総括
FX「バイデン大統領はインフレがピークと発言。リスク選好が感じられない日本の景気回復」
ドル円=111-116、ユーロ円=126-131 、ユーロドル=1.11-1.16
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨9位(11位)、株価14位(12位)、リスク選好が感じられない日本の景気回復、やや円高か」
活気のない景気回復だ。先週の法人企業景気予測調査に続き、今週の日銀短観も改善するだろう。OECDは世界経済の2021年の成長率は5.6%と予想し、22年は4.5%、23年は3.2%へ徐々に減速するとの見通しを示した。日本は今年が1.8%、22年が3.4%、23年は1.1%で、今年の予想は従来予想の2.5%から下方修正されたものの、22年は2.1%から上方修正された。欧米や中国は22年の成長見通しが21年から低下するが日本は上昇する。とはいっても低迷する日本株市場を見ていると元気さは感じられない。賃金の上昇も鈍く政府が介入している。日本の賃金は韓国にも抜かれるようになった(OECD2020年データでは日本が3万8515ドル。韓国は4万1960ドル)
さてドル円相場は秋の円安需給も終わり上への伸びがない。かといって、膨大な貿易黒字もなくなっているので、伝統の急激な円高も見られなくなった。貿易収支が年間で5兆円の黒字でも赤字でもの大きさになればトレンドが出てくるが、最近は±1兆円程度の貿易収支ではトレンドは出にくい。今年は外貨投信の急増による円安であったが、これに持続性があるかどうかもチェックしたい。
株式市場においても金融所得課税の話がくすぶっており上昇せず、そこからのリスク選好の円安にもなり難い。来年のリパトリの円買いや、バイデン大統領の「インフレはピークに達した」発言が本物であればドル円はやや下落方向へ向かうか。
*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)5位(7位)、FOMCがあるが、大統領はインフレがピークと発言。今夜のG7財務相のインフレ議論も注目」
先週ドルは弱含んだ。12通貨中8位であった。今週はFOMCがあり、11月の消費者物価が前年同月比で約40年ぶりの大きな伸びを示したことで、資産購入のテーパリングのペース加速を発表するとの見方が広がった。 また早期に利上げに向かう裏付けが増えると示唆するものとみられる。ただその前にバイデン大統領が、国内のインフレ率はピークに達した可能性が高く、「大半の人々が考えているより急速に変化するだろう」と述べた。また、サプライチェーンを巡る懸念により物価が上昇しており、インフレは国民の生活に影響を与えているが、石油価格やガソリン価格は今後数カ月のうちに鈍化するとした。
さらには日米欧の先進7カ国(G7)は12月13日にオンライン形式で財務相会合を開き、このところのインフレ高進について協議するようだ。これらがFOMCにどう影響するかを見極めたい。バイデン大統領は、原油備蓄放出を世界に呼びかけ原油価格を下落させた。他の資源価格も11月のピークからは大きく下落している。農産物価格も上昇しているが資源価格程ではない。11月が物価上昇のピークで徐々に低下するとすればFOMCの舵取りも難しくなる。米国金利は先週低下しドル下落にも繋がった。原油価格などが下落するなら、あとはサプライチェーンの問題とコロナ給付金で一服していた労働力の復活がカギとなる。今夜のG7では金融ではなくそのあたりが議論されるのではないか。金融政策より直接的でインパクトがありそうで、上手くいけば金利低下に繋がるだろう。
21年の世界の景気はコロナ禍の底から急回復したが、22年の世界経済は日本を除けば成長率が低下する。そこで利上げすれば耐えられないのではないか。日本のバブルを崩壊させたのも中銀ではなく財政であったのでG7財務相会議を注目したい。
*ユーロ「通貨9位(8位)、株価8位(8位)DAX)、対円で8週ぶりに週足陽線。対ドルでも下げ止まる。ECB理事会では金融政策現状維持か」
対円で8週間ぶり陽線、対ドルも3週間連続で下げ止まっている。米ドル金利低下によるものでユーロ圏サイドの好材料が出たわけではない。ただ対円8週間ぶりの上昇は印象的だ。オミクロン株発生の前からデルタ株感染の急拡大による経済活動停滞、けっして力強さがない経済指標、メルケル首相退陣で不透明感が漂うドイツ経済と良い材料がないが、漸く行き過ぎ感も出て反発した。さて今週のECB理事会だが、先週は従来の資産購入プログラム(APP)を一時的・限定的に拡大することを検討するとのハト派的な報道も出回った。
一方、デギントスECB副総裁は、ユーロ圏のインフレ率がECBの目標水準に下がるのは、当初の想定よりも長くかかるとの見方を示した。ただ今のところ物価高が賃金に組み込まれつつあるという証拠はないと指摘した。インフレリスクが「穏やかに」上振れ、従来の想定よりも低下は鈍い見通しだと認めた。「インフレが来年初めに低下し始め、後半に低下が加速し始め目標の2%に収れんすると確信している」とした上で「2%目標に収れんするのは、やや時間がかかるだろうが、間違いなく22年に低下するだろう」と述べた。
賃金に一時的な物価圧力が反映されつつあるという材料はないと指摘。「ただ、賃金の伸びは22年に加速が予想される。賃金の動向や賃金交渉の行方を注視する必要がある」と述べた。
サプライチェーンの目詰まりや、新型コロナウイルス関連の規制が短期的に成長を阻害する可能性があるものの、影響は長引くことはないとの見方を示し「成長要因は中期的に非常に強固だ」と述べた。
*ポンド「通貨4位(4位)、株価9位(9位)、政策金利はまたもや据え置きか。ただポンドは小反発中」
3週ぶりに週足は対円、対ドルで陽線となった。米金利低下と米ドル下落によるもので英国自身の材料ではない。今週の英中銀政策金利は当初利上げが予想されていたが、先週からは据え置き予想が強くなった。オミクロン変異株の出現と行動制限強化の政府決定を受け、英中銀が利上げを決定する確率は大きく低下した。最もタカ派メンバーのソーンダース氏すら、政策を変更する前にオミクロン株についてより多くの情報を得るため様子見姿勢をとることに利点があると述べた。またオミクロン株の出現前からすでに英経済成長が減速していたことが示された。10月のGDPは前月比0.1%増と予想を下回り、同国で初めてロックダウンが導入される直前の2020年2月の水準を0.5%下回った。一方向こう1年間の家計のインフレ期待は11月に3.2%と、8月の2.7%から大幅に上昇した。
さてジョンソン首相率いる与党・保守党は、昨年のロックダウン下にパーティーを首相官邸で開いていたとする疑惑報道を受けて反発が広がる中、世論調査で野党・労働党に支持率の逆転を許した。保守党の支持率は12月2日時点から3ポイント下がって33%となる一方、労働党は4ポイント上がって37%となった。
*豪ドル「通貨8位(11位)、株価10位(10位)、6週ぶり週足陽線、その要因は、今週は雇用統計など」
対円、対ドルで週足が6週間ぶりに陽線となった。豪国内要因ではなく、テクニカルでボリバン下限からの反発があり、バイデン大統領がインフレがピークをつけたと発言し、米金利低下とドル下落があったからだろう。豪国内の良い材料を上げれば今週発表の11月雇用統計で失業率と雇用者数の改善が予想されるといったところだろう。中国との政治的対立と厳格なコロナ感染規制でやや経済回復が遅れていたが。今週の11月NAB企業景況感指数、12月ウエストパック消費者信頼感、12月製造業PMIの発表も注目したい。
さて、RBAは政策金利を過去最低の0.10%に据え置いた。インフレ率は他の多くの国より低水準にあるとの認識を示し、金融政策を忍耐強く運営する用意があるとした。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の出現については、新たな不確実要素だが、景気回復の腰折れにはつながらないとの見方を示した。インフレ率は加速しているが、多くの先進国の伸び率をなお下回っているほか、賃金上昇の勢いを踏まえると、緩やかな物価上昇が続くとみられている。なお岸田首相が22年1月にも豪を訪問することで日豪両国が調整しているようだ。次世代エネルギー水素のプロジェクト計画が進めば買い材料だろう。
*NZドル「通貨7位(6位)、株価15位(15位)、米ドルの下落とテクニカルで6週ぶり週足陽線。焦点は今週の経常収支とGDP」
NZドルも豪ドル同様に6週間ぶりに対円、対ドルで陽線となった。豪ドル同様にボリバン下限からのテクニカル反発と、米金利低下による米ドル下落によるものだ。今週は3Q・GDPの発表があるが予想は前期比
1.6%減、前年比4.5%減と弱い。コロナ感染規制が厳しくそれによる景気停滞もある。また3Q経常収支が発表されるが2Qの13.96億NZドルの赤字から80.13億ドルの赤字に拡大する予想だ。11月の製造業PMIは50.6と、前月の54.3から低下した。3Qの小売売上悪化に続き、11月の企業信頼感も前月から悪化している。NZからの良い材料はないが米ドルが下落してNZドルが上昇しているパターンだ。
一方、ホークスビー中銀総裁補佐は物価上昇リスクの抑制を含めた政策目標をより迅速に達成する上で、NZドル高はプラスに働くとの見方を示しているのでNZドルの上昇には中銀からの牽制はないだろう。
3Q失業率は過去最低に並ぶ3.4%を記録。これは新型コロナウイルスのパンデミックに起因する国境閉鎖措置により、外国人の労働力供給が減少したことが原因だった。金融政策については、11月の0.25%利上げのように「熟慮した措置」を講じるのが中銀の戦略だと説明した。
テクニカル分析
*ドル円「かろうじて雲の上に留まる。20日線は上抜けず」
日足、かろうじて雲の上に留まる。5日線は上向く。12月8日-10日の下降ラインが上値抵抗。12月6日-10日の上昇ラインがサポート。
週足、11月22日週の上ヒゲの長い陰線が効いていて上昇せず。11月22日週-12月6日週の下降ラインが上値抵抗。11月29日週-12月6日週の上昇ラインがサポート。
月足、11月は上ヒゲの長いカブセ的な陰線。ボリバン2σ上限越えから下落。21年10月-11月の上昇ラインを下抜く。21年8月-9月の上昇ラインがサポート。雲の上。
年足、2020年まで5年連続年足陰線だが、今年はここまで陽線。15年-20年の下降ラインを上抜く。16-20年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「5日線上向き、ボリバン中位越え」
日足、ボリバン中位を僅かに越える。12月7日-12月10日の上昇ラインがサポート。12月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く。
週足、3週連続陽線でボリバン内へ。11月29日週-12月6日週の下降ラインが上値抵抗。11月22日週-12月6日週の上昇ラインがサポート。
月足、4か月連続陰線と弱い。12月も陰線スタート。雲の下。20年3月-21年11月の上昇ラインがサポート。21年10月-11月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン2σ下限近い。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。17年‐20年の上昇ラインがサポート。14年‐20年の下降ラインも上抜いたが下抜き返す。
*ユーロ円「8週ぶり週足陽線。日足では5日線上向く」
日足、一時ボリバン中位へ戻すも先週末反落。12月3日-10日の上昇ラインがサポート。12月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く。雲の下。
週足、8週ぶりに陽線。11月29日週-12月6日週の上昇ラインがサポート。11月22日週-12月6日週の下降ラインが上値抵抗。雲中。
月足、11月は大陰線。ボリバン中位で留まる。21年10月-11月の下降ラインが上値抵抗。20年5月-21年11月の上昇ラインを一時下抜く。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインも上抜くも長い上ヒゲを出し戻ってきた。
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