総括
FX「新年度需給とウクライナ円安相場は」
ドル円=119-124、ユーロ円=132-137 、ユーロドル=1.08-1.13
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(7位)、株価7位(11位)、新年度需給とウクライナ円安相場は」
5年間抜けることのなかった2016年のドル円のレンジ(99.08-120.27)を上抜いた。2016年1月にはマイナス金利を導入したがドル円は円高方向に推移していた。その後貿易収支が黒字からフラット、そして赤字となるにつれ円安へ反転していたが22年3月に高値120.27を上抜いた。ウクライナ危機がきっかけになった。2月24日のウクライナ危機からは円は最弱で危機の影響を受けやすいトルコや欧州の通貨よりも安い。資源輸入国の日本にとっては資源価格上昇は円安要因だが、さらに3月年度末という時期も円安に影響したのだろう。4月から輸出予約を活発化する輸出のドル売りもなく輸入のドル買いが目立った。21年度は外債投資に積極的でなかった機関投資家はヘッジ外しのドル買いに走ったのだろう。
経常赤字化は円安の要因だが、1月は例年貿易赤字、所得黒字も減少する季節的要因がある。黒田総裁も「1月経常収支赤字は季節的要因によるもの」としていた。これが2月も続くことはない。2月の経常収支は4月8日に発表される。貿易赤字は1兆円以内に収まり、所得黒字は2兆円を超えると予想されるので経常収支も黒字となるだろう。
新年度4月からは輸出のドル先物予約が先行し例年だと夏まで続き、輸入のドル買い金額を上回るが、ウクライナ危機が長引き、輸入のドル買いが増えれば輸出入トントンとなる。ここに機関投資家がどうでるか。上半期の投資計画を注目したい。
政府は物価高対策の財政出動を行うようだが、為替に触れるかどうか。日銀の短観もあるが事前の同内容の調査である法人企業景気予測調査のように景況感はやや悪化しよう。
*米ドル「通貨6位(6位)、株価(NYダウ)8位(8位)、インフレの要因はコロナとプーチンだが金利を上げてもコロナもプーチンも撤退しない」
ウクライナ危機での有事、資源価格上昇、FOMCの利上げ大合唱でのドル買いと言われているが、年初来では12通貨中、6番目で強くも弱くもない。ドル売り要因も大きい。2021年の米国の財の貿易赤字は1兆907億ドルとなった。これはコンスタントに出てくる。ウクライナ危機はいつ治まるかわからないが、収まれば有事のドル買いも出なくなる。インフレ懸念で利上げするのはいいが、原因は景気過熱というよりも
コロナ感染にかかわるサプライチェーンの問題やウクライナ危機での資源価格の上昇だ。金利を上げればコロナが逃げるわけでもないし、プーチンが軍を撤退するわけでもない。
金利上昇による弊害が心配だ。今年のFOMCのGDP成長率予想はは4%から2.8%に切り下がったが、これで利上げを加速していいのか不安がある。
それでFOMCのすべての総裁達や米系証券も利上げを強調する。パウエルFRB議長は、インフレの抑制を急ぐため、今後、1回の会合で利上げの幅を「0.5%」と、通常の2倍にする可能性を示唆した。
直近では3月の消費者信頼感指数(確報値)は59.4と速報値の59.7から小幅に下方修正、2月の耐久財受注統計は、民間設備投資の先行指標とされるコア資本財の受注が0.3%減、住宅関連指標も強くない。失業保険申請者数は改善したが、総合的に力強い指標が出てくるわけではないことはドルと株価の乱高下は続くだろう。
*ユーロ「通貨10位(10位)、株価14位(13位)DAX)、伸びる対円相場、伸びない対ドル相場、スタグフレーションという単語も出始めた」
ウクライナ危機で一番影響を受ける欧州であるが円相場がさらに弱く上昇した。対ドルでは弱い。ECB当局者の発言も多くなっているが、インフレ高騰で利上げすべき意見もあるが、発言に「スタグフレーション」という言葉も出てきている。タカ派の独連銀のナーゲル総裁は、インフレ見通しによって正当化されるなら、ECBは金融政策の正常化を継続し、早ければ年内にも利上げを実施すべきと述べた。しかしその独のキール世界経済研究所(IfW)は、22年の成長率予想を4%から2.1%と半分に下方修正。ウクライナ危機による販売機会の減少や新たな供給制約、原材料価格の高騰を挙げ、「独経済は再び強い向かい風を受けている」としている。独IFO経済研究所の3月の業況指数は90.8で、前月の98.5から低下した。3月の独総合PMIは54.6と、前月の55.6から低下した。
シュナーベルECB専務理事は、ウクライナ危機が原因でユーロ圏が「深刻なリセッション」に陥った場合、今夏に債券買い入れを終了する方針を「再考せざるを得なくなる」との見方を示した。
ラガルドECB総裁は、ロシアのウクライナ侵攻が景気拡大の足を引っ張り、既に記録的な高騰を示す消費者物価をさらに押し上げ始めているが、スタグフレーションの兆候は見られていないと述べた。
「戦争の悪化と長期化という最も厳しいシナリオでも、2.3%の経済成長を達成できる」とし、「引き続き一定の成長を見込んでいる」と語った。ラガルド氏は、欧州と米国では景気サイクルの同じ局面にいないとあらためて主張し、ウクライナに隣接するユーロ圏は米国よりも戦争の影響を強く受けると指摘した。「われわれは違う世界におり、異なる段階にいる。出発点も違う」と述べ、「ユーロ圏の金利はマイナスだが、米国では一度もマイナス圏にはならなかった」と論じた。
*ポンド「通貨9位(9位)、株価4位(5位)、消費者物価は1922年以来の上昇もリセッション観測も出始めている」
ウクライナ危機のリスクは消えていないが円が弱すぎるので対円では強い。対ドルでは弱い。勢いよく上昇する物価に対して、他の経済指標は弱い。2月の消費者物価指数(CPI)は前年比6.2%上昇と、1992年3月以来30年ぶりの大幅上昇となった。エネルギーとガソリンの価格が高騰した。一方、2月小売売上高は、前月比0.3%減と、予想の0.6%増を下回った。食品価格の高騰で家計が圧迫された。3月の消費者信頼感指数はマイナス31と、4カ月連続で低下し、2020年11月以来の低水準となった。インフレ高進や金利上昇、ウクライナの戦争を巡る懸念が影響した。2月はマイナス26だった。1974年の調査開始以降、同指数がマイナス0以下に低下した際には、リセッションを5回中4回予兆している。また予算責任局は今年の経済成長率予測を3.8%と、従来予想の6%から下方修正した。 2023年の成長率は1.8%、24年が2.1%となっている。昨年10月時点の予想ではそれぞれ2.1%と1.3%だった。
スナク財務相が打ち出した生活コスト緩和策を巡り、低所得層への支援が不十分だとの批判が殺到している。物価高騰の影響で、同国の生活水準が少なくとも1950年代以降で最も落ち込んでいるという事情がある。シンクタンク(ザ・レゾリューション・ファウンデーション)は向こう2年で税負担が軽減されるのは労働者8人のうち1人ほどにすぎないと指摘。物価上昇率が年内に9%に達し、賃金や社会福祉給付の伸びを上回る見込みなので、来年には絶対的貧困に陥る人々が50万人の子どもを含めて130万人に達すると予想した。
*豪ドル「通貨2位(2位)、株価6位(6位)、ウクライナ危機以降は上昇率が最強。ロウRBA総裁は6月利上げに触れず」
1月は最弱通貨の一つであった豪ドルが現在は南アランドに次いで年初来2位となっている。ウクライナ危機以降の上昇率は資源価格の上昇、エネルギー資源も持つ豪ドルがランドを勝る。一方、円はウクライナ危機以降は地政学リスクのあるトルコや欧州通貨より下落し最弱通貨だ。ただ豪ドル円の週足や月足はボリバン3σ上限に達したので少し注意したい。
2月失業率の4.0%への改善は、それが今年半ばになると予想されていたので「労働市場が予想以上のペースで引き締まっており、今後数年で賃金の伸びが加速するだろう。利上げサイクルが6月に前倒しされるのは確実だ」という意見も出てきて豪ドルを押し上げた。
ロウRBA総裁は、最近の世界的なコモディティー価格高騰によりインフレが押し上げられることを考慮すると、借り手は今年の金利上昇に備えることが妥当だとの見解を示した。コアインフレ率は2.6%と依然抑制されており、賃金も緩やかな伸びにとどまっていることから、利上げまでには時間的猶予があるとの認識も示した。
早ければ6月にも利上げを実施する可能性があるかとの質問には、具体的な時期への言及を控え、「より早い」可能性を想定した妥当なシナリオや年内に全く利上げしないシナリオがあると述べた。
ロウ総裁は、RBAが2010年終盤以降、利上げを行っていないため、国内の多くの借り手は引き締めサイクルの経験がなく、違和感を感じるかもしれないと指摘した。
*NZドル「通貨4位(4位)、株価11位(8位)、ウクライナ危機による農産物価格上昇でNZドルも上昇。追加利上げ観測あり。弱点は」
ウクライナ危機以降は農産物価格上昇で農業国のNZドルも強い。対円の週足、月足でボリバン3σ上限へ迫っている。日足は先週末、上昇が一服した。IMFはインフレ率が年内は中銀目標レンジ大きく上回ったまま推移する見通しでインフレ高進のリスクを抑えるためNZ中銀が金融政策の迅速な正常化を継続すべきだとの見解を示した。
NZ中銀は2月に、政策金利を0.25%引き上げて1%としたが、インフレ率が約30年ぶりの高水準である5.9%に達する中でより大幅な0.5ポイント引き上げも検討したと説明していた。次回の金融政策決定会合は4月13日。
ただ貿易・経常赤字が続いている。経済指標も強くない。ウクライナ危機が落ち着けば調整の売りも想定したい。1Qの消費者信頼感指数は92.1と、世界的な金融危機時の2008年以来の水準に落ち込んだ。前期は99.1だった。経済が多くの逆風にさらされる中、家計が悪化した。新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大も、ここ数週間の信頼感に影響を及ぼしたとみられる。スタグフレーションの声も聞こえる中金融の舵取りは難しい。
テクニカル分析
*ドル円「6日ぶりの陰線もボリバン上限で下ヒゲが長い珍しい型」
日足、6日ぶりの陰線も下ヒゲが長い。2σ上限に近い。ボリバン上限で下ヒゲが長い珍しい型。3月24日-25日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線上向き。
週足、3週連続大陽線。2月7日週-28日週の下降ラインを一気に上抜きボリバン3σ上限越え。3月14日週-21日週の上昇ラインがサポート。
月足、ボリバン2σ上限を越える上昇。5か月線から反発。1月-2月の上昇ラインがサポート。1月-2月の下降ラインを上抜く。雲の上。
年足、2021年は6年ぶり陽線。15年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン3σ下限から反発もボリバン中位が依然抵抗」
日足、ボリバン3σ下限から反発も中位まで戻す。3月17日-25日の下降ラインが上値抵抗。3月14日-24日の上昇ラインがサポート。5日線下向く、20日線下向き。
週足、ボリバン3σ下限から反発、ボリバン2σ内へ戻す。2月28日週-3月14日週の下降ラインが上値抵抗。3月7日週-14日週の上昇ラインがサポート。5週線、20週線下向き。
月足、1月、2月は雲の上に出きれず、3月急落。ボリバン3σ下限で下げ止まり2σ下限まで回復。1月-2月でダブルトップ。2020年3月-2022年2月の上昇ラインを下抜く。21年9月-22年2月の下降ラインが上値抵抗。年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。17年-20年の上昇ラインがサポート。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「11日ぶり陰線」
日足、上昇ライン崩れず。ボリバン3σ下限から2σ上限へ反発。雲の上。3月24日-25日の上昇ラインがサポート。
週足、ボリバン3σ下限から反発3σ上限へ。雲の上に出る。3月7日週-3月14日週の上昇ラインがサポート。5週線上向き、20週線も上向く。
月足、1月、2月は陰線。2月の長い上ヒゲで3月急落も下ヒゲで急回復。ボリバン上位へ。20年5月-22年3月の上昇ラインがサポート。21年10月-22年2月の下降ラインを上抜く。
年足、2年連続陽線。今年も3月に陽転。14年-21年の下降ラインが上値抵抗。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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