総括
トランプ踊れも平凡・平穏な経済成長の2019年 11月下旬はドル高傾向が過去の実績
ドル円=106-111、ユーロ円=117-122 、ユーロドル=1.08-1.13
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨3位、株価12位、景気悪化は円高にも、ただ11月下旬はドル高傾向が実績」
(先週=貿易統計 全産業活動指数 消費者物価→今週=企業向けサービス価格 小売業販売額 失業率 有効求人倍率 東京都区部消費者物価 鉱工業生産 新設住宅着工 外国為替平衡操作の実施状況)
秋の円安、その中で11月では例年の傾向通り、上旬はドル円は上昇、中旬は下落となった。ドル高となり易い下旬は今週で決まるが、21日のオープンである108.52からは若干ドルが上昇している。
12月のドル円はそれほど明確なトレンドはなく、若干ドル安傾向(22年のうちドル上げが10回、ドル下げが12回)、10日毎では中旬までがややドル高、下旬が若干のドル安傾向がある。
景気は良くないようだ。米中貿易戦争の影響だが、その米中より悪化している。増税や災害により10-12月はマイナス成長に陥る見通しで政府も10兆円ほどの景気対策を打ち出す方針だ。
貿易では輸出が11か月連続で前年比減少、輸入も8月、10月は二桁減少している。
11月の月例経済報告で景気の総括判断を「輸出を中心に弱さが長引いているものの、緩やかに回復している」と、前月から維持した。ただ、海外経済減速の影響が製造業などに徐々に拡大しており、企業収益と雇用情勢の個別判断を引き下げた。海外経済の評価も弱め、今後の日本経済への影響を注視する姿勢を強調している。
ただ日本の景気減速は海外と異なり通貨高、円高に結び付きやすいのが心配である。原則為替介入は禁止なので対応が難しくなる。マイナス金利の深堀は、実際マイナス金利導入以来円高に振れている。可処分所得の減少や金融機関の収益悪化に繋がってしまう。日銀の功績はマイナス金利ではなく株価の購入だった。
*米ドル「通貨5位、株価(NYダウ)8位、いろいろあるが平凡な平穏な経済成長の2019年」
(NAHB住宅市場指数 住宅着工 建設許可 FOMC議事要旨 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 新規失業保険 景気先行指数 消費者信頼感 中古住宅販売 製造業&サービス業PMI ミシガン大学消費者態度指数・確報値→パウエル議長 住宅価格指数 ケース・シラー住宅価格 リッチモンド連銀製造業指数 新築住宅販売件数 消費者信頼感 GDP改定値 個人消費・改定値 耐久財受注 新規失業保険申請件数 シカゴ購買部協会景気指数 個人所得・消費支出 ベージュブック))
経済指標は概ね堅調だ。パウエルFRB議長がトランプ大統領の金融緩和要求を否定したことも当然だろう。今週はパウエル議長の講演がある。パウエル議長は既に「景気が想定どおりに推移すれば、今の金融政策が適切だ、3回連続で行ってきた利下げをいったん休止し、当面、金利を据え置く」、「トランプ大統領が求めるマイナス金利は持続的な成長や強固な労働市場、安定的なインフレを備える米経済にとって適切ではない」などだ。
クリスマスが近づいてきたが依然、大統領が抱える問題は多い。米中通商協議、弾劾問題、香港人権問題 対EUの自動車関税 トルコのミサイル問題と制裁、新NAFTA協定の批准、南米各国の政情不安、北朝鮮との関係悪化などだ。大統領選挙には民主党では有力とみられるブルームバーグ氏が名乗りを上げた。ただトランプ大統領が騒いでも多くの問題を抱えてようとも経済は貿易以外はうまく回っているようだ。経済は強い、株価も強い。貿易戦争は米国の輸出を逆に伸びなくさせてしまっているので鉱工業生産だけは弱い。貿易赤字が改善する気配はないのでドルの重しとはなる。トランプ大統領の感情の荒れ模様とは異なり、平凡な平穏な経済成長が続いている。ドル自身、世界の通貨の中で強くも弱くもない位置にいる。為替のボラティリティもいつになく低くデイトレードでは儲けにくくなっている。
*ユーロ「通貨10位、株価4位(DAX)ラガルド新総裁は金融緩和の副作用に留意か」
(欧 経常収支 建設支出 製造業&サービス業PMI 独 生産者物価→欧 経済信頼感 失業率 消費者物価 独 IFO企業景況感指数 GFK消費者信頼感調査 消費者物価 雇用統計 )
米中通商協議で「第1段階」の部分合意に向けた議論が難航していること、米議会が「香港人権・民主法案」を可決し、中国が報復措置を警告したことで、米中通商協議が決裂する可能性が高まったことでユーロも軟調推移した。
ラガルド新総裁は、ユーロ圏が域外経済の低迷に対抗するには、公共投資の拡大を通じた対応を含めて内需を強化する必要があるとの見解を示した。ECBとしては今後も「経済を支援し将来のリスクに対応する」一方で、緩和的な金融政策の「副作用」を監視すると改めて表明した。公共投資の重要性を指摘したが前任者のドラギ氏は、独など黒字国に大規模な財政支出と投資を求めていたが、聞き入れられることはなかった。ラガルド氏にとって初となる12月の理事会では、発言に具体性を持つことが求められるだろう。
バイトマン独連邦銀行総裁は、ECBの政策戦略見直しに支持を表明し、金融緩和の長期化が及ぼす副作用を見過ごすべきでないとの持論を繰り返した。積極的な金融緩和もせず、各国が内需拡大策に応じなければECBは苦しくなってくる。
対米関係ではトランプ政権は、EUから輸入する自動車に対する関税措置決定の期限が過ぎたことに伴い、EUに対する関税措置導入を正当化するために、通商を巡る新たな調査の開始を検討している。
*ポンド「通貨4位、株価13位、保守党リードでポンド上昇、景気は弱い」
(先週=ライトムーブ住宅価格→GFK消費者信頼感調査)
10月から続いている狭いボリンジャーバンドの中で下限へ下落した。総選挙での世論調査では保守党がリードしている。イプソス・モリの調査では、与党・保守党の支持率は、最大野党・労働党の支持率を16ポイント上回っている。保守党の支持率は44%と前週の調査から3ポイント上昇。労働党の支持率は4ポイント上昇し28%だった。自由民主党は4ポイント低下の16%、ブレグジット党は4ポイント低下の3%だった。ただジョンソン首相が自らの議席を失う確率は20%程度あるともされている。
さて経済指標は弱い。11月の購買担当者景気指数、製造業とサービス部門をあわせた総合PMIが48.5と、10月の50.0から低下し2016年7月以来の低水準となった。10月消費者物価は前年同月比1.5%上昇と、2016年11月以来約3年ぶりの低い伸びとなった。エネルギー価格の上限引き下げを受けて、公共料金が下がり、インフレ率が鈍化した。10月小売売上高は前月比0.1%低下し、前年比では3.1%上昇した。予想は前月比0.2%上昇、前年比3.7%上昇であった。
英与党・保守党は公約に、高騰する住宅価格への対策として、非居住者を対象にした不動産取得税を盛り込む。ただロシアや中東など海外の富裕層の投資対象としての不動産を購入が制限されると景気の減速や通貨の低下にも繋がる。最近では豪やNZで見られた現象だ。
*豪ドル「通貨9位、株価9位、RBA総裁講演に注目」
(RBA議事要旨→ロウ総裁&デベル副総裁講演)
欧米金融当局の追加緩和への否定的論調や豪経済指標の改善(第3四半期の貿易黒字は前期比13.6%増、単月では21カ月連続増加、住宅価格の上昇など)で11月7日にはボリバン上限を越えて75.67をつけたが
その後、ボリバン下限まで反落している。米中通商協議の進展観測の後退もあった。RBA議事要旨では11月の理事会で利下げを検討していたことが明らかになり、中銀が予想以上にハト派的だとの見方が広がった。11月理事会では、今年4度目となる利下げも検討したが、過去3回の利下げの効果を見極めることで一致した。金利据え置きの決定は、軽々しく下されたものではなかったと市場は見て豪ドルを売った。
先物市場では12月の利下げの確率が30%前後に小幅上昇。来年2月の利下げの確率は72%となっている。今回の議事要旨を受けて、11月26日に予定されているロウRBA総裁の講演への注目度が高まる。
さてモリソン首相は、低迷する景気をてこ入れするために38億豪ドルのインフラ支出計画を迅速に実施すると明らかにした。モリソン首相は5月の総選挙で続投が決まった後、財政の立て直しを優先し、財政支出を拒否してきた。しかし鉄鉱石価格の上昇によって政府には財政支出を行う資金的な余裕が生まれたようだ。
*NZドル「通貨11位、株価5位、意外感のある政策金利据え置きも70円台に乗らず」
(卸売物価→小売売上 貿易収支 NBNZ企業信頼感 住宅建設許可 )
政策金利の引き下げ予想が多数だったにも拘わらず、据え置きたことの意外さで上昇も70円台にのせることはできなかった。米中通商協議の進展観測の後退という外部要因も頭を重くした。バスカンド中銀副総裁は、「これまでの金融緩和の効果を見極める時間ができたと発言、必要なら来年2月に再び行動する可能性がある」と述べつつも、「雇用指標は比較的良好で、商品価格も高水準だ。住宅市場も再び拡大しており、国内外の景気減速の影響が相殺されている。NZドルは今年下落しており、貿易依存度の高い国内経済を下支えしている。長期的に見れば1年前の水準をまだ2-3%下回っている。為替レートは世界の貿易見通しの悪化に対する有効な緩衝材となり、輸出収益の拡大の維持に寄与している」と前向きに述べた。ウェストパック銀行もNZ経済の底打ちリポートを発表した。
気になるのは政府が、安全保障目的で外国投資を阻止できる法律を導入しようとしていることだ。NZへの為替需給にも影響するだろう。政府の権限を拡大し、安全保障上の理由で外国投資を阻止したり、国家戦略上重要な産業への投資に対する監視をより厳格化するための法律の導入を目指すと発表した。政府は権限の拡大により、空港や港といった重要インフラなど既に政府の監督対象となっている産業への投資についても、これまで以上に監視を厳しくする。
今週はNZとしては指標の発表が多い。小売売上 貿易収支 NBNZ企業信頼感 住宅建設許可などだ。
テクニカル分析
*ドル円=「108.50以下で先週後半下ヒゲを出して下げ渋る」
日足、108.50以下で先週後半下ヒゲを出して下げ渋る。11月21日-22日の上昇ラインがサポート。11月18日-22日の下降ラインが上値抵抗。11月18日-21日の下降ラインは上抜く。5日線横ばい。20日線の下。雲上。
週足、ボリバン上位から小反落も2週連続下ヒゲを出し下げ渋る。10月28日週-11月18日週の上昇ラインがサポート。11月4日週-11月11週の下降ラインが上値抵抗。
月足、8月に月のボリバン下限に到達してからは戻す。19年5月-8月の下降ラインを上抜く。18年12月-19年4月の下降ラインが上値抵抗。19年8月-10月の上昇ラインがサポート。雲下。
年足、3年連続陰線。今年は陽線スタートであったが5月に陰転。15年‐17年の下降ラインが上値抵抗。16年-18年の上昇ラインを一時下抜く
*ユーロドル「20日線から雲の下へ下落」
日足、11月14日-21日の下降ラインを下抜き雲の下へ下落。10月1日-11月14日の上昇ラインがサポート。11月21日-22日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。20日線に抵抗された。
先週は雲中で推移。ボリバン下限から反発。11月14日-15日の上昇ラインがサポート。11月4日-15日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。
週足、先週は上ヒゲ長い。9月30日週-10月28日週の上昇ラインを下抜く。11月4日週-18日週の下降ラインが上値抵抗。9月30日週-11月11日週の上昇ラインがサポート。
月足、19年7月-8月の下降ラインを上抜く。17年1月-19年10月の上昇ラインがサポート。19年6月-7月の下降ラインが上値抵抗。
年足、17年-18年の上昇ラインを下抜く。14年‐18年の下降ラインが上値抵抗。02年‐17年の上昇ラインがサポート
*ユーロ円=「20日線に抵抗されボリバン下位へ下落」
日足、11月14日-21日の下降ラインを下抜く。11月14-22日の上昇ラインがサポート。11月21日-22日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。20日線に抵抗された。ボリバン下位へ
週足、伸び悩み継続。3週連続陰線。11月4日週-18日週の下降ラインが上値抵抗。10月7日週-11月11週の上昇ラインがサポート。
月足、ボリバン下限下抜きから戻す。9月-10月の上昇ラインがサポート。7月-10月の下降ラインが上値抵抗。雲下。
年足、16年-17年の上昇ラインを下抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。12年‐16年の上昇ラインも一時下抜く。
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