総括
FX「円安はエネルギー価格の高騰と、原発稼働を大幅縮小した日本の政策によるもの」
ドル円=140-145、ユーロ円=141-146、ユーロドル=0.98-1.03
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、円安はエネルギー価格の高騰と、原発稼働を大幅縮小した日本の政策によるもの」
この円安はエネルギー価格の高騰と、原発稼働を大幅縮小した日本の政策によるものだ(エネルギー輸入の構成比 日本31%、スイス3%、英5%、独6%と日本の輸入依存度は高い)。月間のエネルギー関連輸入は、コロナ前や、東日本大震災前と比べると約2兆円増加、一方、日本の輸出の代表である輸送用機器の輸出金額は約1.5兆円で変わっていない。エネルギー関連輸入の2兆円増がそのまま貿易赤字となり、1日約5億ドルのドル買いを発生させ円安となっている。これを平準化するために、日銀の金利操作やドル売り介入は一時的な効果はあるが、貿易赤字がこのままだと、またむっくりドルが上昇する。
そもそも、為替相場を円高に持っていくというのは正しいことなのかもわからない。日本の物価は円安でも世界が羨む2-4%程度に収まりそうであり、景気もコロナ抑制策が緩和され回復に向かいつつある。企業収益も好調だ。日本は対外純資産が3.5兆ドルあるので円安は大きなメリットだ。問題は円安のスピードの速さか。介入や日銀総裁のコメントでの気遣いで、少しは調整できるかもしれないが、輸入業者や機関投資家に期待を持たせて介入や金利操作、制度改革を実行しないと、ドルの買い遅れに繋がるので要注意だ。相場は貿易収支次第、エネルギー価格次第だ。今の所、その大きな変化は見られない。また期末のドル買いにも気をつけたい。
*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)11位(10位)、消費者物価は2か月連続低下、FOMCは0.75%利上げか」
FRB、ECB、RBA、イエレン財務長官らは、約1年前、インフレが一時的だと予想し金融引き締めを否定していたことに対して、謝罪や政策の変更を行っている。ただ考え方が誤りかというとそうでもない気がする。「一時的」要因が長引いているだけではないかと思う。一時的という抽象的な言葉が曖昧だ。一時的要因とはエネルギー価格の上昇とサプライチェーン問題だろう。両者は、金融政策ではなく、政治が動いて、少しずつ改善している。
その中で、急に「断固たる引き締め」に大転換するのは弊害が大きいようで株価を悲惨な目にあわせている。失業率を悪化させてでも利上げする決意のようだが、それは時間がかかりそうで、弊害がより大きくなりそうだ。米宅配大手フェデックスは景気減速により世界的に出荷量が低迷したと明らかにした。米国消費者物価も8月で2か月連続で低下している。アトランタ連銀の3Q・GDPナウは0.5%にまで低下している。以上によりFOMCでは1.0%利上げ予想も出ているが0.75%が適切ではないか。
さて日本や欧州が、通貨安懸念を表明しているが、米国のベージュブックからはドル高懸念の言葉は出てこない。ドル売り円買い、ドル売りユーロ買いに結び付けるのは難しそうだ。
*ユーロ「通貨8位(9位)、株価13位(13位)DAX)、高インフレで景気悪化が続く」
ユーロドルは3か月連続陰線、9月もかろうじて1.0は維持したが、ここまで陰線。年初来ではNZドルがより下落し12通貨中では9位から8位へ浮上している。ECBではタカ派のナーゲル独連銀総裁は、「金利水準金利水準はインフレに見合ったものにはほど遠く、さらに上昇する必要がある。今冬、ドイツで2桁のインフレが起こる可能性は否定できないが、 厳しい冬の後には インフレ率が低下すると確信している」、と発言した。デギンドスECB副総裁は「今後数カ月は追加利上げが続くだろう」と述べた上で、その頻度や度合いについては根本的にデータ次第だとの考えを示した。ラガルドECB総裁は、「ECBの措置により成長が圧迫される可能性があるが、物価安定が最優先になる」と表明した。
ただ経済指標は弱く、貿易赤字は続き、ユーロの不安要因となっている。ユーロ圏7月の鉱工業生産、前年比2.4%減少、大幅に予想の0.4%下回った。9月ZEW景況感調査はマイナス60.7で、前月のマイナス54.9
から悪化した。7月のユーロ圏貿易収支は340億ユーロの赤字で、9か月連続の赤字でユーロ安の要因だ。ユーロ安懸念は当局からも出ているが、貿易赤字から見れば当然で介入には繋がらない。今週は7月経常収支、9月消費者信頼感指数、製造業・非製造業PMIの発表がある。
*ポンド「通貨10位(10位)、株価3位(3位)、利上げは0.5%か、リセッション懸念あり」
ポンドドルは弱い。12通貨中10位で、下には円とトルコだけだ。金利先物市場では、英中銀は0.5%の利上げ確率が51%、0.75%が月初の80%超から49%に低下している。8月の小売売上高は前月比で予想より悪化の1.6%の減少となり、2021年12月以来最大の減少を記録し、今後発表されるGDPでリセッション入りの可能性が高まったこともある。
8月の消費者物価は前年同月比9.9%上昇した。燃料価格の下落を背景に、伸び率は40年ぶりの高水準だった7月の10.1%から鈍化した。トラス首相は家計のエネルギー料金に上限を設けることを決定している。インフレ率は上限が導入される10月にインフレは頭打ちとなるとの見通しも出ている。
7月の国内総生産(GDP)は前月比0.2%増加で、予想の0.4%増を下回った。前期比0.1%減だった2Qに続き、3Qもマイナス成長となりそうだ。英中銀は先月、エネルギー価格高騰の影響で年末にリセッション入りし5四半期続くとの予想を示している。7月の鉱工業生産指数は予想に反して前月比0.3%低下した。予想は前月比0.4%上昇、7月の貿易収支は193.6億ポンドの赤字。
*豪ドル「通貨5位(5位)、株価7位(7位)、指標好調も、利上げ減速論あり」
今月はここまで、また先週も豪ドルは弱含んだ。RBAロウ総裁は、0.5%の利上げが不要になる段階に近づいているとの認識を表明した。通常の金利状況に近づいていると指摘し、次回の理事会では0.5%または0.25%の利上げを検討することになるとした。ただ世界経済やインフレ期待、家計消費を巡る不透明感を踏まえ、事前に決まった政策の道筋はないとも述べた。
ただ経済指標は悪くはない。欧州とは違う。インフレも6%台で欧米より低い。8月の雇用統計は、就業者数が増加に転じた。失業率も48年ぶり低水準からわずかな上昇にとどまり、金利が上昇する中でも労働市場の底堅さを示す内容となった。就業者数は前月比3万3500人増加と、予想と一致。7月の減少(4万1000人)の大部分を回復した。前年比では57万300人の大幅な増加となった。フルタイム就業者数は前月比5万8800人増加した。失業率は3.5%で前月の3.4%から上昇。ただ、職探しをする人が増えたことが背景で、完全雇用と見なされる水準を依然として大幅に下回っている。
この数字からはRBは利上げを継続するとみられる。RBAロウ総裁は、賃金の上昇ペースが米国の半分程度にとどまっていることもあり利上げペースを落とす可能性も排除していない。
*NZドル「通貨9位(8位)、株価8位(8位)、金融引き締めサイクルが終盤か。2Q・GDPは改善も経常収支は赤字継続」
豪ドルとともに今月はやや弱い。両国中銀ともに金融引き締めサイクルが終盤にあると表明していることがある。8月の全国住宅価格は前月比2.1%下落、前年比6%下落となった。金融引き締めの効果も出ている。さて2Q・GDPは前期比1.7%増加し、伸び率は予想の1.0%を上回った。1Qの0.2%減からプラスに転換した。前年比では0.4%増。予想は0.2%増。産業別にみると「交通・郵便・倉庫」が前期比19.7%増で、全体を0.7ポイント押し上げた。観光客増加による航空や関連サービスが大きく伸びた。レストランなどの飲食業を含む「小売り・ホテル」も5.9%増となり、全16業種のうち9業種が前期を上回った。
需要項目別にみると、輸出が20.5%増となり全体をけん引した。モノの輸出は3.8%増にとどまったが、サービス輸出が60.7%増と大幅な伸びを記録した。NZ政府が新型コロナウイルスの感染拡大で導入した外国人の往来規制を4月以降緩和し、海外からの観光客が増加した。一方、個人消費は前期比で3.2%減。2Qの消費者物価が前年同期比で7.3%上昇し、32年ぶりの高水準を記録し足元で進むインフレに対して家計の警戒は高まっており、今後の懸念材料となる。また2Q経常収支は52.24億NZドルの赤字でありNZドルの売り材料の一つだ。
テクニカル分析
*ドル円「日足、揉み合う。週足、5週連続陽線も9月5日週の高値を上抜けず上ヒゲ残す」
日足、145円近くから小反落も揉み合いが続く。9月7日は長い上ヒゲ、8日の行き詰まり線で下落も続落とはならず。9月13日-16日の上昇ラインがサポート。9月14日-16日の下降ラインが上値抵抗。5日線横ばい、20日線上向き。
週足、5週連続陽線も9月5日週の高値を上抜けず。9月5日週、12日週と上ヒゲが長い。9月5日週-12日週の上昇ラインがサポート。9月5日週-12日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、8月は例年通りお盆過ぎたあたりから陽転。9月はボリバン2σ上限を一時上抜く。6月-8月の上昇ラインがサポート。
年足、2021年は6年ぶり陽線。今年もここまで大陽線。2016年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「打たれ強く1.0をかろうじて維持」
日足、打たれ強く1.0をかろうじて維持。3日連続陽線。9月6日-16日の上昇ラインがサポート。9月13日-16日の下降ラインが上値抵抗。5日線は再び下向きに、20日線下向き。
週足、ボリバン下位。9月5日週-12日週の上昇ラインがサポート。8月8日週-9月12日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線は下向き。
月足、3か月連続陰線。9月もここまで陰線。ボリバン2σ下限。7月-8月の下降ラインが上値抵抗。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。17年-20年の上昇ラインも下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。年足的サポートラインがない。
*ユーロ円「9月13日-16日の下降ラインが上値抵抗」
日足、9月12日、13日のダブル上ヒゲで小反落。9月5日-16日の上昇ラインがサポート。9月13日-16日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線上向き。
週足、一時、ボリバン3σ上限に近くづくも、上ヒゲ残し反落。8月29日週-9月5日週の上昇ラインがサポート。5週線、20週線上向き。
月足、7月は5か月ぶりに月足陰線。8月反発。9月もここまで陽線。6月-7月の下降ラインを上抜く。3月-8月の上昇ラインがサポート。ボリバン3σ上限に近づく。
年足、2年連続陽線。今年も3月に陽転。14年-21年の下降ラインを上抜く。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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