総括
ドル円は新年度の円高続く。クロス円は別物で日本のプレゼンス低下で円安継続
ドル円=106-111、ユーロ円=130-135 、ユーロドル=1.19-1.24
通貨ごとの注目ポイント
*円通貨11位(11位)、株価9(11)位、消費・投資盛り上がらず、ドル円は新年度の円高続く
予想通り、新年度に入り4月、5月とドル円が下落している。さてこのところのドル円出来高の減少を見ると輸出入の為替取引がメインとなっているようだ。年度末や月末で資本玉が出る時以外は出来高は少ない状態が続いている。生保などの機関投資家も積極的に為替リスクを取らず市場への参入度が低下している。日本は現在、20世紀のように膨大な貿易黒字は有しないが、長年円高を経験した商慣習から年度前半は輸出のドル売りが先行するのでドル円が下落しやすい。それが収まるのは8月あたりだ。もちろんサプライズなニュースで上下するが、殆どが需給動向に影響を与えるものではないので長続きしない。
夏まではじりじりと円高が続くのではないか。景気対策も今後は大きなものは出そうもないので米国のように消費が盛り上がって輸入増となり通貨安=円安にはなりにくい。生保も為替リスクを負う海外投資には積極的ではない。年初来7%程度の上昇を続けている日経平均だが3月までと異なり他国と比べると盛り上がりにかける。やはり3月19日に日銀がETF購入方針を変更(6兆円ペースの購入を削除)したのが効いている。コロナ禍での緊急事態宣言の継続も消費を冷えさせる。ドル円に対しては例年通りの新年度の円高続くが、それは対米貿易黒字に影響されている。他国とは大きな貿易不均衡がないこと、日本のプレゼンスの低下でクロス円の円安は続こう。
*米ドル通貨7(6)位、株価(NYダウ)3(3)位、短期は指標に一喜一憂、中長期はISバランスでドル安
ドルは総じて弱い通貨だ。長期的に見れば変動相場制開始以来、中期的には20年のコロナ発症後から弱い。短期的には金利上昇低下(経済指標如何で)上がったり下がったりするが、金利変動で売買する人は買えば、直ぐに売り手に、売れば直ぐに買い手のポジションとなるから、傾向は長続きしない。ドルの強弱と米国の景気の強さとは関係がない。6兆ドルの大規模景気刺激策でダウやS&Pは史上最高値を更新している。成長率も頗る高い。ただドルは強くはない。経済理論的、需給的に言えばドル安だ。大規模景気対策で個人にもお金が回り(極東にいる私にさえも米財務省のコロナ給付金小切手が送られてきた)、株に向かったり消費に向かう。株は上昇、消費は盛り上がり輸入が増加する。3月貿易赤字は過去最大の744億ドルとなった。ISバランス論で消費と貯蓄の差が経常収支となる。日本のように貯蓄が消費を上回れば経常黒字となり通貨高、逆だと米国のように経常赤字となり通貨安となる。長期トレンドはドル安が揺るがないが、短期的、デイトレ的にはヘッドラインニュースで上下する。
今週は4月米消費者物価の発表があり、目標の2%を大きく上回る3.6%の予想だ。超短期的にはドルを買っても、長続きはしないのが米国の需給構造だ。もちろんデイトレ筋には貴重な収益チャンスであるが長居は無用だ。その他、米中対立はあるが、民間では1-4月の対中貿易は前年比50%増となっているので、今のところ経済交流には問題がない。原油パイプラインがハッカー攻撃でストップしているようだが、備蓄もあるので様子見か。
*ユーロ通貨9(8)位、株価4(4)位(DAX)、消費者物価がジワジワと上昇すれば、ユーロ高牽制も弱まる
ユーロは対円で6か月連続陽線、対ドルでは年初来下落していたが、4月から急反発している。株価も堅調で独DAXは年初来12.25%高で日経の6.97%を引き離している。独の貿易も好調で3月の貿易統計は、輸出が前月比1.2%増加し、11カ月連続でプラスとなった。独の3月鉱工業受注も内需好調で前月比3.0%増。3月のユーロ圏の小売売上高は前月比2.7%増、前年比12.0%増となった。4月消費者物価では、ユーロ圏が前年同月比1.6%、独が前年同月比2.1%とジワジワと上昇し始めてきた。こうなると、独連銀は黙っていない。ワイトマン独連銀総裁は、金融引き締めが重債務国の負担をさらに重くするとしても、インフレ抑制に必要となれば政策引き締めに動けるよう準備を整えておく必要があると述べた。「われわれセントラルバンカーは、物価見通しに基づき必要と判断すれば金融政策を引き締めるとはっきり言わなければならない」と言明。「政府の資金調達コストが上昇するかどうかは関係ない」と語った。インフレ懸念が出始めると、ユーロ高懸念も弱まってくる。これまで金融緩和維持を主張してきたラガルド総裁の新たな発言にも注目したい。
*ポンド通貨3位(3位)、株価8(8)位、株価最高値、ポンドも堅調。さてスコットランドは
ポンドは堅調で12通貨中3位、株価はFT250は過去最高値、FT100は週間で4月以来の大幅な伸びとなった。EU離脱からの仕切り直しでのポンド買いは、鉱山ブームでのポンド買いに繋がっている。英国から資源が大量に産出されるわけではないが、資源大手、リオティント、グレンコア、アングロ・アメリカンの本社が英国にあり、英国で上場されている強みがある。資源大手株は大きく上昇している。
英中銀は、2021年の実質国内総生産(GDP)が前年比7.25%増加するとの予測を示した。新型コロナウイルスのワクチン接種が進んで景気回復への期待が高まっており、5%増を見込んでいた従来予想を上方修正した。英中銀は、2021年のGDPが前年比7.25%増加するとの予測を示した。新型コロナウイルスのワクチン接種が進んで景気回復への期待が高まっており、5%増を見込んでいた従来予想を上方修正した。21年1~3月期は感染再拡大が影響したが、英政府が段階的に経済活動を再開させることで「力強く回復する」とした。
そこで浮かび上がってきたのがスコットランド独立問題だ。EU離脱での騒動が収まってきたところで再び波乱だ。先週行われたスコットランドの議会選挙は、独立を支持する勢力が過半数を確保し、今後、独立のための住民投票の実施に向けて、ジョンソン政権に圧力を強める構えとなっている。法的に拘束力のある住民投票を実施するには英政府の同意が必要で、ジョンソン首相は反対する考えを示している。
ただこれは経済問題ではない。経済に何か大きな問題が生じたわけではない。制度の問題である。独立に向かおうが、残留しようが、相場的に大きな波乱はない。
*豪ドル通貨4(5位)、株価10位(10位)、豪中対立でも堅調支える鉱山ブーム、金融緩和は継続
豪中関係悪化でも豪ドルは対円で強い。対ドルでは年初来伸び悩んでいたが、今月は0.77台から0.78台へ上伸し雲の上に出た。中国は豪との戦略経済対話を無期限停止した。豪の貿易黒字は続いているが3月、4月と輸出が減少している。ただ経済全体では鉱山ブームにのって好調だ。RBAは2021年の経済成長率が4.75%になるとの見通しを示した。今年2月時点の予想3.5%から上方修正した。今四半期の経済成長率が2桁に達しそうになる可能性があるとしつつ、完全雇用には程遠く、賃金の伸びはあまりに低いと強調した。インフレ率が2023年半ばまで目標レンジ(2-3%)の中間点を下回り続ける見通し。一方、賃金の伸び率は鉱山ブーム時のほぼ半分に当たる2%前後で推移すると見られている。ロウ総裁は、インフレ率が持続的に目標レンジに収まるには「3ポイント程度」の賃金上昇が必要だと指摘していた。インフレ率が持続的に目標レンジに収まるまで政策金利を引き上げないと繰り返しRBAは表明している。豪ドルについては最近は言及していないが、豪ドル高が進めばインフレ目標達成が遅れるので牽制球は投げられるだろう。
*NZドル通貨5(7)位、株価16位(15位)、ジリ高も懸念は中国
ジワジワと上昇している。世界的な景気回復で主要輸出品の乳製品価格や木材価格の上昇がNZドル上昇に寄与している。1Qの失業率は4.7%で前期の4.9%から改善した。中銀はコロナウイルス感染拡大に上手く対応したとしながらも、金融システムの脆弱性はなお残っているとの認識を示した。過熱する住宅市場への対応で追加の対策が必要になる可能性にも言及した。1Qの消費者物価は前年比は1.5%上昇、中銀のインフレ目標の中心値である2%は下回っているので金融政策は現状の緩和が維持される。中銀は景気が過熱しているかを見極めるために中期的なインフレ要因に目を光らせる見込みだが、そのような要因の顕在化は少し先になるだろう。
懸念は対中関係だ。アーダーン首相は、世界での中国の役割が拡大・変化する中、同国との見解の相違を解決することが一段と困難になっているとの認識を示した。中国は最大の貿易相手国。安全保障上の機密情報を共有する5カ国の枠組み「ファイブアイズ」を活用した中国批判への消極姿勢を巡り、一部の西側諸国から圧力に直面していたが、NZ議会は、中国当局による新疆ウイグル自治区での人権侵害をめぐり「重大な懸念」を表明する動議を全会一致で可決した。中国は内政干渉として強く反発した。豪中の対立も続いているが,NZは経済規模が小さいだけに中国から報復経済措置を取られるとは悪影響は大きい。
またNZはG7、G20に属していないので、インフレを抑制するほどNZドルが上昇すると、通貨高牽制や実弾介入を行う可能性はある。
テクニカル分析
*ドル円「再び雲中へ。5日線下向く」
日足、再び雲中へ。5月6日-7日の下降ラインが上値抵抗。4月23日-26日の上昇ラインがサポート。5日線下向く。
週足、3週連続陰線後、4月26日週は切り返すも先週5月3日週はカブセ的陰線。4月5日週-5月3日週の下降ラインが上値抵抗。4月26日週-5月3日週、4月19日週-26日週の上昇ラインがサポート。雲の上。ボリバン上位。
月足、4月は4か月ぶり陰線。下ヒゲが長いが5月もジリ安。21年3月-4月の上昇ラインを下抜く。3月-4月の下降ラインが上値抵抗。雲中から下落。
年足、2020年まで5年連続年足陰線だが、今年はここまで陽線維持。15年-20年の下降ラインが上値抵抗。16-20年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「4月は4か月ぶり陽線。5月も陽線スタート。日足5日線上向く」
日足、ボリバン2σ上限へ。5月6日-7日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。
週足、4月5日週-5月3日週の上昇ラインがサポート。2月22日週-5月3日週の下降ラインが上値抵抗。雲の上、ボリバン中位を上抜く。
月足、4月は4か月ぶり陽線。5月も陽線スタート。1月-4月の下降ラインを上抜く。20年11月-21年4月の上昇ラインがサポート。雲の上維持。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。17年‐20年の上昇ラインがサポート。14年‐20年の下降ラインも上抜いた。
*ユーロ円「6か月連続月足陽線、日足は5日線上向く。」
日足、4月下旬にボリバン上限から反落も先週は再び上限へ。4月29日-5月7日の下降ラインが上値抵抗。5月6日-7日、4月23日-5月6日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。
週足、ボリバン2σ上限。4月26日週-5月3日週の上昇ラインがサポート。ボリバン2σ上限は132.50あたり。
月足、6か月連続陽線、雲の上へ出る。5月も陰線スタート。ボリバン2σ上限。3月-4月の上昇ラインがサポート。18年2月-21年4月の下降ラインが上値抵抗。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインを上抜く。
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