執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2023年3月31日 16時50分
独自材料難、豪金融政策動向がユーロの振幅につながる
3月27日週のユーロ/円とポンド/円は底堅く推移
金融市場における目先のシステミックリスクが緩和したことで円売りが優勢となり、ユーロ/円は145.660円、ポンド/円は165.467円まで各々円安が進行しました。上昇一巡後は押し戻される場面もありましたが、総じて底堅い展開が続きました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FX ライブ配信、No news is good news. 日銀サプライズ警戒つづく (2023年3月30日)- YouTube
ユーロ、引き締め継続で底堅さ維持
今週のユーロもECBのタカ派姿勢が崩れておらず上向き方向に変化はないものの、ユーロ圏において独自材料が少ないため、他通貨の動向がユーロの振幅に影響しそうです。特に、金融政策スタンスでECBと距離が開きつつある豪準備銀行(RBA)の金融政策会合の結果には注意が必要かもしれません。4月4日開催のRBA理事会で『0.25%利上げ』を実施するようなら、対豪ドルでのユーロ売りが他通貨にも波及してユーロを圧迫するかもしれません。
逆にRBAが『引き締め休止』とすれば、対豪ドルでのユーロ買いが他通貨にも及びユーロをもう一段、押し上げる可能性もあります。もっとも、これまでのECBによる大規模緩和が急速に巻き戻される中で、米地銀と同じように欧州の銀行でもバランスシート悪化が連想されやすこともあり、システミックリスクにつながるような話題には注意が必要と考えます。
英通商戦略は前進も、足許のインフレ上昇が不安
環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する日本や豪州など11カ国が、英国の参加を認めることで大筋合意しました。EUとの関係改善に続き、通商戦略でもう一つオプションが増えるため、英国の将来にとってプラス材料になりそうです。一方で、足もとの英経済は斑模様と言った状態です。不安視されていた成長は想定よりも減速を回避(1月の月次GDPは0.3%と12月の-0.5%から拡大)している一方で、鈍化が見込まれているインフレは加速気味(2月消費者物価指数は前年比で10.4%と、1月の10.1%からインフレが加速)となっています。インフレ動向を踏まえれば、5月11日の政策委員会でも追加利上げを行う必要性が出てきそうで、成長への逆風になりかねません。
こうした中、英中銀は「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(債務連動型運用=LDI)」の戦略をとる年金基金に対し、英国債の金利が最低でもさらに2.5%上昇するリスクに備えた運用を心掛けるよう通達しています。2.5%は長期的な目標で万一に備えた措置ではあるものの、昨年のような信用不安が起こる可能性を少なからず意識していると思われ、油断できません。復活祭(イースター)前のポジション調整から、もう一段上値を試す可能性はありますが、このまま水準を回復する流れが続くかは疑問です。
ユーロ/円、短期反発が続くのか?
先週のユーロ/円は週初から5.7円近く上昇、これまでレジスタンスだった21日移動平均線が今度は支持線に変わっており、底堅さが増しつつあります。また、期間9日のRSIも65%付近とあって相場の過熱感は高まっている状態ではなく、まだユーロ円は上方向を試す余力を残していそうです。昨年12月高値(146.732円)を目指す展開も想定しておいて良いのかもしれません。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:142.000-147.000
ポンド/円、167円付近で短期戻り売り
ポンド/円も、ユーロ/円と同様にチャート形状はまだ上値余地があるように感じます。昨年9月26日安値(148.666円)、同年10月31日高値(172.125円)、今年の1月3日安値(155.363円)を頂点とするフィボナッチエクスパンションの50%ラインとなる167.092円付近までの上昇はあり得そうです。もっとも、長期的なトレンドが出ていないこともあり、170.000円を超えていくような展開は望みにくそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:160.500-167.500
4/3 週のイベント
4/3(月) 17:00 ユーロ 3月製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
4/3(月) 17:30 イギリス 3月製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
4/4(火) 15:00 ドイツ 2月貿易収支
4/4(火) 18:00 ユーロ 2月卸売物価指数(PPI)
4/5(水) 15:00 ドイツ 2月製造業新規受注
4/5(水) 15:45 フランス 2月鉱工業生産
4/5(水) 17:00 ユーロ 3月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
4/5(水) 17:30 イギリス 3月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
4/6(木) 15:00 ドイツ 2月鉱工業生産
4/6(木) 17:30 イギリス 3月建設業購買担当者景気指数(PMI)
4/7(金) 15:45 フランス 2月貿易収支
4/7(金) 15:45 フランス 2月経常収支
一言コメント
先週はシステミックリスクの話題はそれほど膨らまず、何となく拍子抜けでした。ただ、完全になくなったとは言えず、5月1日までにバーFRB副議長が作成するSVBの破綻に関する報告書の内容次第では、再燃してくる可能性は残されています。
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