総括
ドル円は外需回復、内需低迷で円高。ただ月末は注意
ドル円=101-106、ユーロ円=121-126 、ユーロドル=1.16-1.21
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨4位、株価6位、コロナ禍でも円高は中国への輸出増から。国内消費は回復せず貿易黒字拡大、ただ月末は注意」
コロナ禍で貿易黒字の増大、円高が進んでいる。10月貿易統計は輸出が前年比で0.2%減と二桁減少から持ちなおしたが、輸入は13.3%減少と依然低迷。結果として黒字基調が続く。7月から毎月、前年比で黒字拡大傾向が続き円高要因となっている。輸出増加の原因は中国景気回復であり中国向け輸出が増えている。一方輸入の減少は国内消費が盛り上がらないことによるものだ。そもそもコロナ禍以前から日本の給与や消費は減少している。GDPもコロナ禍前からマイナス成長だ。ポール・クルーグマン教授も昨年10月の消費増税は税収増にも繋がらない緊縮財政だったと指摘している(コロナ後の世界=文春新書)。
貿易黒字基調が続けば円高基調が続く。ただ11月は季節的に輸出の売りが減少し輸入が増加する月であり、ここまで全面円高にならず12通貨中、円は10位と強くはない。ただドルが最下位の12位であるのでドル円は弱く見える。ここで政府が減税や大規模な補正予算を打ち出さないとデフレ下の円高が復活してしまう。そろそろ発表される第3次補正予算に注目したい。
ただ季節的需給ではドル円の11月上旬はドル高、中旬はドル安のデータがあり、今年もそうなっている。下旬はドル高傾向となっている。日足、週足、月足とテクニカルでもボリンジャーバンドの下限にあることもあり、「GO TO キャンペーン」中止などからのドル円のつっこみ売りは気をつけたい。
*米ドル「通貨8位、株価(NYダウ)7位、世界の株が大幅上昇、米国は貿易赤字急拡大でドル弱し」
世界中で11月の株価は大幅上昇している。コロナ禍で落ち込んでいた世界の株価指数も半分程度はプラスになってきた。バイデン新米国大統領誕生とコロナワクチン治験進展や申請開始によるものだろう。
もちろんトランプ大統領は依然「選挙に勝ったのは自分だ」と言い、またワクチンが世界中に広まるまで紆余曲折ありそうだが前進している事は間違いない。
前回も触れたが米株価が強いといっても、ドルが強いわけではない。現在は年初来で12通貨中、8位で、その貿易赤字から見ると当然だ。今年の1Qは毎月400億ドル前後の貿易赤字、2Qでは毎月500億ドル赤字
3Qでは毎月600億ドル台の赤字と赤字が拡大傾向にある。日々ネットで30億ドルのドル売りが出る。市場は吸収できずにドルが下落することはニクソンショック以降変わりはないパターンだ。
このところコロナ感染者数が急拡大している。政権のスムーズな交代が遅れコロナ感染対策にも支障が出ている。まるでベネスエラ、リビアや、またアフリカの部族抗争に絡む国の政権交代の混乱のようだ。
エバンズ・シカゴ連銀総裁は、新型コロナウイルス対策として導入された緊急支援プログラムの一部をムニューシン財務長官が年内で打ち切ると判断したことについて、「失望した」と明らかにした。
コロナ景気対策法案は、民主党案と共和党案で対立している。外交問題でも急にイランや中東問題、中国に対し強硬策をとり始めた。悪あがきのように見えるが、世界は冷ややかに見ているようだ。1月になれば落ち着いてくるのでトランプ氏の行動には一喜一憂しないほうがいいだろう。
*ユーロ「通貨3位、株価9位(DAX)、ECBの金融政策パッケージに期待。財政政策が伴うか」
ラガルドECB総裁は、12月に強力な金融政策パッケージを打ち出すと約束した。各国政府に対しては新型コロナ禍対応の救済資金を「遅滞なく」利用できるようにするよう要請した。ECBは12月10日に政策を決定する。ラガルド総裁は、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)と条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)が、危機が続く期間を通じて企業や政府、消費者の借り入れコストを低く抑えるための主要なツールになると重ねて述べた。コロナワクチンの進展は明るいニュースだが、広く普及するには時間がかかることから景気への支援を減らす理由にはならないと指摘。政策当局にとっての最重要課題は、ワクチン接種が十分に進み景気回復が自律的な勢いを得るまでのつなぎを提供することだ。従って、金融政策と財政政策が足並みをそろえて機能することがかつてないほど重要だ」と論じた。
しかし、ハンガリーとポーランドは、EUの2021-2027年予算とコロナウイルス復興基金の採択に反対した。資金へのアクセスを巡り、法の支配の尊重が条件に盛り込まれたことに反発した。1兆8000億ユーロ規模に上る予算と刺激策のパッケージを承認するはずだった。承認には加盟国の全会一致が必要。問題解決には時間がかかる可能性があるという。
さてこのところの景気指標はZEW景気期待指数など弱い。今週は製造業&サービス業PMI、経済信頼感 IFO企業景況感指数などの発表がある。ただ欧州の経済指標が米国などに比べれば常に弱いのは歴史的事実だ。各国が成熟期から老年期にある経済だからだ。一方、膨大な貿易・経常黒字が長期的にはユーロを支えているので少々の悪材料でもユーロが下げ続けることはない。
*ポンド「通貨9位、株価14位、11月は外部要因で上昇。ロックダウンとEU離脱交渉の行方に注目」
英とEUは、EU側の交渉メンバーに新型コロナ検査で陽性反応が出たことを受け、対面形式の協議を中断した。フィンランドのトゥプライネン欧州担当相は、交渉は「重要な段階にある」とした上で、妥結する可能性はまだあると指摘した。一方、EU首脳は欧州委員会に対し、離脱交渉がまとまらなかった場合の計画を公表するよう求める見込み。企業は最悪のシナリオにどう備えるべきかほとんど分からないままとなっている。あるEU外交筋は「われわれは今、不測の事態に備えた対策を考えなければならない。2021年1月1日が近づいている。安全網が必要だ」と指摘した。また英国で新型コロナの感染拡大を抑えるための規制が改めて導入されたことで英経済は二番底に陥る見込みだ。
ただ今月はポンドも株価も底堅い。バイデン新大統領誕生とコロナワクチン治験進展でリスク選好の流れは英国にも及んでいる。ポンドは対円で1.8%、FT株価指数は13.88%上昇している。長期的には貿易赤字でポンドは弱いものの、外部要因で上昇。今後はコロナ感染拡大へのロックダウンや離脱交渉の行方を見守りたい。
*豪ドル「通貨5位、株価11位、内外要因が豪ドルを押し上げ」
バイデン新大統領誕生とコロナワクチン治験の進展や申請でリスク選好の流れにのり上昇した。力強い国内経済指標も後押しした。10月の小売売上高は、前月比1.6%増と、3カ月ぶりに増加した。
予想の0.3%増も大きく上回った。人口が2番目に多いビクトリア州で100日以上続いた新型コロナウイルス封じ込めのロックダウンがようやく解除されたことが小売売上高を押し上げた。
また10月の雇用統計で、就業者数は前月比17万8800人増と、予想外にプラスに転じた。ただ、求職者も増加する中、失業率は7.0%(9月は6.9%)に上昇した。予想は、就業者数が3万人減、失業率は7.2%だった。11月3日のRBA理事会議事要旨によると、必要なら追加の刺激策を行う用意があるとの認識を示した。ロウRBA総裁は、新型コロナウイルス感染拡大の抑制に成功したことで、経済は「回復軌道」にあると述べた。「多くの刺激策が取られているが、バランスシートは全般的に健全で、政府は企業に対し、投資と雇用の促進に向けたインセンティブを提供している」と述べた。その上で「感染抑制面でさらに進展があれば、景気の急回復が見込める」とした。マイナス金利については「全ての主要中銀がマイナス金利を導入するという「信じられないほどありそうにない」シナリオの場合にのみ、豪中銀としてマイナス金利を検討するだろう」と述べた。不安要因は豪が中国をコロナ感染発症の地とし調査を要求した中国との対立だ。
*NZドル「通貨6位、株価5位、当面の利下げがないこともNZドルを押し上げ」
他の高金利通貨、資源国通貨と同様にバイデン新大統領誕生とコロナワクチン治験の進展や申請を好感し、NZドルは11月対円で4%上昇している。株価指数も2.96%上昇しているが、これは世界の他の市場と比べると上昇幅が極めて小さい。それはやはり当面の利下げはないとしたことによるものだ。ホークスビー中銀総裁補は来年3月まで金利を据え置くというガイダンスを変更していないと表明した。
中国との関係は豪と違って悪化していない。2019年のNZの輸出の23%、輸出の16%が対中国だ。RCEPの関税引き下げもあり、中国向け乳製品の輸出をさらに伸ばすことをNZ政府は目指している。
先週はNZから輸出された冷凍牛肉について、中国当局が新型コロナウイルスが検出されたと指摘したのを受けと発表したが、アーダーン首相はウイルスが付着した肉製品が輸出されたことはないと確信していると強調している。これについてはさらに追っていきたい。
テクニカル分析
*ドル円=「前回触れたように「11月中旬は上旬のようにドル高傾向にならない歴史あり」となった。下旬は?」
日足、前回触れたように「11月中旬は上旬のようにドル高傾向にならない歴史あり」となった。下旬はドル高の年が多い。ボリバン2σは下抜けず。11月18日-20日の上昇ラインがサポート。11月19日-20日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。雲の下。
週足、ボリバン下限近辺で推移。11月9日週-16日週の上昇ラインがサポート。今週は下抜くか。11月9日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、3月-10月の上昇ラインを下抜く。ボリバン下限2σを下抜く。9月-10月の下降ラインが上値抵抗。雲の下。
年足、4年連続陰線。ことしもここまで陰線。16年-19年の上昇ラインは再び下抜く。16年-17年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロドル=「ボリバン上位で安定推移」
日足、ボリバン上位で安定的に推移。11月19日-20日の上昇ラインがサポート。11月9日-20日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き、雲の上へ。
週足、ボリバン中位で反発。8月31日週-11月9日週の下降ラインが上値抵抗。11月9日週-16日週の上昇ラインがサポート。
月足、6月-7月の上昇ラインがサポート。9月-10月の下降ラインを上抜く。ボリバン2σ上限。雲中へ戻す。
年足、2年連続陰線。18年-19年の下降ラインを上抜く。02年‐17年の上昇ラインがサポート。14年‐18年の下降ラインも上抜く。11年‐14年の下降ラインが上値抵抗で上昇を阻む。
*ユーロ円=「ボリバン上限から反落。中位でとどまれるか」
日足、ボリバン中位まで下落。11月19日-20日の上昇ラインがサポート。11月17日-20日の下降ラインが上値抵抗、雲下。5日線下向き。
週足、11月9日週-26日週の下降ラインが上値抵抗。11月2日週-16週の上昇ラインがサポート。ボリバン中位下抜く。
月足、9月はボリバン上限2σから反落。10月も陰線。11月は9月-10月の上昇ラインを下抜く。18年9月-20年9月の下降ラインが上値抵抗。20年5月-11月の上昇ラインがサポート。今月は上ヒゲが長くなってきた
年足、2年連続陰線。今年は陽転。18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
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