総括
FX「中期的円高続く。金融庁は利上げを示唆」
ドル円=127-132、ユーロ円=139-144、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨8位(8位)、株価13位(17位)、中期的円高続く。金融庁は利上げを示唆」
ドル安が続いているのは確かである。ドルより強い通貨は年初来、9通貨あるが、その中で円は8番目と弱い部分も見せている。ただ日本では対ドルレートが重視されるので円高感はある。全体で円がやや弱いのは、まだ貿易収支の赤字が続いているからだろう。原油、天然ガスが既にロシアのウクライナ侵攻時の水準以下となっているが、まだ日本の輸入取引の減少にはまだ繋がっていない。また世界中でインフレが低下しているが、日本が上昇しているのは、世界に比しインフレ上昇時の価格転嫁が遅れたからだろう。貿易とインフレで日本の遅効性が表れている。それゆえに円相場はドル安円安の推移となっている。
さて、金融庁は、地方銀行に対し、上昇局面にある国内金利の動向を踏まえ、ポートフォリオや信用コストなどへの影響を経営者が的確に分析・把握し、市場変動対応に優先的に取り組むよう促していることが分かった(時事)。日銀は昨年12月の金融政策決定会合で長期金利の誘導目標をゼロ%程度に維持しつつ、許容変動幅をそれまでの上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大した。市場機能の改善が狙いだが、債券市場では追加の政策修正に対する思惑が根強く、金利の上昇圧力が継続している。貿易赤字が続くが、縮小傾向は見え始めていること、金利上昇観測があることから、円相場は中期的には円高が継続する。不安要因はロシアの突発的な蛮行で資源価格が急騰し円安となることだが、西側は昨年の学習効果もあり、パニックは一時的なものとなる、ドル円の急なリバウンドには立ち向かいたい。
*米ドル「通貨10位(10位)、株価(NYダウ)16位(18位)、予想通りのインフレ低下、景気減速、ドル安」
今週はFOMCと米国雇用統計があるが、注目しているのは中国の1月製造業PMIなど各種PMI指標だ。FOMCは予想し尽くされて、0.25%への利上げ減速だ。これは経済指標ではないのでサプライズもない。1月雇用統計は前回同様に予想が弱い。だからこその利上げ減速なのだろう。アトランタ連銀の米国1Q・GDPナウは0.7%と弱い。IT大手中心に人員削減が続いているが、先週はボーイングが人員増の発表、コロナ抑制緩和で少数のいい企業もある。中国のコロナ規制緩和では世界中がリスク選好を前倒しして、今年の世界の株価は好スタートを切っている。今週はいよいよ、その中国の1月製造業PMIなどが発表される。予想は概ね改善、これ如何で世界のリスク選好が継続するかが占える。米国株価にも影響を与えるだろう。
インフレでは、12月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比で5.0%上昇した。伸び率の鈍化は3カ月連続で、1年3カ月ぶりの低水準となった。高インフレはピークを越えたとみられており、市場の関心は減速のペースに移っている。イエレン米財務長官は、最近のインフレと雇用に関するデータは心強いとしつつ、金利が高い水準にとどまる中で米経済がリセッション(景気後退)に陥るリスクがあることも認めた。
不安材料は、債務上限問題と大統領の機密文書持ち出しの件だが、この問題を長引かせて政府の業務が停滞するほど米国は愚かではないだろう。
*ユーロ「通貨7位(6位)、株価7位(4位)DAX)、景気後退回避観測の中でのGDPとCPI発表」
リセッション回避観測が強まってきたが、今週は22年4Q・GDPの発表が焦点だ。1月はこれまで1月ZEW景況感指数、1月消費者信頼感指数、1月製造業PMI、独1月IFO景況感指数などが軒並み改善してきた。
独政府は今年の景気見通しを上方修正し、リセッションを辛うじて回避するとの見方を示した。2023年のGDPは0.2%増と見込み、昨秋の予測の0.4%減から引き上げた。
ロシアのウクライナ侵攻を受けた当初の衝撃によるエネルギー高騰が和らぐ中、インフレ率予測は6%とし、従来の7%から下方修正した。ハーベック経済相は報告書で「不可避との見方が多かった著しいリセッションの兆しはない」と述べた。ウクライナ侵攻によって引き起こされた危機は管理可能になっていると指摘。「ドイツは底堅さを示し、経済面で非常にうまく対処した」との見方を示した。
また、ガス供給が不足した場合は記録的な景気低迷に陥るという当初の非常に悲観的なシナリオは回避されたとし「エネルギー供給は引き続き確実で安定している」と述べた。
ただ今週発表される1月消費者物価はユーロ圏では若干の低下も、独は小幅上昇の予想だ。先週はラガルドECB総裁ら複数のECB幹部が利上げ継続の考えを明らかにした。
2月2日のECB理事会では、2回連続の0.5%の利上げ決定がほぼ確実とみられている。先物市場は、政策金利は夏の終わりまでに3.3%程度でピークを迎えることを織り込んでいる。
*ポンド「通貨4位(2位)、株価15位(14位)、政策金利は0.5%引き上げ予想、今年は景気後退予想」
ポンド円、ポンドドルともにボリバン上位で一服した。ドル安の恩恵でポンド高が続いている。英国自体では特に好材料がない。強いて言えばインフレが二桁にのっており、今週も0.5%の利上げが行われる予想が強く、米国の0.25%利上げ予想に比し資金が一時的に流入しやすい観測がある。政策金利を0.5%引き上げて4.0%にする見通し。政策金利は4.25%まで上昇して、そこが現在の利上げサイクルのピークとなる。4%超えは2008年終盤以来だ。ベイリー英中銀総裁は、今年の物価について上昇が鈍化することにより楽観的な見方が広がっていると発言した。
英経済が1年以内に景気後退に陥る確率の予想は先月の85%から75%にやや低下したが、引き続きほぼ確実視されている。今年は1Qと2Q期が0.3%減、3Qが0.1%減の予想。通年では今年が0.9%減、来年が0.8%増という見通しになった。
ユーロ圏の1月総合PMIなどが改善したが、英国のそれは悪化した。1月の総合PMIは47.8で、前月の49.0から低下し、2年ぶりの低水準となった。利上げやストライキ、消費需要の低迷が響いた。
英国が景気後退に陥るリスクを裏付けた。労使紛争、人手不足、輸出の減少、生活費の上昇、金利の上昇は全て、年初に経済縮小ペースが再び速まったことを意味する。
*豪ドル「通貨首位(3位)、株価9位(7位)、消費者物価上昇。中国PMIにも注目」
先週は豪ドルがメキシコペソを抜いて年初来、通貨最強に躍り出た。インフレの低下観測で3回連続で0.25%の小幅の利上げを続け、前回のRBA理事会では利上げ打ち止め論も出ていた。しかし22年4Qの消費者物価は予想を上回った。前年比7.8%上昇と、伸びは前期の7.3%から加速し、33年ぶりの大きさとなった。旅行や電力の価格が大きく上昇した。統計を受け、RBAが2月7日の会合で0.25%ポイントの追加利上げを実施するとの見方が強まった。
一方、12月の豪企業景況感指数は、8ポイント低下してプラス12となった。3カ月連続で低下した。ただ、長期平均は引き続き上回った。一方、信頼感指数は3ポイント上昇してマイナス1となった。2カ月連続でマイナスにとどまった。ほとんどの指標が過去3カ月ほどで軟化し、勢いが弱まっている。10-12月の人件費は7-9月に比べて2%上昇。9-11月の2.8%上昇から伸びが減速した。
さて今週は、中国の一連の1月PMIが発表される。最大貿易相手国の中国との貿易関係を改善した豪だが、中国のPMIがゼロコロナ政策解除で上昇すれば豪ドルも支えるだろう。
*NZドル「通貨5位(5位)、株価14位(13位)、2月は利上げ減速か」
22年4Q消費者物価上昇率は約30年ぶり高水準付近にとどまったものの、中銀の予想を下回り、今後数カ月の利上げ幅が予想よりも小幅になるとの見方が強まった。前年比の上昇率は7.2%。3Qと変わらず、予想の7.1%をやや上回ったが、中銀予想の7.5%は下回った。前期比では1.4%上昇し、3Qの2.2%から伸びが鈍化した。予想は1.3%上昇だった。
全体的なインフレ圧力が中銀の懸念ほど深刻でない。2月の利上げ幅が0.75%ではなく0.5%にとどまる予想が強い。
中銀は昨年11月の前回会合で、過去最大となる0.75%の利上げを実施。インフレ抑制に向け、さらなる積極的な利上げを予想すると同時に、経済は1年間にわたって景気後退に陥る可能性があると警告した。
ただ1月の企業信頼感は前月から改善した。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答者の割合は差し引き52%。12月は70.2%だった。向こう1年間に自社の事業が縮小すると予想した回答者は差し引き15.8%で、こちらも12月の25.5%から改善した。
さて、ヒプキンス新首相(労働党)は「政策の優先順位を見直す」と強調。最優先課題としてインフレ対策を挙げた。NZでは10月半ばに総選挙が実施される。2022年11月に実施された世論調査では、労働党の支持率は33%と最大野党・国民党(38%)を下回った。
テクニカル分析
*ドル円「5日線は上向き、下向きの20日線に近づく。20日線を上抜くかが焦点」
日足、ボリバン中位=20日線を上抜けない。ただ5日線は上向き、下向きの20日線に近づく。1月26日-27日の上昇ラインがサポート。1月26日-27日の下降ラインが上値抵抗。
週足、雲中へ下落。ボリバン2σ下限からは反発。5週平均線が20週平均線を下抜く。1月16日週-23日週の上昇ラインがサポート。1月2日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、2か月連続陰線。1月も陰線スタート。5か月移動平均線が下向く。22年8月-11月の上昇ラインを下抜く。21年9月-22年3月の上昇ラインがサポート。10月-11月、11月-12月の下降ラインが上値抵抗。
年足、23年は陰線スタート。2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲを残し売り圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「日足、先週後半連続陰線で小緩む。年足は下降ライン上抜くか」
日足、先週後半連続陰線で小緩む。1月18日-27日の上昇ラインがサポート。1月26日-27日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、上昇して雲中入り。ボリバン2σ上限近い。1月16日週-23日週の上昇ラインがサポート。22年2月21日週-23年1月23日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線。1月も陽転。ボリバン中位に近づく。21年6月-22年12月の下降ラインを上抜く。21年1月-6月の下降ラインが上値抵抗。22年10月-11月、11月-12月の上昇ラインがサポート。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗だが迫っている。
*ユーロ円「ボリバン2σ下限から反発も雲が抵抗し一服」
日足、ボリバン2σ下限まで下落し反発も雲が抵抗し一服。1月19日-27日の上昇ラインがサポート。1月25日-27日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ下限から反発。1月16日週-23日週の上昇ラインがサポート。12月19日週-1月23日週の下降ラインが上値抵抗。5週線が20週線を下抜くも5週線は横ばいへ。
月足、2か月連続陰線。1月は陽転。ボリバン3σ上限から反落。10月-12月の下降ラインが上値抵抗。22年5月-8月の上昇ラインがサポート。
年足、3年連続陽線。今年も陽転。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインが上値抵抗。
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