▼物価上昇が続くメキシコ
▼メキシコ中央銀行は金融政策を据え置き
▼メキシコ中銀総裁交代の余波は?
▼メキシコペソは高値圏でもみ合い中だが短期的には下落傾向
物価上昇が続くメキシコ
5月7日に発表されたメキシコの4月の消費者物価指数は前月比0.33%上昇(3月0.83%、予想0.25%)、前年比6.08%(3月4.67%、予想6.01%)と急上昇しました。2カ月連続でメキシコ中央銀行のインフレターゲットの4%を超えました。
3月3日に発表された四半期インフレ報告におけるインフレ見通しを上回るものでした。
メキシコ中央銀行は金融政策を据え置き
メキシコの物価はかなり急速に上昇していますが、5月13日の会合ではメキシコ中央銀行は政策金利を予想通り4%に据え置きました。決定は全会一致でした。
声明では「インフレの予測は最新の四半期報告を上回ると短期的には示しているが、それは一時的で、中期的にはインフレが3%の目標に戻るという想定が維持されており政策を変える必要はない」と表明しました。
大枠では金融政策を変える時期ではないというスタンスを示しました。
ただ声明文がほぼ同じだからといって、前回(3月25日)と今回が全く同じというわけではありません。
前回の声明文ではインフレが上昇するリスクは①商品などの上昇圧力、②為替レートの下落などを挙げており、インフレが低下するリスクに関しては①感染拡大による経済活動の減速、②為替レートの上昇を挙げています。
今回の声明文でも①商品などの上昇圧力、②為替レートの下落などでインフレの上昇リスク、下落リスクともにほぼ同じ項目が挙げられています。
ただ前回の声明ではなかったもので「インフレの予想経路に影響するリスクのバランスは上方に偏っている」という一文が加えられました。これはやはりインフレの上方への加速を警戒するもので、これでここまでの利下げサイクルは終了し、次の中央銀行の政策変更があるとすれば利上げの可能性が高まりました。
とはいえメキシコ中央銀行の現状のスタンスは、インフレは一時的な現象でありそれは商品やエネルギーといったものの影響とみなしています。しばらくは金融政策の据え置きが続き中立姿勢を維持するものと予想されます。
6月2日に次回の四半期インフレ報告書が発表されます。ここまでの経緯を見ると目先のインフレ見通しは上方修正されるでしょう。しかし2022年以降の見通しはほぼ据え置いてくるのではないかと予想します。
メキシコ中銀総裁交代の余波は?
21日にロペスオブラドール大統領はディアスデレオン・メキシコ中銀総裁を再任しない方針を明らかにしました。ロペスオブラドール政権は新型コロナウイルスによる経済減速に対する政策では財政出動をほとんど行わずに金融政策に頼っていました。これに対してディアスデレオン総裁は大統領の政策に対して批判的でした。
ディアスデレオン氏は副総裁から2017年12月に総裁に就任しましたが、前総裁の任期を引き継いだために6年の任期が2021年末となります。
この決定を受けて21日のメキシコペソはやや下落しました。今後中銀総裁の人事はメキシコペソの変動要因になるかもしれません。
メキシコペソは高値圏でもみ合い中だが短期的には下落傾向
ドル/メキシコペソは4月20日に1ドル=19.7840ペソ付近まで下落しましたが5月4日に20.3290ペソまで反発後に再び下落し18日に19.7177ペソと直近の安値まで下落しました。ドル/ペソはドルの安値・ペソの高値圏で推移していますが、RSIはダイバージェンシーを形成しつつあり19.7177が底値になる可能性があります。20.2350付近に一目均衡表の基準線が位置し、ここが短期的なレジスタンスで、ここを上抜けすれば一目の雲の下限、75日移動平均線の位置する20.20付近への上昇を予想します。
ペソ/円は4月の高値5.477円を上抜けして5月14日に5.532円まで上昇しました。その後5.442円まで下落しています。
5.45円付近に一目均衡表の基準線と25日移動平均線が位置しています。このレベルが短期的なサポートとなりここを下抜けすると4日の安値5.387円付近への下落を予想します。短期的な下落トレンドの継続を予想します。
メキシコペソ 特設サイト:
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株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。