総括
FX「米景気減速、利上げ減速、金融不安でも円高が進みにくい理由」
ドル円=132-137、ユーロ円=145-150、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨9位(9位)、株価7位(9位)、米景気減速、利上げ減速、金融不安でも円高が進みにくい理由」
米景気減速、利上げ減速、金融不安の影響が欧州通貨ほど円に及んでいない。欧州通貨は年初来5%程度の通貨高だが円は小安い。一番は貿易需給の問題だろう。23年1-3月は5.2兆円の赤字で、22年1-3月の3.28兆円の赤字を上回っている。輸入は原油価格の下落で、伸び率を昨秋の50%超から、一桁の伸びに縮小しているが、それが輸出の伸びに繋がっていない。エネルギー価格安が輸出増に結び付かないのは深刻だ。独やスイスはコロナ禍やウクライナ侵攻でも貿易黒字を維持してきた強さがある。中国への貿易シフトは大きく日本に戻ってこない。
資本面では生保の今年度投資計画が発表されているが、海外投資には昨年同様に積極的ではない。これは貿易赤字の円安に対抗する円高要因だ。ドル安に反応する通貨高の度合いが円は小さいのでクロス円は底堅くなる。ただエネルギー価格の下落もあるので、クロス円も選択が重要だ。「持てる国」より「持たざる国」が選好されている。
日銀金融政策決定会合は初回なので慎重で現状維持となるだろう。ただ、3%でやや高い消費者物価についてどう対処していくのかが焦点となる。4月東京消費者物価も発表される。
*米ドル「通貨7位(7位)、株価(NYダウ)16位(16位)、ドルは弱含みも、米国の伝統の強さは失っていない」
5月3日のFOMCでは0.25%利上げ予想が多い。金融ショックによる貸し出し条件の厳格化が利上げに相当することも利上げ減速論が高まってきている理由だ。今週は1Q・GDPの発表がある。前期の2.6%から2.0%成長へ減速する予想だが、コアPCE価格がが4.4%から4.8%へ上昇する見込だ。まだくすぶるリセッション観測、債務上限問題の混乱はある。経済指標はマチマチで3月ISM製造業・非製造業は悪化したが、4月製造業・サービス業PMIは改善した。3月消費者物価は低下したが、コア指数は上昇した。FOMC内でも今後の見方が分かれている。物価上昇はまだ高いというタカ派と、慎重にみるべきとのハト派で分かれている。分岐点に近いことは確かだろう。それゆえにドルが下落し、株価が上昇している。
中国とのデカップリング、ウクライナ情勢など波乱要因があるが、ChatGPTなど米国らしい革新的な経済の変化もある。マック、アマゾン、グーグル。テスラなど伝統的な米国の強さは継続している。
デカップリングにはニアショアリングでサプライチェーンの再構築を図っている。ドルは弱含んでも米国らしい強さはある。これは中国がマネのできることではない。
*ユーロ「通貨4位(3位)、株価3位(3位)DAX)、株価強くて楽観的」
ユーロ圏の雰囲気はいいようだ。株が強い。ギリシャの19.52%高を筆頭に、仏17.04%高、伊17.04%高、スペイン14%高、独14.06%高だ。株が上がればセンチメントは良くなってくる。ユーロ圏の経常収支は既に黒字化しているが、貿易収支も2月に黒字化して需給面でユーロを支えている。日本ほどエネルギーの海外依存が高くないことが、エネルギー価格下落で貿易黒字化に繋がった。
ただ経済指標はそれほど強くはない。強くはないが米ドルが弱いので対価として買われている。円は貿易赤字が依然続くので上昇が遅い。5月4日のECB理事会では0.25%か0.5%の利上げで意見が分かれている。
ラガルドECB総裁は、ユーロ圏のインフレ率は高すぎるとし、インフレ率の2%目標への回帰に向け金融政策には「まだ少し先がある」と述べた。 その上で「その道のりの長さは、明らかに多くの要因に左右される。特にすでに認識されている銀行セクターを巡る問題の後の信用および信用枠への影響は大きい」と語った。
1Q・GDPも注目したい。
*ポンド「通貨3位(4位)、株価12位(12位)、インフレ強く、次回は0.25%利上げか。格付け見通しは引き上げ」
依然、欧州通貨3強(ユーロ、ポンド、スイス)の一角を担っている。S&Pは、英国の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。堅調な経済パフォーマンスと今後2年間の財政赤字抑制を理由に挙げた。「英経済は今年、小幅に縮小すると予想しているが、短期的な経済下振れリスクは減少している」とした。 格付けは「AA/A-1+」を維持した。
2022年12月-23年年2月の失業率は3.8%。予想の3.7%から悪化、2022年2Q以来の高水準となった。 賃金は前年比5.9%増加。予想の5.1%増を大きく上回った。3月の消費者物価は前年同月比10.1%上昇し、伸び率は前月の10.4%から縮小したが予想は上回り、引き続き2桁台となった。市場はイングランド銀行(英中央銀行)が来月利上げする可能性をほぼ織り込んだ。
予想の9.8%まを上回った。
これを受けて英中銀が少なくともあと1回0.25%利上げをする予想が強まった。次回英中銀政策金利は5月11日。ECB、FRB見てからの開催となる。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価14位(15位)、今週の消費者物価を見て5月2日の政策金利決定へ」
ロウRBA総裁は2021年終盤に24年まで金利が上昇する可能性は低いの見通しを示したが、実際はインフレが想定以上に高騰し、中銀は22年5月に利上げを開始せざるを得なくなった。現在までに政策金利を3.5%引き上げて3.6%にしている。FRBやECBもインフレ見通しを見誤って、大幅利上げを行ってきたが、政財界からロウ総裁が批判を受け、RBAの在り方が見直されることとなった。改革は以下の通り。
・金利の設定に焦点を合わせた別個の金融政策理事会の設立
・この理事会には総裁、副総裁、大蔵次官、そして任期5年の外部からの理事6人が含まれる
・理事会は年に11回から8回に減らされる。金利の上昇があれば家計がそれを吸収する時間を長くする
・理事会の後に毎回、記者会見を行うことを総裁に義務付ける
提案された変更が金融市場に与える影響は限定的であり、長期的には「これらの取り決めがより良い経済的成果をもたらすことができるかどうかは時が経てばわかるだろう」とされている。
さて今週の1Qと3月の消費者物価を見て、5月2日の政策金利決定となる。現在は0.25%利上げ予想だ。このところのの指標は4月消費者信頼感、3月企業景況感、雇用統計と良かった。
*NZドル「通貨10位(10位)、株価15位(13位)、インフレが予想外に低下し弱含み」
豪RBAの政策金利の据え置きとNZ中銀の予想を上回る利上げで、NZドルも底堅かったが。先週のNZドルは対円、対ドルで下落した。1Qの消費者物価上昇率は前年比6.7%と、予想を下回ったからだ。ただ、昨年付けた記録的高水準になお近く、項目別でも食品から住宅建設に至るまで幅広く価格が上昇した。 市場では5月の追加利上げ観測が消えていない。伸び率は2022年4Qの7.2%から鈍化。前期比では1.2%上昇し、4Qの1.4%から伸びが鈍化。予想は前年比が7.1%上昇、前期比が1.7%上昇だった。中銀は「インフレ率は依然として1990年代以降見られなかった水準にある」と指摘した。
3月の全国住宅価格は、前月比2.2%下落、前年同月比では12.9%下落した。弱い経済環境による影響の継続が反映され、下落が続いた。
今週は3月貿易収支、4月企業信頼感指数、消費者信頼感指数の発表がある。
テクニカル分析
*ドル円「2σ上限から反落」
日足、雲の上に一時出るも先週末は雲中。2σ上限から反落。ただ4月21日は下ヒゲ長い。4月14日-21日の上昇ラインがサポート。4月20日-21日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、先週は長い上ヒゲ。雲の下に落ちず雲中で推移。中位を越える。5週線上向き、20週線下向き。4月10日週-17日週の上昇ラインがサポート。3月6日週-4月17日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、3月陰転。4月も陰線スタートも陽転。5か月移動平均線は下向いたまま。2月-3月の上昇ラインがサポート。22年11月-23年3月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2023年はここまで陽線。3月20日週は陰転するも月末週には再び陽転。2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲで圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「ボリバン3σ上限から反落も中位を割らず」
日足、2σ上限から反落も中位を割らずボリバン上位で推移。4月20日-21日の上昇ラインがサポート。4月14日-21日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き、20日線上向き。
週足、4週連続陽線の後は寄り引き同時で一服。雲の上。4月10日週-17日週の上昇ラインがサポート。4月10日週-17日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、ボリバン中位越え。23年2月-3月の下降ラインを上抜く。21年5月-6月の下降ラインが上値抵抗。22年11月-23年3月の上昇ラインがサポート。5か月線上向き、下向きの20か月線を上抜く。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインを下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「ボリバン上位で推移」
日足、ボリバン2σ上限で推移。先週末は下押すも長い下ヒゲで返す。4月6日-21日の上昇ラインがサポート。22年10月21日-23年4月19日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ上限。4月10日週-17日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-23年4月17週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、ボリバン上位で推移。22年10月-23年3月の下降ラインを上抜く。23年1月-3月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年4月の下降ラインが上値抵抗。
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜くか。
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