FX/為替見通し「ECB利上げ秒読み、ユーロ/円に買い妙味。ポンド安視線に変化なし」週刊為替レポート　ハロンズ　ユーロ＆ポンド　2022年06月05日

ユーロやポンドは方向性が見定めづらかったものの、ドル/円が5月12日以来の130円台を回復する動きに支えられて、ユーロ/円は139.781円、ポンド/円163.504円（ともに執筆時点）までそれぞれレンジ上限を広げました。投資家のネガティブセンチメントが中国・上海のロックダウン解除で持ち直し、改めて主要国と本邦の金利差拡大が意識されたもよう。

ユーロ/円に買い妙味か

5月23日にラガルドＥＣＢ総裁が、ブログで「第３四半期末までにマイナス金利を脱する」と投稿して以来、要人のタカ派発言は数えきれません。ドイツ銀のエコノミストも、７月か９月のどちらかで0.5％の利上げが実施されるとの見通しを明らかにするほどで、マイナス金利解除に向けた外堀は完全に埋まった様子です。9日のECB理事会では、従来の資産購入（APP）停止が決定され、7月利上げに向けた地ならしが進む見込みです。ECB理事会の注目点は、ラガルド総裁が0.5％利上げにどこまで踏み込んだ見解を示すのか、これまで以上にタカ派な姿勢を強めているのかといった部分でしょう。

ECBのマイナス金利解消観測で本邦との金利差拡大から、ユーロ/円は底堅さが増しており、年初来高値（140.004円）更新も視野に入っています。もっとも、欧州金融政策を巡るタカ派な部分はある程度織り込み済で、イベントリスクは利上げに対して思ったほどタカ派に振れなかった場合となりますが、利上げ路線が明確なためそうした局面はかえって押し目買いの契機と考えます。ただし、ロシア産石油の輸入禁止措置により経済の先行きは不透明ですので、足もとのセンチメントが継続するか判断は難しいです。高値圏での取引は慎重に慎重を期したいです。

ポンドは他国との景況感拡大で出遅れ感が高まりそう

どこの国・地域も、多かれ少なかれインフレ高進と成長鈍化の不安を抱えていますが、英国はそれが顕著な状況です。サービス業の景況感悪化は激しく、景気判断の分かれ目である50割れ目前まで下げています。スタグフレーションへのリスクは他の主要国より高い状況です。6月も追加利上げが実施されることは確実視されているものの、どこかイングランド銀行（中銀）は及び腰になっている様子で、早くも利上げ停止を宣言するのではとの声も聞かれています。

ただ、利上げ停止はインフレの抑制をかえって遅らせ、結果的に英成長にとってマイナス要因となるため、中銀もインフレ抑制姿勢は容易に崩せないでしょう。いずれにしても、ポンド買いを進める状況とは考えづらく、米国・欧州・豪州・NZ・カナダとの成長格差は広がりそうで、引き続きポンドには幅広い売り圧力がかかりそうです。円安の影響から、対円で売りを仕掛けるのに気が引けるのであれば、対欧州・豪州などでのポンド売りも一考と思われます。

ユーロ/円、年初来高値更新の次は

切り上がる一目均衡表・雲に支えられ139円半ばまで持ち直し、年初来高値140.004円（4月21日）を視野に捉えた様子です。高値更新は時間の問題かもしれません。ここを上抜けしたときは、2015年6月高値の141.051円が次ぎの節目になりそうです。日足ボリンジャーバンドのプラス1σラインの138.27円近辺（執筆時点）は押し目買いのポイントになりそうです。

【ユーロ/円チャート　日足】

ユーロ/円チャート　日足出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：EUR/JPY：137.800-141.000

ポンド/円は売り目線

上値抵抗帯を次々に突破し堅調そうに見えますが、ボリンジャーバンドは広がっておらず、騰勢は限定的と感じます。また、163.800円アラウンドに日足一目・雲上限が位置しているほか、年初来高値168.424円（4月20日）からの下落幅の61.8％戻しも163.522円付近いあるため、164円手前ではもたつきそう。個人投資家が良く利用する、RCI順位相関係数がまだ低下基調を示していないため、163円後半で売り急ぐべきではないが、しばらくは売り場を慎重に探したいです。

【ポンド/円チャート　日足】

ポンド出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：GBP/JPY：160.500-164.500

06/06 週のイベント

06/07(火) －世界銀行、世界経済見通し
06/07(火) 08:01 イギリス 5月英小売連合（ＢＲＣ）小売売上高調査
06/07(火) 15:00 ドイツ 4月製造業新規受注
06/07(火) 17:30 イギリス 5月サービス部門購買担当者景気指数（ＰＭＩ、改定値）
06/08(水) －経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）経済見通し
06/08(水) 15:00 ドイツ 4月鉱工業生産
06/08(水) 17:30 イギリス 5月建設業購買担当者景気指数（ＰＭＩ）
06/08(水) 18:00 ユーロ 1-3月期四半期域内総生産（ＧＤＰ、確定値）
06/09(木) 20:45 ユーロ欧州中央銀行（ＥＣＢ）政策金利
06/09(木) 21:30 ユーロラガルド欧州中央銀行(ＥＣＢ)総裁、定例記者会見

一言コメント

意外と日中の人が少ない。コロナの緊急事態宣言が解除されて、確かには夜の繁華街や行楽地は人出があります。しかし、オフィス街を眺めてみると、日中の歩行者はそれほどでもなく、どれがほんとの街の様子なのか分からなくなります。人が少ないのは私の周りだけなのでしょうか。

目次

ECB利上げ秒読み、ユーロ/円に買い妙味。ポンド安視線に変化なし

05月30日週のユーロ/円、ポンド/円は堅調