総括
FX「政府日銀の介入(口先、実弾)の持続性」
ドル円=140-145、ユーロ円=141-146、ユーロドル=0.98-1.03
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、政府日銀の介入(口先、実弾)の持続性は」
ドル円は11日ぶりに陰線となった。テクニカルでもボリバン3σ上限という天井感、長い上ヒゲ、行き詰まり線と上値の重い展開であった。145円近くになりメディアも騒ぎ、政府にも円安デメリットを受ける人々から苦情が殺到し、政府も動かざるを得なくなり、財務省、日銀、金融庁の3者会談を実施、円安は問題なしとしていた黒田日銀総裁も「急激な為替レートの変動は好ましくない」としたことで、144円台から一時141円台半ばまでドル円は下落した。
プラザ合意の1ドル240円から75円の円高時代にも政府は口先、実弾介入を繰り返してきた。バブル時代の1988年から1990円への40円の戻し、榊原財務官時代の68円の戻し、黒田財務官時代の34円の戻し、東日本大震災からの50円の戻しもあったので、一概には軽視できない。40円、50円の動きも円安傾向の継続に問題がないという人は、口先、実弾介入も無視していいと思うが、5円、10円の動きもとりたいという人は発言、チャートの動きにも敏感になりたい。
ただ貿易黒字時代が超円高になったように、この円安の根本要因は貿易赤字なので介入もやめれば円安となる。介入の持続性も需要だ。9月15日(木)には8月貿易統計の発表がある。今年は、2014年の史上最大の12.8兆円という貿易赤字を上回りそうな勢いだ。また短観と同内容の法人企業景気予測調査やイエレン財務長官が示唆している9月13日発表の米国8月消費者物価も注目だ。木原官房副長官は円安を活用してインバウンドの拡大を目指すとした。コロナ前の旅行収支黒字2兆円超(現在2千億円の黒字)が戻れば円高要因だ。
*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)11位(10位)、パウエル議長金融引き締め継続 VS 8月消費者物価低下予想」
ドルは年初来12通貨中、2位の強さだが、先週は8位、今月はここまで6位と上昇のスピードやや弱めている。さてパウエルFRB議長はインフレ抑制に「強くコミットしている」と表明。9月21日のFOMCで予想される利上げの幅については手がかりを示さなかったものの、利上げ計画を撤回しないとの姿勢を改めて強調。「現時点ではこれまで通りに力強く行動する必要があり、達成されるまで継続しなくてはならない」と述べた。他のFRB幹部も同様の意見を述べている。
一方、ベージュブックでは、物価高騰とタイトな労働市場が向こう1年間の米成長見通しに重しになったと指摘。物価の伸びについては鈍化の兆候が見られると指摘した。
その中でイエレン財務長官は、米国のインフレが一段と鈍化すると楽観していると述べる一方で、不確実性はなお残っていると警告した。「ガソリン価格が80日連続で下落しており、これは確かに朗報だ」と発言。「これが寄与して7月の総合インフレ率はマイナスに転じた。次回の統計ではさらに勢いが増すと思う」と述べる一方で、「ロシアに関連して世界的に多くの不確実性が存在する」と指摘した。
13日発表の8月消費者物価予想では前年同月比8.1%上昇と、前月の同8.5%から鈍化する見込み。12日には8月の消費者インフレ期待が発表される。
為替についてはベージュブックでは一言も触れられておらず、日欧の通貨安懸念とは大きな差があるようだ。日本からの介入要求にも応じてくれる可能性は低い。
*ユーロ「通貨9位(9位)、株価13位(13位)DAX)、ラガルド総裁はユーロ安懸念を有す」
3か月連続陰線、9月はここまで、なんとか寄り引き同時で持ちこたえ先週終値は1ユーロ=1.0ドル以上を維持した。ラガルド総裁は「通貨バスケットに対して、特にドルに対してユーロが下落していることを指摘している。インフレに遅れて影響を与えることは認識している。しかし、為替レートを目標にしない。これまでもそうしてきたし、これからもそうすることはない」としユーロ安がインフレに影響を与えていることは見つめつつも、特に対策をとることはないとした。ECBが以前、介入したのは200年の11月で1ユーロ=0.85ドル以下であった。
ECBは政策金利を0.75%引き上げ1.25%とした。エネルギー危機を受けてリセッションの可能性が高まっているにもかかわらず、過去最大の利上げに踏み切った。
インフレが広がり定着するリスクが高まっていることが背景にある。ECBは「需要を抑制し、インフレ期待が持続的に上方へシフトするリスクを避けるために、今後数回の会合で金利をさらに引き上げると予想している」と表明した。ECBは今年のインフレ率は6月予測の6.8%から8.1%に、23年は3.5%から5.5%に引き上げた。24年も2.3%と目標の2%を上回ると予想した。
成長率については、ウクライナ戦争の影響、特にエネルギー価格高騰の影響が来年に顕著に出ると想定。今年の予想を2.8%から3.1%に引き上げる一方で、23年は2.1%から0.9%に下方修正した。
*ポンド「通貨10位(10位)、株価3位(3位)、エネルギー政策で成長率予想が引き上げられ、金利上昇でポンド反転上昇」
英中銀は9日、エリザベス女王の死去を受けて、9月15日に予定していた金融政策委員会を22日に延期すると発表した。現在0.5%か0.75%の利上げ確率は若干0.5%が高い。
ポンドドルは4週ぶりに週足が陽線となった。先週は週間4位と8位のドルを上回った。
トラス英首相は、家計のエネルギー料金の上限を2年間、年2500ポンド程度に抑える計画を発表した。ウクライナ戦争による経済的ショックを抑える狙いがあるが、政府には約1500億ポンド)の負担増になるとみられる。政府はインフレ率を最大5%ポイント抑制できるとみている。
クレディ・スイスは、2023年の英GDP予想を従来のマイナス0.6%からマイナス0.2%に引き上げ。英国政府の家庭エネルギー料金2年間抑制計画により、景気後退の深度が浅くなり、目先のインフレ率が低下する可能性が高いとした。また、エネルギー費対策の結果、金利が上昇し、財政赤字が大幅に増加すると予想。英中銀が23年1Qまでに政策金利を現在の1.75%から4%まで引き上げると予測し、従来の3.5%から引き上げた。株価は石油・ガスの超過利潤税を課すことなく高いエネルギー費に対処する緊急対策を発表したことから、買いが優勢となったが積極的な利上げへの懸念から相場全体の上げ幅は限られた。
*豪ドル「通貨5位(4位)、株価7位(7位)、利上げ減速論が出る。経済指標は概ね好調、中国景気減速が気がかりだ」
ドルよりは弱いが円よりは強い。12通貨中5位と「持てる国」の強みで安定しているが貿易依存度の高い中国経済の減速が米ドル弱い一つの原因だろう。
ロウRBA総裁は、利上げ減速論は金利が上がれば上がるほど強くなるとしつつ、最終的にどこまで上がる必要があるかはインフレと雇用に関する今後のデータ次第だと述べた。
政策見通しに関する講演で、インフレ抑制のためにさらなる利上げが必要だが、事前に設定した経路はなく、すでに金利が大幅に上昇していることを認識していると述べた。この発言で来月以降の利上げペースを0.25ポイント刻みに緩めると多くが予想している。次回10月4日の政策決定会合で、政策金利を現行の2.35%から2.6%に引き上げると予測されている。RBAは先週、政策金利を0.5%引き上げ、7年ぶりの高水準となる2.35%とした。
経済指標は概ね好調だ。2Q・GDPはは前期比0.9%増加し、前期の0.7%から伸びが加速した。個人消費の堅調やエネルギー関連輸出の増加が寄与した。
前年比は3.6%増加し、前期の3.4%を上回った。2Q経常黒字は183億豪ドルとなり、1Qの28億豪ドルから大幅に拡大した。資源輸出が価格と量の双方で押し上げられたことが背景。ただ3Qに入った7月貿易収支は87億豪ドルの黒字となり、黒字額が予想以上に縮小した。これまで好調だった鉄鉱石や石炭の輸出が減少した。中国景気減速の影響か。7月の小売売上高は前月比1.3%増と過去最高を記録した。豪消費は消費者物価の高騰と金利上昇に直面しても底堅い。
*NZドル「通貨8位(8位)、株価8位(8位)、貿易・経常収支は赤字、個人消費減少。格付け引き上げは朗報」
NZドルは12通貨中8位とやや弱い。貿易、経常赤字であり、他の経済指標も強くはない。その中で格付けが引き上げられたのは朗報だった。フィッチはNZの長期外貨建て発行体デフォルト格付けを「AA」から「AAプラス」に引き上げた。格付け見通しは「安定的」とした。フィッチは家計の負債と対外債務は高水準だが、慎重な財政運営に対する政府の信頼できるコミットメントが格上げの理由と説明した。
さてNZ中銀オア総裁は個人消費が沈静化し始めている兆しを指摘し、積極的な引き締めサイクルが終了に近づいている可能性を示唆している。最近の経済指標では2Q・小売売上が前年比3.7%減少、2Q製造業売上が前年比7.4%減少と冴えない。ただ8月クレジットカード消費は前年比26.9%増と回復した。貿易収支は赤字が続いている。鉱業資源を持たない弱みがある。頼みは観光で、入国制限も緩和しているので、今週の7月の訪問客数は期待できる。今週の2Q経常収支は引き続き赤字予想(44億NZドルの赤字)、2QGDPも前期比で減速しそうだ。
テクニカル分析
*ドル円「9月7日は長い上ヒゲ、8日は行き詰まり線、9日はついに陰線」
日足、8月2日のボリバン3σ下限から上限まで上昇し反落。9月7日は長い上ヒゲ、8日は行き詰まり線、9日はついに陰線。9月7日-8日の下降ラインが上値抵抗。9月6日-9日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線上向き。
週足、4週連続陽線でボリバン3σ上限へ。後半は反落し上ヒゲ長い。8月29日週-9月5日週の上昇ラインがサポート。
月足、8月は例年通りお盆過ぎたあたりから陽転。ボリバン2σ上限まで戻す。9月はボリバン2σ上限を一時上抜く。6月-8月の上昇ラインがサポート。
年足、2021年は6年ぶり陽線。今年もここまで大陽線。2016年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン中位上抜きも上ヒゲ長い」
日足、1.00で揉みあったのちボリバン中位を上抜く。ただ9月9日は上ヒゲ長し。9月8日-9日の上昇ラインがサポート。8月11日-9月9日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、2週連続陰線の後は下げ止まる。ボリバン2σ下限から小反発。8月8日週-9月5日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、3か月連続陰線。9月も下落スタートだったが寄り引き同時迄戻す。ボリバン2σ下限。7月-8月の下降ラインが上値抵抗。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。17年-20年の上昇ラインも下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。年足的サポートラインがない。
*ユーロ円「年初来高値を更新し反落」
日足、9月9日にボリバン2σ上限を超え、年初来高値を更新し反落。9月7日-9日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線上向き。
週足、7月18日週-8月29日週の下降ラインを上抜き、一時ボリバン3σ上限へ上昇。8月29日週-9月5日週の上昇ラインがサポート。5週線、20週線上向き。
月足、7月は5か月ぶりに月足陰線。8月反発。6月-7月の下降ラインを上抜く。3月-8月の上昇ラインがサポート。ボリバン3σ上限に近づく。
年足、2年連続陽線。今年も3月に陽転。14年-21年の下降ラインを上抜く。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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