総括
円、新年度初旬は慎重
ドル円=105-110、ユーロ円=115-120 、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨首位、株価9位、遅く小さい景気対策は円高要因」
3月を終えて円は最強通貨の位置にある。ドルとほぼ同じ強さであるが、コロナウィルス問題で先ずは中国景気が減速したこと、最近は新興国にもコロナ感染が広がり、資源価格も先週後半は原油価格が戻したが総じて弱く、円は新興国通貨、資源国通貨に対して強調推移している。欧州は中国を超えるコロナ感染に陥り、経済の回復への困難が予想されることで弱い。米国は、世界最大の株式資産を持つことから、株での損切りを相殺するために米国へのリパトリが続き、意外と強い。この傾向は今しばらく続きそうだ。
日本企業も新年度第一週、二週が終われば輸出企業はドル売り予約を取り始めるだろう。8月くらいまではドル売りが輸入のドル買いよりも先行しそうだ。その間コロナ感染の抑制の報道があれば円売りが一時的に加速することもあるが、需給は均衡しているので、3月のように一時的にブレても元に戻ってくるだろう。今週は3月上中旬の貿易統計が発表されるが対中貿易の変化もチェックしたい。
コロナ感染で日銀短観始め指標が悪化しているが、感染前から悪化している。消費増税原因だ。まだどのような景気対策が出るかわからないが、真水が少なそうだ。真水がマスク2枚だとは思わないが、国民にお金が回らないと消費が滞り輸入減少に繋がり円高要因となってしまう。
*米ドル「通貨2位、株価(NYダウ)11位、びっくりする指標でも相場は平静」
これほど世界の報道が一致したことはない(リーマンショックの時は、豪などはあれは北半球の出来事としていた)。どこの国の新聞も次の事の繰り返しだ
コロナ感染ー検疫ーマスクー工場停止ー観光業不振ー医療・日用品品切れーエンタメ中止ー失業増加ークルーズ船漂流ー自宅待機令ー出入国禁止ーテレワークー利下げー量的緩和ー現金支給、給与補填―財政赤字拡大ー検査強化ー医療崩壊ー有名人皇室感染ー経済指標サプライズ悪化(中国ではサプライズ回復も)―金融市場損切り合戦ーワクチン期待報道―
(中国では工場再稼働・ロックダウン解除始まる)
これまでは5万、10万の雇用者数の変化、0.2%,0.3%の経済指標の変化で右往左往していたがこれだけ比類なき数字(失業保険申請者数664万人、非農業部門雇用者数変化が70万人減少など)をどの国も出すと却って大騒ぎしなくなった。株と違って国ごとの比較商品である為替は今後もどこもこういう状況が続くので1国だけの数字で一喜一憂しても仕方がない。
米国の貿易収支は改善し、中国からの輸入が減少、貿易赤字が減少している。株の損失穴埋めによるリパトリ的ドル買いと合わせてドルが強調推移する要因だ。ただトランプ大統領はドル高を認識していると発言している。今は為替相場より、コロナウィルス問題により集中しなければならない。ファダメンタルズの良さでドルが上っているわけでもないのでいずれ修正されるだろう。危機に弱い新興国通貨が下落しすぎていることもある。
*ユーロ「通貨5位、株価12位(DAX)、感染拡大」
欧州のコロナウィルス感染状況が深刻だ。感染者数では米国に及ばないもののスペイン、イタリア、ドイツ、フランスが中国を上回っている。3月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は44.5と、ユーロ圏が債務危機に見舞われていた2012年7月以来の低水準となった。新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するための移動等の制限措置によって生産が落ち込んだ。
3月改定値は2月の49.2から低下し、速報値の44.8からも下方修正された。
PMIの構成項目は軒並み景況拡大と悪化の節目の50を下回った。生産指数は38.5。2月の48.7から低下し、世界金融危機後の大不況の最中だった2009年4月以来の低水準となった。需要も落ち込んだ。新規受注指数は11年ぶりの低水準となる37.5。2月の49.4からの低下幅は調査開始以来、最大となった。
製造業各社の楽観度を示す将来の生産見通しに関する指数は、同指数を算出し始めた2012年半ば以来で最も低い。雇用指数も過去10年余りで最低となった。
企業の営業休止、封鎖措置、失業の増加は世界各国の支出に前例のない影響を及ぼす。食品製造と製薬を除き、さまざまな製造業が、経験したことのない深刻な状況に陥ると予想されている。 ただユーロ相場はそれほど大きくは動いていない。欧州同様に米国の指標も大幅悪化しているからだ。日足や週足のボリンジャーバンドに従って推移し、大きくはブレていないので行き過ぎたところ(ボリンジャーバンドを越えたところ)では気をつけたい。流れには乗りすぎないようにしたい。
*ポンド「通貨6位、株価13位、首相感染搬送、格下げ、指標悪化で弱い」
ジョンソン英首相は検査で陽性反応が示された。首相は外出せず官邸で執務を続けている(今朝、病院へ搬送)。首相のパートナーも、またハンコック保健相も感染が確認された。さらに悪いことは、フィッチが英国の信用格付けを「AA」から「AA-」に引き下げたと発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う財政悪化を理由に挙げた。見通しは「ネガティブ」とした。EU離脱後のEUとの通商関係を巡る不透明性にも言及した。
格下げは新型コロナ流行拡大の影響に伴う財政基盤の大幅な悪化と今回の危機の規模が明らかになる前にもたらされた財政緩和姿勢を反映している。新型コロナによる英経済への短期の大きな影響や離脱後の英EU間の通商関係を巡る継続的な不透明感も考慮されたとされている。
英国の経済成長率については今年がマイナス約4%、来年はプラス3%前後との見通しを示した。指標も悪化している。3月の総合購買担当者景気指数(PMI)は37.1で2月の53.0から大幅に低下し1998年1月の調査開始以来、最低となった。2月の消費者物価上昇率は前年比1.7%となり、6カ月ぶりの高水準だった1月の1.8%から小幅低下した。燃料とビデオゲームの価格下落を反映した。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で原油価格が急落しているため、今後数カ月間に伸びが大幅に鈍化、夏には1%をかなり下回るだろうと予想、対ドルでほぼ35年ぶりの安値となっているポンド安の影響を大幅に上回るとみられている。
*豪ドル「通貨10位、株価10位、原油高と中国武漢再開は好材料」
先週は豪ドルは弱含み推移したが、株価は回復した。トランプ大統領が原油の協調減産を巡りサウジアラビアとロシアの間を仲介したことを明らかにし、両国が日量1000万-1500万バレルの減産に踏み切る可能性があるとの見通しを示したからだ。豪は原油はネットで輸入国だが、原油価格の上昇は主要輸出品のLNG価格の上昇に繋がることが株式市場で好感された。いずれ豪ドル相場へも影響してくるだろう。今週は中国のコロナウィルス発症地とされる武漢の開放があるが、中国経済が前向きに進めば豪経済にも好影響をもたらすだろう。
さて景気好転の兆しもあるが、悪い材料もある。豪の最上級格付け「AAA」を巡るリスクが債務拡大を背景に高まっている。30年ぶりのリセッションに陥る可能性のある経済の支援で政府が支出を拡大するためだ。債務の膨張で格付け見通しが「安定的」から「ネガティブ」に引き下げられる可能性があるとみられている。
モリソン豪首相はこれまで、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済危機を回避するため、3200億豪ドルの財政支援を約束。これは向こう15カ月で年間国内総生産(GDP)の15%に当たる3000億豪ドル超を借り入れざるを得ない可能性を意味する。
今週は政策金利決定があるが既に前倒しで利下げしているので据え置きか。RBAは政策金利は事実上の下限にあり、当局としてマイナス金利は「求めていない」との見解で一致。追加利下げは検討されていないことを示唆した。
*NZドル「通貨9位、株価3位、企業信頼感指数悪化、感染者数は減少」
豪と同様に先週はNZドルは下げたが株価は上昇した。原油高は原油を産出しないNZには関係がないが、豪株上昇につれ高となった。
3月の企業信頼感指数は大幅に悪化し、ほぼ過去最低となった。新型コロナウイルス感染拡大の経済への影響を巡る懸念が広がっている。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答者の割合は差し引き63.5%と、前月調査の19.4%から大幅に増え、悲観的な見方が強まった。向こう1年間の自社の事業活動に対する見通しは、悪化するとの回答が差し引き26.7%で、1988年の調査開始以来で最悪となった。
政府が4月1日公表した新型コロナウイルスの新たな感染者は61人と、前週から減少した。ただ、アーダーン首相は、全土で実施しているロックダウンが奏功しているか判断するのは時期尚早との見方を示した。3月25日に国家非常事態を宣言し、全土でロックダウンを実施。不要不急のサービスを停止し、学校や企業を閉鎖している。国内の感染者は累計708人となった。先週は比較的低水準にとどまっている。感染者の半数以上が海外からの入国者に関連しており、市中感染は約1%にとどまっている。
ロバートソン財務相は、新型ウイルスによる経済への打撃は金融危機時より大きくなるとの見解を示した。財務省は失業率が金融危機下での最悪の水準(6.7%)よりも悪化する可能性が高いとみている。財務省の初期の試算では、失業率の上昇幅は5%から2桁になり、国内総生産(GDP)は10-17%下押しされる見通しだ。
テクニカル分析
*ドル円=「先週末に反転上昇へ」
日足、3月31日-4月1日の下降ラインを上抜く。4月2日-3日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。3月25日-26日の下降ラインが上値抵抗。
週足、2月半ば以降、ボリバン上限越えから一気にボリバン下限下抜き。再びボリバン上限へ達し反落。3月9日週-30日週の上昇ラインがサポート。雲中。
月足、3月波乱、高値111.71、安値101.18。値幅10.53。19年9月-20年1月の上昇ラインを下抜くも上抜き返す。上ヒゲの長い2月の月足で3月は下落スタートで一時ボリバン下限を下抜く。111円まで戻すも現在はボリバン下位に位置している。
年足、4年連続陰線。16年-19年の上昇ラインを下抜くも16年-17年の下降ラインを上抜いた。ただ今月再び陰転だがほぼ年初来寄り引き同時。
*ユーロドル「8連続陰線、6連続陽線、5連続陰線」
日足、8連続陰線、6連続陽線、5連続陰線。4月2日-3日の下降ラインが上値抵抗。3月23日-4月3日の上昇ラインがサポート。5日線下向き。
週足、ボリバン内で行ったり来たり。先週はボリバン下限で終える。3月23日週-30日週の上昇ラインがサポート。3月16日週-30日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、2月、3月はボリバン下限で下げ止まり長いヒゲで戻し3月の上昇に繋がるも、上ヒゲで打ち返される。4月早々にボリバン下限へ。
年足、2年連続陰線。今年も陰線スタート。17年-19年の上昇ラインを下抜く。02年‐17年の上昇ラインがサポート。14年‐18年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円=「ボリバン上限から反落し下限到達で反発」
日足、ボリバン上限から反落し下限到達。4月2日-3日の上昇ラインがサポート。4月2日-3日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。
週足、再びボリバン下限を下抜く。3月9日週-30日週の上昇ラインがサポート。3月23日週-30日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、19年9月-10月の上昇ラインを下抜く。20年1月-3月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限近い。
年足、16年-19年の上昇ラインを下抜くか。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。2連続陰線、今年もここまで陰線。
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