総括
FX「米国市場でのヘビーローテーションが起きればドルに影響」
ドル円=113-118、ユーロ円=129-134 、ユーロドル=1.11-1.16
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨8位、株価12位、米国市場のローテーションの影響は。半導体不足和らげば円高にも」
ドル円は5週連続で週足陽線を続けている。週足、月足はボリバン2σに達して小緩んでいる。日足は1月4日にボリバン3σに達してから弱い。1月5日のFOMC議事要旨で利上げの判断時期が近づいていることを示唆したほか、国債などの大量購入で膨らんだFRBの保有資産を早期に縮小することに前向きな意見が目立ったと公表されてからドルは下落している。
米債が売られ現金化されている。一部はドル以外の通貨に換金されているだろう。株価はナスダックを中心に下落し世界中に波及しここでも現金化が起きればドル安の要因となる。去年は利上げ予測があっても米債や米株が買われていたが、年初は逆の動きだ。久々に金融市場で起きたローテーションかもしれない。
さて日本の成長見通しも改善しているようだ。日銀は物価・成長率見通しを上方修正する。17日からの金融政策決定会合で原油高や円安を背景に2022年度の物価上昇率見通しを前年度比0.9%から上方修正する方向で検討。12月の東京消費者物価は、前年同月比0.5%上昇と、1年10カ月ぶりの高い伸びとなった。22年度の成長率見通しも、コロナ禍を受けた政府の経済対策による押し上げ効果を踏まえ、上方修正を検討する。11月の鉱工業生産指数は97.7となり、前月比7.2%上昇した。半導体などの部品供給が正常化し、自動車工業が43.1%の急回復となった。これが輸出増加に繋がれば貿易黒字化にも繋がるが、まだワクチン輸入や原油高の影響で輸入増もありこれは引き続き追っていきたい。
*米ドル「通貨5位、株価(NYダウ)8位、ヘビーローテーションでドル安」
ドルは激安ではないがやや弱含んで22年は始まった。注目すべきは常勝のナスダックが年初来4.53%安と大幅安となった。NYダウは小幅に0.29%安となった。FRBが引き締め加速の姿勢を示唆する中、ヘッジファンドはバリュー株を買い増す一方で割高な銘柄の売りを進めており、これが昨年3月以来で最も顕著な株式ローテーションを加速させる一因となっている。ポジションのシフトは金融市場全般で見られる動きを映し出している。BOAの週間調査によると、世界市場が金利上昇に備える中、今年に入って投資家は米国債を放出し、現金や銀行ローンに資金を流入させている。週間ベースでは、米国債からの流出額が20億ドルと、21年1月以来、1年ぶりの大きさとなった。エネルギー株に大きな資金流入があり、欧州株は8週間ぶりの大きさの資金流入を記録した。
米国テーパリング開始の動きは昨年6月から始まっているが、昨年は米国債券は売られず、むしろ買われ利回りが低下した。今年は1月5日のFOMC議事要旨で利上げの判断時期が近づいていることを示唆したほか、国債などの大量購入で膨らんだFRBの保有資産を早期に縮小することに前向きな意見が目立ったことをきっかけに米債売り米金利上昇となった。米株売りや米国債売りがすべてドル売りに繋がっているわけではないが、ドル安への影響は小さくないだろう。
今週は金利にとって絶好の材料である12月消費者物価が発表される。
*ユーロ「通貨6位、株価4位、DAX)、ユーロ、株価とも好スタート」
ユーロドルは1.12後半で続いた揉みあいから1.13台半ばへ浮上した。今年の世界の株価は米ナスダックを中心に下落する市場が多いが、欧州株式市場はこじっかりしたスタートで為替、株価ともに21年とは異なったスタートとなった。ユーロ圏の昨年12月のインフレ率は予想外に伸びが加速し、過去最高の5%上昇となった。現在の物価上昇は一過性との見解を崩さないECBにとって、今後の対応が難しくなるとみられる。1月11日のラガルド総裁講演にも注目したい。クノット・オランダ中銀総裁は、物価が予想を超えて上昇し続ければ、現行の計画よりも速いペースで景気支援策を終了できるとの考えを示した。クノット総裁は、「ECBは任務完了に極めて近づいていると言える。インフレリスクは明らかに上向きに傾いている」と指摘。「2022年に買い入れを段階的に縮小していく方針に違和感はない」と述べた。その上で、インフレ率が予想を上回れば、景気支援策の解消ペースを速める必要が出てくる可能性があると指摘。「段階的で円滑な出口戦略の実施には、早期着手が重要になる。対応が後手に回れば、衝撃を伴う修正策が必要になる」と述べた。
株価については金利上昇に伴い世界的に株価が下落する中で、欧州株が魅力的な逃避先になると、ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストが予測した。欧州主要株価指数の構成銘柄にはデュレーションが短めのセクターや金利の変動に敏感なセクターが多い。このことを踏まえると、金利上昇は欧州株にとって有利に働くだろうと分析した。
*ポンド「通貨3位、株価3位、金融もコロナ対策も強行策で自信を示す」
22年はポンドとFT株も全体のそれぞれ3位で好スタートとなった。FOMC議事要旨で早期利上げ・資産縮小に前向きとなってもポンドの下落は一時的で先週後半は再び上昇した。経済指標は必ずしも強くはないが
高インフレで躊躇なく利上げに向かったことや、ジョンソン首相のコロナ感染者激増でも規制強化はしないという強行突破策が効いている。英中銀は12月に予想外に0.15%の利上げを決定した。英国ではオミクロン株が猛威を振るっており、市場の大半は政策金利の据え置きを予想していた。そんななか、BOEはインフレとの闘いを重視し、コロナ禍に主要7カ国(G7)では初めて利上げに踏み切った。一方、ジョンソン首相は、市民や企業への影響が大きいロックダウンについては導入を否定し、ワクチンのブースター接種や国営医療サービス(NHS)の強化で対応するとした。
国外からのオミクロン株流入による感染防止のために導入した水際対策についても、国内でのオミクロン株の感染拡大の状況や、観光業への影響などを踏まえて緩和するとした。
また、1月7日午前4時(英国時間)以降に英国に到着する場合は、渡航前検査と到着時の自主隔離義務を免除。1月9日午前4時以降に到着する場合は、入域2日目以内のPCR検査を迅速抗原検査で代替することを認めるとした。今週は11月貿易収支、GDP、鉱工業生産の発表がある。
*豪ドル「通貨11位、株価6位、コロナ感染急増。金融引き締めは慎重で力強さはない」
今年もやや弱い出だしとなった。昨年は12通貨中8位であった。FOMC議事要旨で早期利上げ・資産縮小に前向きとなったことでドルが上昇、豪ドルが下落した。ただ先週末は、米国長期金利がさらに上昇したことで、米債券売り、米株売りの現金化の動きが出てドル安豪ドル高となった。豪国内では日々感染者数が過去最多を更新し、再び景気停滞の懸念も出てきた。ただRBAは議事要旨で新型コロナウイルスのオミクロン株拡大が景気回復を損ねることはないと楽観視していることを明らかにした。モリソン首相も、新型コロナウイルス対策の行動制限で国民を縛る体制から脱却する必要があると述べ、ロックダウン再導入の可能性を否定した。英国と同じ政策をとっている。
RBAは雇用とインフレの目標に向け予想を上回る進捗が見られる場合、債券購入プログラムを22年2月半ばに終了する選択肢がより適切になるとの認識が示された。政策金利については、完全雇用とインフレ目標の達成に向け、高度に支援的な金融環境維持に引き続きコミットする政策委の方針があらためて確認された。インフレが2-3%の目標レンジに収まるまで利上げしないとしている。賃金の上昇率が3%に届かぬうちは利上げに踏み切らないともしてきしている。 今週は11月貿易収支の発表があり黒字額は106豪ドルの黒字が予想されているが、輸出入ともに金額が減少しているのが懸念材料だ。
*NZドル「通貨10位、株価9位、NZ経済の回復には豪中経済の回復が必要だ」
豪ドル同様に弱いスタートとなった。貿易依存度の高い中国や豪景気の減速、また豪のコロナ感染者拡大で22年1月から実施予定だった入国規制の段階的緩和を2月末まで延期すると発表されたことも景気停滞を招くこととなる。21年は世界でもいち早く利上げをしてNZドルが強含み推移することもあったが、利上げによる株価低迷、貿易赤字が5か月連続続いていることもあり伸び悩んだ。経常赤字も続いている。NZはゼロコロナ対策をとり感染者も多くないが隣国の豪の感染者増はNZ経済に影を落としている。
21年4QのGDPは前期比、前年比ともにマイナス成長であった。4Qのウェストパック消費者信頼感指数は99.1と3Qの102.7から大きく低下した。12月の企業信頼感指数はは、前月に続き悪化した。熟練労働者不足や賃金外コスト高に対する懸念が圧迫した。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答者の割合は差し引き23.2%で、11月の16.4%から上昇した。
向こう1年間に自社の事業が拡大すると見込んでいる回答者の割合は差し引き11.8%で、11月の15%から低下した。NZ経済の回復には豪中経済の回復が必要だ。
テクニカル分析
*ドル円「ボリバン3σ上限から反落中」
日足、ボリバン3σ上限から反落。1月6日-7日の下降ラインが上値抵抗。1月3日-7日の上昇ラインがサポート。雲の上。5日線、20日線は上向き。
週足、5週連続陽線。ただ先週は2σ上限に達して反落。上ヒゲが長い。11月22日週-12月27日週の下降ラインを上抜く。12月27日週-1月3日週の上昇ラインがサポート。雲の上。ボリバン上位。
月足、11月-12月の下降ラインを上抜く。10月-12月の上昇ラインがサポート。雲の上。ボリバン2σ上限から小反落中。
年足、2021年は6年ぶり陽線。15年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「2週連続陽線後は下ヒゲの長い足で底堅さを示す」
日足、雲中へ上昇。1月6日-7日の上昇ラインがサポート。12月31日-1月7日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。ボリバン上限近い。
週足、2週連続陽線後は下ヒゲの長い足で底堅さを示す。11月8日週-1月3日週の下降ラインが上値抵抗。12月20日週-1月3日週の上昇ラインがサポート。
月足、12月は5か月ぶり陽線も雲の下。11月-12月の上昇ラインがサポート。10月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。20年‐21年の上昇ラインがサポート。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「5週平均線が上向き20週平均線を上抜くか。」
日足、ボリバン2σ上限から反落も先週末は回復。1月6日-7日の上昇ラインがサポート。1月6日-7日の下降ラインが上値抵抗。雲上へ。5日線、20日線上向き。
週足、3週連続陽線。雲上へ。12月27日週-1月3日週の上昇ラインがサポート。10月18日週-1月3日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン上位。5週平均線が上向き20週平均線を上抜くか。
月足、11月の大陰線を12月は大部分取り戻す。1月も上昇スタート。ボリバン中位から反発。21年6月-11月の下降ラインが上値抵抗。20年5月-21年12月の上昇ラインがサポート。
年足、2年連続陽線。20年-21年の上昇ラインがサポート。14年-21年の下降ラインが上値抵抗。
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