執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2022年9月2日 17時30分
米ドル/円24年ぶり高値更新で140円台、日銀ボーナスと介入警戒レベル
8月29日週の米ドル/円は24年ぶり高値の140円台示現
複数のFRB要人発言が、当局の積極的なタカ派姿勢に変化は見られないと市場で受け止められ、米ドル/円は24年ぶりの高値となる140.429円(執筆時点)まで上伸しました。途中、松野官房長官による円安への口先介入発言も聞かれましたが、米ドル/円はお構いなし下値を切り上げました。
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FXライブ/為替予想【実践リアルトレード】米ISM Live, ドル円の意外な上昇ドライバー、主要通貨ポイント整理 ドル/円、豪ドル/円、ユーロ/円、ポンド/円ポイント徹底解説(2022年9月1日)- YouTube
日米金利差拡大が下支え、介入警戒レベル一覧
今週末から来週にかけては9月2日の米雇用統計、9月6日の同8月ISM非製造業景況指、9月7日の同地区連銀経済報告(ベージュブック)と9月20-21日のFOMC(連邦公開市場委員会)に向けて何かと注目されるイベントが並びます。これらイベントの結果次第では、利上げ幅の織り込み度が振幅しそうです。雇用統計が強ければ、文句なく0.75%利上げを市場は織り込みに行き、米ドル/円はさらなる上値を試しそうです。また、無難な結果や雇用拡大のペース鈍化が示された場合は、利上げへの最後のピースである13日の消費者物価指数まで方向性が定まりにくくなるかもしれません。
もっとも、「異例に大幅な利上げ」となる0.75%利上げ期待が簡単に薄れるとは考えづらく、米ドル/円の下値は限られそうです。雇用統計が余程弱い結果とならない限りは、ドル高調整は起きにくいと感じます。一時期、崩れていた米ドル/円と日米金利差の相関性が回復している点も米ドル/円の底堅さを強めています。 また、日銀ボーナスも米ドル/円をサポートしています。世界的なインフレ再燃で本邦金利にも上昇圧力がかかりますが、日銀が指値オペで10年債利回りを0.25%以下に抑えています。
図表1.日米金利差と米ドル/円の推移
つまり世界的な金利上昇と連動して10年債金利が0.25%に接近する局面は、日銀が国債を購入して金利が0.25%を超えないように誘導するため、こうした場面では諸外国との金利差が一段と広がりやすくなり、円安バイアスが強まるいわば日銀ボーナスと言える状況になるのではないでしょうか。このように上昇へのネガティブ材料が少ない米ドル/円ですが、140円を突破し新たなレンジに突入したことで、本邦当局者による口先介入には警戒です。口先介入については、以下の表にあるように発言内容から、ある程度介入の現実味を推量できますので、このようなときには慌てずに対処すべきでしょう。
図表2.要人発言に見る介入警戒レベル
米ドル/円は143.000円付近が上値のめどか
高値警戒心はありますが、強い上昇トレンドが形成されており、目先はどこまで上値を伸ばすのかが着目されます。24年ぶりの高値圏とあって、近いところに目立った節目は見当たりませんが、5月24日安値126.355円を起点としたN計算値となる143.420円が一応の節目になりそうです。もっとも、足もとの上昇スピードが速かったこともあり、調整が入った場合には少し深くなる危険もあるため、引き付けて押し目を拾うなら日足一目基準線の138.119円付近まで待ちたいところです。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:138.000-143.000
9/5 週のイベント:
9/6(火) 22:45 米国 8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/6(火) 22:45 米国 8月総合購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/6(火) 23:00 米国 8月ISM非製造業景況指数(総合)
9/7(水) 14:00 日本 7月景気先行指数(CI)・速報値
9/7(水) 14:00 日本 7月景気一致指数(CI)・速報値
9/7(水) 21:30 米国 7月貿易収支
9/7(水) 27:00 米国 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
9/8(木) 8:50 日本 4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、改定値)
9/8(木) 8:50 日本 7月国際収支・貿易収支
9/8(木) 8:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
9/8(木) 14:00 日本 8月景気ウオッチャー調査
9/8(木) 21:30 米国 新規失業保険申請件数
9/8(木) 22:10 米国 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、発言
9/9(金) 23:00 米国 7月卸売売上高(前月比)
一言コメント
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