水道事情を調べていたら、「多くの地域ではメーター設置は義務付けられていない」といった意外な話が出ていました。約半数の家庭は水道メーターが設置され、使用量に応じて料金を払うのですが、メーターを使わない家庭は住宅評価額に応じて料金を払うそうです。
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