目次
▼金融システム不安の次は米景気後退懸念
▼南ア国内は依然として電力不足が重し
金融システム不安の次は米景気後退懸念
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
3月に浮上した欧米での金融システム不安は、当局による迅速な措置の効果もあり、引き続き緩和する方向にある。一時大きく後退していた市場によるFRBの利上げ見通しも一部回復した。
もっとも、最近発表された米経済指標は強弱混在ながら、大局的には米景気が減速方向へ向かっている可能性を示唆しており、次回5月のFOMCを最後にFRBの利上げは打ち止めになるとの見方が有力だ。3月以降下落に転じていたドルも下げ止まって来たが、その後はもみ合いとなっている。
南ア国内は依然として電力不足が重し
南アフリカ国内に目を転じると、今年2月9日に発令された電力不足に伴う国家非常事態宣言は、4月5日に一先ず解除されたものの、問題の解決にはほど遠く、電力不足問題は引き続き混迷を深めている。直近の経済指標も生産や消費などを中心に足元の景気減速を示唆。一方、直近3月分の消費者物価上昇率は前年比+7.1%と再び伸びが加速する方向にあり(第2図)、3月30日に南アフリカ準備銀行(SARB)は市場予想(+0.25%)を上回る0.5%の利上げを行っており(7.25%→7.75%)、景気への影響が警戒される。
第2図:南アフリカ消費者物価(CPI)前年比
年初からドルの上値は重く、ランドには支援材料となっていたはずだが、こうした国内要因がそれを抑制している模様だ。5月FOMCの内容次第でドルは目先さらなる下落余地を探る可能性もあるが、ランドは相対的に上値の重い状況が続きそうだ。
(国際通貨研究所 上席研究員 橋本 将司 氏)
【南アフリカランド/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
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橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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